日帰りダンマス~ダンジョン経営が余りにも面倒なので全部部下に任せる事にした~
小幡ユージ
ダンジョンより大事なものがあるんだ
第1話プロローグ
「即ちダンジョンを新設する事によりヒューム種の…聞いているかね?」
「…ハイ、勿論です」
…何だっけ。
「え~ヒューム種の同族淘汰及び多種族への干渉を最大限緩和させ…」
…何だっけ、この状況。
「…ここに新たなダンジョンマスターとして任ずるものである」
…ああ、ダンジョンマスターになるんだっけ。
…ダンジョンマスター?…になる?
誰が?…俺?
ダンジョンマスターになる?
ダンジョンマスターとして創造された俺が…創造された?
あれ?何か引っかかるな。
まぁいいや、とりあえず大事なのは…。
…大事、何が大事なんだっけ。
とりあえずテキトーでいいや。
「…ではしっかりと励むように」
訓示のような事を述べて目の前に浮いていた老人、俺を作ったであろう『創造主』はそのまま消えてしまった。
ここは天上、神のすむ神殿、その中の創造の間。創造の間といっても何も無い。天上も壁も、床すらない、ただ白いだけの空間。
眩しいのか暗いのか、ただ白が広がる部屋だった。
神の神殿もダンジョンマスターとしての役割も判っている、そういう風に作られたと言う事も。ただ、生まれてこのかたの違和感だけが残っている。
「生まれてこの方って言ってもついさっきだよな」
何なのだろう、このモヤモヤは。何か大事な要素があるはずなんだけど思い出せない、ひょっとして自分には何か欠陥があるのかと本気で悩み始めたが、作った創造主に聞くわけにもいかないし。
まぁやってみよう。
手には杖、形は杖だが実際はダンジョンコア。ダンジョンを生み、制御し、魔物を生み出すダンジョンの核。自ら生み出したダンジョンの最奥に置かれるべき中枢、ダンジョンマスターの半身でもありこれが砕かれればダンジョンマスターは死ぬ、逆も然り。
「我が半身よ、我等の住処たるを示せ」
現れるのは銀の皿に乗った世界、この世界の縮図。
実際にこの世界はこのような形をしている。皿というよりは盆に近い受け皿の上に海と大陸が乗っている。
「全く何で球体じゃないのかね」
…球体?やめよう、頭が痛くなりそうだ。
「お、やってるな?」
不意に後ろから声が掛かる。
「これは…ディーバ様」
シルヴァ・ディーバ様、『前』創造主様、今の創造主様のお兄様、一度世界をリセットして創造主を交代した方。良く言えばフットワークが軽く、先ほどの『訓示』の前にも顔を出していた。
「俺はナルガリのやることは好かん。が、お前が地上にどう影響するのかは興味がある」
…創造主様の名前を口にするのは我々には禁忌なのですが。
ところで兄であるディーバ様の方がお若く見えるのは何故でしょう、黒髪黒肌、よこから2本の角まで見える前創造主様に対して、白髭の…
「気にするな、あいつは考えが古臭い上に細かいから禿げるんだ」
…うわぁ、別なほうに頭が痛くなりそうだと目を閉じる。
ため息と共に目を開けた時には前創造主様は居なくなっていた。
う~むどう接すればいいのか判らんお方だ。
気を取り直してダンジョンの場所探し。
今あるダンジョンはっと。
銀の皿の上に手を翳す、視覚的にダンジョンの範囲と頭にその情報が入ってくる。
ええと、ヒューム王国、ヒューム王国、ヒューム帝国、断崖のダンジョン…etc.
何だ?大陸中央はヒュームの国ばかりじゃないか、というか国ってダンジョン扱いなのか?
良く見れば国と国の間に小さな表示、意識すればいくつものダンジョンが地下に広がっているようだ。
これは困ったぞ。地上中央はヒュームの国ばかりだし、その隙間には既に地下ダンジョン。大陸の外周部なら空いてる場所はいくらでもあるが…。
「俺の存在意義って…」
創造主の言葉を思い出す。
(ヒューム種の同族淘汰及び多種族への干渉を最大限緩和させ…)
つまりはヒューマン種への抑止力って事だよな。
ヒュームの国が中央に集まってるんだからなるべく中央に作らないとダメだよな。
「となると、ここしかないよな」
大陸のど真ん中、ヒュームの国がすっぽり入るほどの大きさの森と山。
手を翳し、その場所の知識を読み取る。
通称、魔獣の森、太古の森、龍の棲家、迷いの樹海etc.
時代により様々に呼ばれたその場所、自分にとっては最高の環境に思えるがただ一つ問題があった。
「ダンジョンコア・ロスト26ってどういうこと?」
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