第三十二話 奇妙な違和感! 今までの出来事を推理しよう!

 パフェットは自信満々に進んでいく。果たして、俺は大丈夫なのか。泥船に乗せられているのに、パフェットが能天気なせいで判断能力が落ちてないか。入っているのは、冷水なのか温水なのか良く分からなくなってないか。報酬のお菓子とアヒージョの愛の告白に、悪い予感が垣間見えるのは、取り越し苦労なのか。


「待て。良く考えよう。まず、アヒージョが俺に寄越してきた手紙だ」


 俺は、二通の手紙を確認する。一通目は、『ガーリック様 伝えたいことがありますの。至急、第四区域の運送屋に一人で来てください。 アヒージョ』だった。

 二通目は、『ガーリック様 相談したいことがあります。至急、第四区域の合印邸に来てください。アヒージョ』だった。


「そうだな。伝えたいことと相談したいことがあると、アヒージョは書いていた」


 俺は、アヒージョからの手紙に目を通しながら、一人頷く。

 そして、俺はハタと気付いた。思わず足を止める。刮目して、二通の手紙を確かめる。気づいたのは、自分の勘違いにだ。


「あ、アレ? 愛の告白って書いてないぞ? アレ? なんで勘違いしたんだ?」


 俺は、記憶をたどって愕然とした。改めて読んでも、『ガーリック様 伝えたいことがありますの。至急、第四区域の運送屋に一人で来てください。 アヒージョ』にも、『ガーリック様 相談したいことがあります。至急、第四区域の合印邸に来てください。アヒージョ』にも、告白の文字すらなかった。それに、愛の告白ではなく、書かれているのは困り果てたアヒージョの窮状ではないか。俺に助けて欲しいというアヒージョの訴えではないか。何故、愛の告白と勘違いしたのだろう。


「はっ!?」


 暫く考えているうちに、突然、俺の回路と回路がつながる音を聞いた。反射的にパフェットを振り返る。パフェットは木の実を食べたり、草をちぎって遊びながら歩いている。

 俺は開眼の限りを尽くした。


「パフェットだ! パフェットが、アヒージョから愛の告白だと俺をその気にさせたんじゃないか! 笑えるほどポジティブに勘違いしてここまで来てしまったのか!?」

「何一人でごちゃごちゃ言っているですかっ? ガーリックさんっ」

「あ、アレ!?」


 俺は、頭を抱えた。何かが変だ。俺は、餌に仕掛けがあることに気づいてなかったのか。俺は、餌に釣られていつの間にかケージの中にいないか。


 何かが警告音を鳴らしている。俺の本能が何かを警告している。何かが変だ。よく考えろ。

 一通目と二通目の筆跡は同じだが、誰の筆跡か分からない。ハッと思い出して、似顔絵を取り出した。



「あ、アレ? 全部同じ筆跡だ。二通の手紙と似顔絵の筆跡が同じということは……」

「石板ですっ! ガーリックさんっ!」

「えっ?」


 思考を遮られて、俺は顔を上げた。そこには、朽ちた大きな石板が森に紛れて立っていた。


「石板? 一体、何の石板だ?」

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