第二十八話 マルネス様登場!? 似顔絵の罠!

 俺は、合印邸の中に通された。メイドに後ろに手を回されて歩いていく。今は朝なので、屋敷の中も明るい。豪奢な屋敷は歩くたびに燦然として重く沈黙している。メイドの一人が大きな両開きのドアを開けた。そのまま背中を押されて、中に入った。ドアがそっと閉められる。視線の向こうには、身なりの良い目鼻立ちの整った男が窓際に立っていた。外を眺めていたようだが、俺の方を振り返った。そして、こちらにゆっくりと歩いてくる。


「貴様がガーリックか。私は、第四区域の合印のマルネスだ」


 マルネス様は、自分の両手の人差し指と親指を合わせて、その中にアスタリスクをホログラムのように浮かべて見せた。確かに、この方が、合印様だ。


「人違いです」

「そうか。ガーリックよ。第三区域の合印のクエッションと、アヒージョをどこに連れ去った?」

「人違いです……って、えっ? クエッション様とアヒージョが連れ去られたんですか? 誰に?」


 マルネス様は、俺の傍まで来ると足を止めた。

 マルネス様が、一枚の用紙を俺に突きつけてきた。


「ガーリック、これを見ろ」


 俺は、仕方なく用紙を受け取る。それに目を通すと、が描かれてあった。ガーリックと書かれてある。そして、そこには、矢印が引かれてあり、落書きのような字で、『このガーリックが、クエッション様とアヒージョを連れ去った犯人』と書かれてあった。


「最高に上手い。生き写しのようだな」


 俺は、頷く。それで、俺がガーリックだとバレていたのか。


「そうか、俺がクエッション様とアヒージョを連れ去った犯人か。って、はっ!?」


 俺は、思わず似顔絵を二度見した。

 食い入るように見ても、俺の顔だ。

 マルネス様は、ニヤリと笑う。


「そうだ、どう見てもだが、これはお前だろう!」

「間違いなく俺です。実物通りです……ああ、俺でないと否定できないのが悔しい」


 俺は、似顔絵を改めて観察する。

 しかし、クエッション様とアヒージョがさらわれたとは、どういうことだ? 


「でも、クエッション様とアヒージョがさらわれたということは、俺に寄越してきた手紙は、一体だれが送ってきたんですか?」


 俺は、アヒージョから送られてきた解読済みの手紙を取り出して、マルネス様に差し出したのだった。

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