第六十二話 三ノ選! 最強の暗号を解読せよ!
『さあ、三ノ選を始めましょう! 二ノ選が適格になったのはパフェットさんとフォイユさん、この二名です!』
決定人が、声を張り上げた。観客の応援と声援が辺りに響き渡る。
「パフェットさん、負けないから! 今日は絶対にあたしが勝つから!」
「こっちの台詞ですっ! 私も負けないですっ!」
既に会場入りしたパフェットとフォイユは、先ほどから火花を散らし合っている。昨日和気藹々した空気は既にない。闘争心が掻き立てられているようだ。
「パフェット、フォイユに負けんな!」
「パフェットさん、頑張ってください!」
俺とアヒージョは、周りで観戦しながら声を飛ばした。
流石、三ノ選だけあって応援が半端ではない。周りの熱気に飲み込まれそうになる。俺も、負けじと声を張り上げる。しかし、周りの声に溶け込んでしまうような一体感がある。
決定人が、楽しそうに片手を広げる。
『三ノ選は、合印決定選で使う最強の暗号を用意しました!』
決定人たちが、大きな箱を開けた。それを、決定人たちが傾けて中身を出す。
すると、塊がボチャッと地面に落ちた。よく見ると、それは暗号だった。三ノ選は、この暗号の塊を使うようだ。
「なんですかっ、この暗号の塊っ! まるで大きな顔みたいですっ!」
「ホント、『?』が目で、『―』が口に見えるわ!」
「変わったな暗号だなァ。ゼリーみたいにプルプルしているぞ」
「本当に、あれが最強の暗号なんですの? とてもそう思えませんわ」
決定人が、声を張り上げる。
『これを、先に解読した者を、新しい第三区域の合印に認めることとします! 始め!』
観客の声援の音量が増す。湧き上がるような会場は、最高潮に盛り上がっている。
パフェットが先に動いた。
「先手必勝ですっ!」
「しまった……!」
フォイユが舌打ちしている。
先に勝負を仕掛けて解読したほうが勝利に違いない。今日のパフェットはいつもと違うようだ。俺は、パフェットを見直していた。
「パフェット、がんばれー!」
俺の応援にも力が入る。
パフェットは手を叩き合わせて開いた。
「解読!」
力を持った呪文が、辺りに響き渡る。
「絶対に、パフェットの勝利だ!」
俺は、パフェットの勝利を疑っていなかった。フォイユとパフェットなら、絶対にパフェットの方が実力が上だ。
けれども、暗号は平然としている。
暗号の塊はユラユラと揺れている。
「な、なんでっ……? びくともしないですよっ……?」
パフェットは、ショックを受けて固まっている。
「アハハ、あんたじゃ到底無理よ! 生まれ変わったあたしの力を見せてあげるわ!」
「な、なんですか、フォイユさんのこの自信はっ!? 生まれ変わったってっ!?」
パフェットが、フォイユの意味深な言葉に気圧されている。
フォイユは、自信満々だ。この自信はどこから来るのか分からない。しかし、本当に生まれ変わったように自信がみなぎっている。
俺も観戦しながら、フォイユの奇妙な言動に眉をひそめていた。
「生まれ変わったってなんだ……? まさか、トリオン様が何かしたのか……?」
俺の嫌な予感をよそに、フォイユがニヤリと笑った。
フォイユは勝ち誇った顔をして、手を叩き合わせて開く。
「解読!」
力を込めた呪文が、辺りに響き渡る。辺りが一瞬、静まり返った。
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