第三十四話 パフェットの独断! 俺の推理! 俺の冷や汗が止まらない!?

 さっさと帰宅したいのに、パフェットはまだ何かあるというのか。俺は、嫌々パフェットの指さした方を向いた。何もない。風が吹いて落ち葉を巻き上げているだけだ。少しすると、風が収まって落ち葉がすべて地面に落ちた。落ち葉の向こうに何かがある。どうでも良い物だろう。多分、変わった形の落ち葉があって、パフェットは疑問に思っただけだろう。ああ、あれは誰かの倒れている足――!?


「えっ! 誰かが倒れている!?」


 俺は、思わず二度見した。人が倒れているなんて、サスペンスか。どうやら、嫌な場面に出くわしてしまったらしい。俺は辺りを警戒した。下手をすると事件に巻き込まれかねない。人気ひとけのない暗号の森で助けを呼べる確率ははるかに低い。

 しかし、パフェットがそちらの方向に走り出してしまった。


「あいつ、何考えているんだ!? パフェット!」


 なんてことだ。いつもパフェットが事態を泥沼化している。


「ガーリックさんっ! 誰か倒れているですっ!」


 パフェットが走りながら前方を指さしている。


「どこ行くんだよ! ああ、もう……!」


 俺は辺りを見回す。大丈夫なのか。人が倒れているということは、何かがあったということだ。それに、ここは暗号の森だ。俺は辺りを警戒しながら、パフェットに駆け寄った。


 誰かが倒れている姿も、はっきりと見え出した。身なりの良い男だ。おそらく、彼はクエッション様だろう。ああ、俺たちは利用されるのか。涙目になっていると、クエッション様らしい人の横隣りに、もう一人が倒れているのを目撃した。


「あ、アレ?」


 注視すると、良く知った顔立ちだった。目を閉じたまま横たわっている。どうやら、呼吸しているようだ。生きてはいるようだ。その横に、クエッション様らしき男が倒れている。こちらも、呼吸している。外傷はなく、ただ意識だけがないようだ。しかし――。


「……」


 俺の額から冷や汗が落ちる。なんだろう。この複雑な気持ちは。石橋を叩いて安全性を確かめていたのに、パフェットが先に渡ったので、注意したら足元が崩れて、パフェットに助けられた気分だ。


「……」

「ガーリックさんっ! アヒージョさんが倒れてますっ! 生きているみたいですっ!」


 パフェットが心臓の音を確かめて、無事なアヒージョを喜んでいる。

 隣のクエッション様は空気のように放置だが。

 俺の額から冷や汗ばかり出る。


「よ、よかったな~!」

「そうですねっ。ガーリックさんの推理はことごとく外れていたみたいですねっ」

「っ!」


 ぐうの音も出ない。

 パフェットのニヤッと笑った視線が、俺の顔に刺さるようだ。

 俺は、アヒージョに心の中で平謝りした。

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