第三十一話 まさかの報酬!? 暗号の森の第四エリア!
暗号の森には、嫌な思い出しかない。これがただの依頼なら速攻で断るのだが、アヒージョがさらわれたとマルネス様が言っているので何とかするしかないだろう。俺とパフェットは、タクシー代わりの馬車に乗って、暗号の森に続く道を進んでいった。
「報酬がお菓子ですよっ! 合印様のお菓子なんて、最高に美味しいに違いないですっ!」
「……」
報酬がお菓子でパフェットは大喜びしている。俺はそれどころではなかった。パフェットは元気だ。まるで、小さな子犬を横に連れているかのようだ。賑やかに、はしゃいでいる。俺は、それどころではない。俯いて、口元を押さえている。パフェットのトーンの高い声がやけに脳みそに響く。ガタガタ揺れているせいで更に脳みそに響く。
「パフェット……! もう少し静かに……うっぷ……!」
うつむいたままパフェットを恨めしそうに見ている俺に、パフェットはキョトンとしていたが、楽しそうに更に悪そうに笑いだした。
「私は、ガーリックさんに乗り物酔いで勝ったですっ! 私の一人勝ちですっ!」
ひとまずは静かになった。しかし、パフェットは大喜びしている。
「前々から思っていたが、パフェットは俺をライバル視してないか?」
「き……気のせいですっ!」
パフェットは、ギクリとなって、わざとらしく外の景色を堪能しだした。
それはともかく、異世界に来てから、良いように踊らされている感がする。俺も踊らされやすい。人のせいにはできない。でも、パフェットが一緒にいると、必ず一緒に踊らされていないか? 俺の人生は、大丈夫なのか。隣を見ると、パフェットが外の流れる景色を見て楽しんでいる。どうやら、遠足気分のようだ。本当に大丈夫なのか。
まあ良い。報酬が合印様のお菓子というのは許容範囲だ。俺も、超絶高級なお菓子を味わって食してみたい。恐らく、高級な厳選した材料を有名なパティシェに作らせたお菓子に違いない。まあ良い。楽しみになってきた。今は乗り物酔いで想像するだけで吐きそうだが、ここを切り抜ければ楽園が待っているはずだ。その頃には、今は想像するだけで戻しそうなパティシエのお菓子も、美味しく食べれて良い気分になることだろう。アヒージョたちを早く救出しよう。そういえば、アヒージョは俺に何か用事があった。もし、本当に愛の告白だったら返答に困ってしまうが。本当に、今は愛の告白と聞いても吐きそうだ。もはや、俺は何を考えても結末が吐くことになってないか。大丈夫か、俺? 無事に到着できるのか?
「嗚呼。アヒージョの愛の告白か。鼻先にエサをぶら下げられて付いて行く。パフェットとあまり変わらないな、俺」
「一緒にしないでくださいっ!」
俺は、青空を見上げてニヒルにフッと笑った。
その青空に、木々が映り始めた。暗号の森の中に入ったようだ。
馬車が枝分かれした小道の分かれ目で止まる。
御者さんが、御者台から降りてきて、ドアを開けた。
「おい、到着したぞ。ここから先は、暗号の森の第四エリアだけど」
俺は、嵐に一晩晒された使用後になっていた。街中でタクシー代わりに乗った馬車の御者さんが、わざわざドアを開けて、降りるように促している。しかし、降りろと言った意味は一つしかない。
「えっ? もしかして、徒歩で行かないと駄目なんですか?」
「ああ。第四エリアは馬車では通れないからな。ここで待ってるけど」
「……」
俺は、眉を寄せる。馬車でアヒージョとクエッション様を見つけて、馬車の乗せて遁走すればいいと高をくくっていたのに、当てが外れてしまった。
「ガーリックさん、早く行くですっ!」
「お、おう!」
俺は、パフェットの後を慌てて追い駆けた。
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