第四十七話 暗号椅子? フォイユの企み!

「良い事ってなんだ? 俺でも勝てる方法なのか?」

「ガーリックさん、卑怯なことは駄目ですっ!」


 パフェットが止めたので、俺は躊躇した。

 すると、フォイユが慌ててかぶりを振った。


「ううん、卑怯なことじゃないの! しいて言うなら作戦かもね!」

「確かに、作戦を練ることは卑怯じゃないな!」

「じゃあ、付いてきて!」


 俺とパフェットは、フォイユに言われるまま後を付いて行った。広い庭を横切って、合印邸の角を曲がり、その裏庭に来た。芝生が青々としている。そこに、椅子が二脚あった。


「なんだ、この椅子は?」

「その椅子に掛けて! 今から話すから!」


 なんで、こんなところに不自然に二脚だけあるのか。しかも、ベンチではなく普通の屋内で使うような椅子だ。この椅子のクッションは雨で濡れると大変じゃないのか。いや、この椅子のクッションは雨ざらしになっていない。ということは、わざわざここに持って来たということか? 何のために?


「合印邸からこんなところに椅子を持ってきていいのか?」


 俺の言葉が核心をついていたらしく、フォイユは挙動不審になった。


「い、いいのよ。立ち話も何だし」

「座るですっ!」


 パフェットもぴょんと椅子に飛び乗るように座った。

 座り心地のよさそうな良い椅子に見える。


「まあ、それなら……」


 俺も足が怠いので、椅子に腰かけた。


「……掛かったわね! もう椅子から立てないと思うわ!」

「な、何だ!? 本当に椅子から立てない!?」


 フォイユがニヤリと笑った。フォイユの言う通り、俺は椅子から立てなくなっていた。よく見ると、この椅子から出た暗号の文字列が俺とパフェットを束縛している。パフェットは特に意に介さず、足をブラブラさせている。


「何ですか、これはっ?」

「そうだ、これはなんの真似だ!?」


 フォイユは「アーッハハハハ!」と楽しそうに笑った。


「引っかかったわね! それは、合印決定選の一ノ選で使う暗号椅子よ! 解読しないと、束縛が解けないの!」

「これが、一ノ選の?」

「うん、そうよ!」


 良いのか、こんなものを持ち出しても? しかし、引っかかったわね、とは一体どういう意味だ。


「でも、その暗号椅子は改良して強さをマックスにしてあるの! これで、一ノ選はあなた達は失格! 大人しく諦めてね?」

「なんでこんなことをするんだ! フォイユは俺に何か恨みでもあるのか!」

「ないわ! ただ、パッとしない男は嫌いなの~!」


 俺は、真っ白な頭の中にフォイユのセリフが木霊するのを感じた。

 フォイユは「アーッハハハハ! アーッハハハハ!」と大笑いしながら去って行った。


「……許さんッッ!」


 ブチ切れた俺は、走り去って行くフォイユの姿が消え去るまで、じっと睨んでいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る