第三十五話 アヒージョは何で目覚めるか!?
パフェットの行動に感謝の意を表したい。俺の中途半端な推理のせいで、アヒージョを見捨てるところだった。このままだとアヒージョに合わせる顔がない。パフェットにお菓子で口留めするべきか。いや、おそらく無理だ。パフェットの口は軽い。お菓子をあげるので教えてくれと言ったら十中八九教えてしまうことだろう。やはり、アヒージョに土下座するしかない。気持ちを込めて、土下座だ。
「しかし、俺の推理は本当に間違っていたのか。いや、俺の推理は当たっているはずだ」
俺は、二通の手紙と似顔絵を取り出して確認する。
「やっぱり、二通の手紙と似顔絵の筆跡が同じだ。ということは、全部マルネス様が書いたんじゃないか。アヒージョが寄越したんじゃない。全部マルネス様からだ」
一通目と二通目の筆跡は同じだ。しかも、似顔絵とその手紙の筆跡も同じで、第四区域から送られてきたという推測から、マルネス様が仕組んだことになる。これは間違いない。
これを踏まえて考え直すと――。
「最初にマルネス様が第四区域内で、俺宛ての手紙を書いた。そしてそれが暗号の森を通って暗号化される。更に第五区域内にいるマルネス様の息のかかった誰かが、第五区域内で、職員さん宛ての手紙と封筒を書いた。そして、暗号化した手紙をその封筒に入れて封をした。それから、職員さんあての封筒と俺の封筒を、まとめて別の封筒に入れると、第五区域内から職員さんあてに送った」
つまりは、マルネス様は、クエッション様を奪還するために、俺たちを利用した。
「アレ? 俺の推理は当たっている? なのに、どこがどうなって、俺の名推理は外れたんだ?」
俺は、合点してポンと手を叩いた。
「ということは、アヒージョが捕まったというのも本当ということか! 俺は、アヒージョが捕まっていないと勘違いしていたのか!」
なるほど……。つまり、俺の推理は詰めの考えが甘かったわけだ。
「パフェット、納得した!」
「何一人でごちゃごちゃ言って自己完結しているですかっ」
「でも、目覚めないアヒージョをどうすれば良い? 介抱でも――」
俺の目がハッと見開いた。
介抱をすればいいのか? アヒージョが助かって、うまくごまかせて、一挙両得ではないか!
「そうだ! 必死で介抱すれば、俺が見捨てたというのもチャラにならないか!」
「何でそうなるですかっ」
俺の煩悩に気づいたパフェットが白い目を向けているが、俺の立場はうまい具合に回復した。しかし、俺のよこしまな煩悩が伝わったのだろう。アヒージョが、カッと開眼した。勢い良く身を起こして、荒い息を吐いている。
「な、何が起きましたの!?」
「あっ」
「あ」
俺の立場回復計画が、一瞬で砂になった。
「アヒージョさんをガーリックさんが見捨てようとしたですっ!」
「いや、それは……!」
アヒージョは、目をぱちくりさせている。
どう取り繕ったらいいのか分からない。俺のアヒージョへの信用はがた落ちだ。猿のように反省するべきなのか!
「そういえば、私……!」
アヒージョが額を押さえた。それから、ハッとして、横隣りを振り向いていた。
「そうですわ! マルネス様と一緒に襲われて……!」
俺は、目をぱちくりした。
「マルネス様……? って、えっ?」
俺は、アヒージョの横で倒れている男を見下ろした。アヒージョと一緒にいるこの人と一緒に捕らえられたことは確かだ。
でも、確か、この方はクエッション様では……?
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