第四十二話 キーワードは、コード! 黒幕の黒幕?

 チャンスは一度きりだ。失敗は許されない。深呼吸した俺は、そっと呪文を解き放った。


「解読!」


 渾身の力を込めた。解き放たれた呪文のせいで、石板の暗号文がまばゆい光を放つ。暗号文が光ると、LEDライトのイルミネーションを見るような光景になった。こんな時でなければ、この状況を楽しんでいたことだろう。

 俺は、顔をしかめる。まだだ。呪文を解き放つ力が足りない。


「はあああああああああああああ!」


 力を注ぎ続けると、石板の暗号文の記号があふれ出る。それらは、あっという間に解読されて石板の中に戻って行く。勢い良く文字が石板に吸い込まれるように戻ると、光も消えた。


「や、やったのか……?」


 大笑いしていたクエッションは、石板の暗号文を解いた俺に驚愕して、口を大きく開いている。


「な、何だと!?」


 すると、間髪入れず、俺たちを捕らえていた点滅する暗号たちが雲散霧消した。


「やった……!」


 俺は、束縛が取れて、地面に着地した。

 パフェットとアヒージョは地面と勢いよくキスして、目覚めた様子だ。


「っ!? な、何があったんですの!?」

「っ!? なんて、ヒドイ起こし方をするですかっ!?」


 パフェットとアヒージョは激怒していたが、俺は大喜びだった。パフェットとアヒージョは確かに生きている。俺は嬉し泣きしそうになっている。


「パフェット! アヒージョ! 無事で良かった!」


 祝福するように、ぱっぱらっぱっぱぱやーと、効果音が流れた。

 そして、美声のアナウンスが流れる。


『暗号が解読されました! おめでとうございます!』


 暗号の答えが空に文字で表示される。


【答え:クエッションは、ガーリック《Garlic》が嫌いな理由がある!】


 空に浮かぶ暗号の答えに、俺は目をぱちくりさせた。

 パフェットとアヒージョは、口を逆三角にさせてポカンとそれを見ている。

 クエッションは俺のことが嫌いな理由がある?


「理由がないと言ってましたけど」

「本当のところは、理由があるですかっ?」

「あー、俺は良いわ。訊きたくないかも」


 どうせ、ろくな理由じゃない。訊いたら嫌な気持ちになるかもしれない。それに、俺ではなく転生する前のガーリックのことなんて、俺が知ったことか。

 クエッションは、目を伏せてフッと笑った。そして、こちらを向いて、勢い良く言い放った。


「理由なんて教えねーよ!」


 あっかんべー! をしたクエッションは、その場から遁走した。


「あ、逃げた」

「逃げたですねっ」

「逃げましたわ」


 クエッションは、どうやら暗号の力を使い果たしたようだった。クエッションの逃げ足は半端なく速かった。もはや、クエッションの影すら見当たらない。

 俺の額から、汗が流れ落ちる。


 ガーリック《Garlic》、お前は何でクエッションに毛嫌いされているんだ?


「見てください、石板の暗号文が解けてますっ!」

「へえ、なんて書かれてるんだ?」

「えっと!『支配者コードは、暗号の森で暗号を統べる』? ですの!」

「コードさんですかっ?」

「ま、何にしろ、このコードさんが助けてくれたのかもな!」

「そうですねっ!」

「ふふふのふですわ!」


 俺たちは、無事事件を解決して帰宅の途に就いた。

 しかし、マルネス様のことををすっかり忘れて、引き返したことは、その余談になる。

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