第二十七話 最強のメイドさんVS平凡な区民の俺!
「やっぱり、乗って正解だったな!」
ユニコーンの荷馬車から降りるとき、俺は運送屋のお兄さんに、お礼を何度も言った。俺の心は踊るようだった。普通の荷馬車では、乗り物酔いになった上に何時間もかかる。まさに、泣きっ面に蜂状態だ。しかし、ユニコーンは高級車のように揺れることがない。その上に、一分で早送りしたように着いてしまう。瞬間移動までは行かないものの、それに匹敵するほどだ。その上、流石はユニコーンで移動時間を大幅に短縮できた。所要時間一分程度だったので、まだ昼にはなっていない。アヒージョの相談も日が暮れる頃には解決しているはずだ。俺の気分は、ユニコーンの荷馬車のお陰で萎えることがない。スキップしだしそうな足を落ち着けて、第四区域の合印邸の柵の周りを歩き始める。
第四区域の合印邸も、やはり大きかった。それ以上にだだっ広い庭には槍のような柵がぐるっと囲ってあるようだ。やはり、入口が分からない。門らしき出入口がない。第五区域の合印邸ではメイドが何とかしてくれたが、今回はどうすれば良いのか分からない。
「一体、どこから入るんだ?」
アヒージョが待っていてくれたら良いのに、その姿も見当たらない。十メートルぐらい歩いたところで、嫌になってきた。先ほどの高いテンションが嘘のようだ。また、門の有る無しで足を棒にしなければならないのか。柵も飛び越えればいいのだが、俺の頭よりはるかに高い。チャレンジ精神の溢れる俺は、触ろうとした。しかし、ビリッと来た。俺は、驚いた指をそっと戻した。
「ああ! どうすれば良いのか分からん!」
空を見上げて嘆く。
俺の気持ちに反して、清々しいほどの晴天で濁りがないほど澄んだ空だった。
ため息をついて、手紙を広げる。確かに、手紙にはこの場所を指定している。
「おかしい。第四区域の合印邸ってここだろ?」
すると、警報のような音が辺りに鳴り渡った。
「な、なんだ!?」
何が起きたのかと挙動不審になっていると、忍者のような速さでメイドたちが現れて、素早く俺を羽交い絞めにした。
「な、なんだ!?」
「ガーリック様ですか?」
「人違いです!」
「そうですか、ガーリック様ですか!」
「人違いです!」
「マルネス様が呼んでます。付いてきて貰います!」
「……」
どうやら、顔がバレているらしい。
メイドの一人が、カードを門に近づける。すると、手品のように柵の一部が門に変化した。何度見ても面白い。しかし、俺の状況は全く面白くない。俺は、震える声で訊いた。
「め、メイドさん……?」
「そうですか! ガーリック様ですか! 付いてきて貰います!」
「……!?」
メイドたちが怖くて訊ける雰囲気ではない。
俺は、大人しく合印邸の中に連行されたのだった。
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