第四十六話 合印決定選! フォイユの企み!

 俺とパフェットは、第三区域の合印邸の庭に集合した。この第三区域の合印邸と庭が合印決定選の会場だ。参加した人たちが楽しそうに喋っている。数百人は居るだろうか。


「パフェット? なんでこんなにいるんだ?」


 俺は、数百人の中に埋もれそうな気分だった。

 パフェットは、あっけらかんとして、ハキハキと答える。


「はいっ! 合印決定選だからだと思いますっ!」


 パフェットは、俺の言わんとしていることが理解できてない。

 俺の方も言葉足らずだったかもしれない。


「解読使いは僅かだとパフェットは言っていたよな?」


 俺は、パフェットに恨みがましい視線を向けた。

 パフェットは、あっけらかんとして、ハキハキと答える。


「はいっ! ランクがいろいろあるのですっ!」


 俺はニヒルにフッと笑った。

 前頭に立った女の一人がマイクを手に声を張り上げる。


『合印決定選に参加された皆さん! お集まり頂いて、ありがとうございます! 私たちは、合印決定選の適格者を決めるです!』


 参加者は、おしゃべりを止めて、決定人に注目した。


は強力な暗号を解けるか解読して貰って適性能力を測ります! 解読できれば一ノ選、適格です!』


 強力な暗号を解いて適性能力を測るのか。

 なるほど、と俺は真剣に頷く。


『アナウンスで呼ばれた方から合印邸のシオンの間に入ってください!』


 海の潮が引くように集まった参加者は居なくなった。アナウンスが場内に響き渡った。一番の人が呼ばれて、合印邸の方に駆けて行く。


 俺は、真剣な目で合印邸の方に目を注いでいた。

 パフェットは、そんな俺を大きな目でじっと見上げている。

 俺は、ニヒルにフッと笑った。


「俺は、解読使いも五人ぐらいならなんとかなる。あわよくばと思って来たんだ。それなのに、何故か世界に数人しかいないはずの解読使いがこんなにいるんだが」

「最後まで適格になって、一攫千金、一生安泰ですよっ!」

「無理だろ! 俺はいつも過小評価なんだ!」

「……過大評価で自己陶酔しまくっていると思いますがっ。フッて感じでニヒルにっ」

「……」

「……」

「とにかく頑張って第三区域の合印になるですっ」

「お、おう」


 微妙な空気になった。虚ろな目で見つめあっていると、遠くから誰かが俺たちの方に猛ダッシュしてきた。そして、俺たちの前で急に止まった。それは、フォイユだった。


「フォイユさん、何ですかっ?」

「パフェットさん、ガーリックさん! さっきはゴメン! とんでもなく嫌なことを言っちゃった!」

「嫌なことってなんか言ったか?」

「ですっ?」


 フォイユの表情に何かが一瞬ひらめいた。

 しかし、その何かが分からない。


「だから、パフェットさん、ガーリックさん! お詫びに、良いことを教えてあげる!」


 良い事とは何だろう?

 この時の俺は、フォイユの策略に気づかずに、良い子だなぁと、パフェットと一緒にのほほんと構えていたのだった。

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