モブクラブ~非リア充だって青春したい!~

@itirou0625

第1話 プロローグ 『初恋は甘く、むせる』

“自分は主人公じゃない”そう気づくのはいつだろうか。





どんな人もきっと人生のどこかのタイミングでその事実に気づくのだろう。


いや、もしかしたら世間がいうところの“リア充様”は気づいていないのかもしれない。


だからこそ幸せで、だからこそひたむきに笑い、人と付き合っていけるのだろうか。


もしくはこの仮定も間違っていて彼らは、彼女らは、本当に主人公なのかもしれない。




・・・・ああ



主人公になれたなら



主人公になれたならどんなに良いだろうか



主人公に・・・・






なりたい



---------------


こんなん勝ちやで。

にやにやが止まらない。上空で大きな花火が上がる高校一年の夏。俺は物心ついたときから一緒の幼馴染とと花火大会に来ていた。


今日まで長かった。


身長が彼女より大きくなるまで必死に牛乳を飲み、男らしくなるため筋トレに励み、必死に勉強をし学年上位を維持した。彼女に確実に好きになってもらうため努力を怠らなかった。



いやね?イケるとは思ってたよ?努力しなくても。他の奴よりあからさまに距離感近いし、普通に手とかにぎってくるしね?ただやっぱり万全でいきたいから。



しかしそんな自信と同じぐらい不安もあり、緊張していた。

屋台で買って食べたものは味がしないし、ベビーカステラを食ったら喉に詰まりかけ死にかけのカエルのようなむせ方をした。



何アレ?あいつだけ屋台で浮いてない?パッケージのド○えもんが可愛いーとか彼女が言うから買っちゃったじゃん。華麗におごったけどな!!同級生がジャ○プを読んでるとき我慢してマー○レットを読み女心を勉強した俺に隙はなかった。かぜ○や君みたいな髪型にしたし。



自然に手を握り、花火がよく見える穴場スポットへと足を進める。

ベンチに座り一息つくとベストのタイミングで花火が上がった。

周りに人は少なく、すごく綺麗に見える。



・・・・お分かりいただけただろうか?



この完璧なロケーションで振られるわけがないのである。



花火が中盤にさしかかったころ俺は彼女の眼を見て告白する覚悟を固めた。

もちろん告白についても準備はばっちりだ。


短く、簡潔に熱い想いを述べる。ちょっとオリジナリティもあるといい。あとは夜ロマンチックな場所で告白すればよゆーやで。ってよく分からんオッサンのブログに書いてあった。

彼女が俺を見る。


「どうかした?顔怖いよーちゃんと花火見なきゃもったいないってー」


手で俺の顔を空に向けようとする。意外と力が強い。いたい。


「・・・・話があるんだ」


さあ告白だ。短く、簡潔に、想いを込めて。




「なんか不思議な感じがするよな俺たち昔からずっとこうして二人でいるけど全然飽きない。このままずっと一緒にいたいとさえ思う。花火ってすごく綺麗だけどなんだか儚いよな。でも俺は花火ってお前に似てると思うんだ。とっても明るくて綺麗だけど、なくなるとさみしい。だからこれからもずっと隣でその輝きをみていたい。・・・たまに輝けなくなってもいいけどな。その時は俺が支える。大好きだ。俺と付き合ってくれ。」




・・・・完璧だ。


簡潔に噛まずに5秒で言い切った。


お父さん、お母さん息子はやりました。



「・・・・うーん」





彼女は何故か困ったような顔をして俺から手を放しこう言った。








「ごめんね。幼馴染としてしかみれないや。」











家に帰り、死ぬほど泣いた。









持ち帰ったベビーカステラは、甘かった。







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