第二十一話 パフェットの我儘? どうしてそれがそうなった!?

 第五区域から帰ってきた俺は、家の庭から特訓するパフェットを見学していた。


「懸賞金が水の泡か……」


 パフェットの負けん気が強いところは見習いたいところだ。しかし、懸賞金を全て特訓用の強力な暗号文に変えて貰ったパフェットはどうにかならないものか。どうやら、俺がパフェットの暗号文を解いたのが相当悔しかったらしい。俺も俺が解けなかったものをパフェットが解いたらそう思うに違いないが。


 パフェットは五時間ほど四苦八苦しながら、暗号文を解読していた。

 すると、ようやく暗号文が解けたようだ。


「やってやったですっ! 私はガーリックさんに勝ったですっ!」

「そうかよ! 良かったな! 特訓の暗号文のお陰で懸賞金が全部パァだけどな!」

「はいっ! 最高に良かったですっ!」


 俺は仏頂面で、パフェットと睨み合おうとした。懸賞金がパフェットのせいでパァだ。それをわかっているのか。猪突猛進のパフェットを止められないのは、いつものことになりつつある。

 しかし、パフェットに笑顔でにこにこされると、疲れ果ててくるようだ。これはダメだ。暖簾に腕押しだ。俺は、早くも文句を言うのを諦めた。


「あれ? そういえば……」

「どうしたですかっ? ガーリックさんっ?」

「アヒージョはどうしてあの時、俺たちと一緒に第五区域の合印のスキュエア様のところに行かなかったんだ?」

「えっ?」

「変だ。アヒージョはあんなに早く第四区域の合印のマルネス様から鍵文を貰って助けに来たのか? ユニコーンでも、暗号の森を往復するためには時間がかかるって言ってなかったか? あんなに早く行けるか?」


 俺の投げかけた疑問に、パフェットが真剣な顔で答えた。


「多分、アヒージョさんは、ピンチにマジ切れして激走してくれたんだと思いますっ!」

「……そうか?」

「気のせいですよっ」

「ちなみに、俺のガーリックっていう名前は?」

「私が適当につけた最高に格好良い名前ですっ!」

「……だよな?」


 そんなはずがないとは思うが。パフェットが良い奴なので、これ以上あれこれ考えるのも馬鹿らしくなってきた。パフェットと一緒に夕日を眺めて、この日はのほほんと過ぎて行ったのだった。



☆*★*☆*★*☆*★*☆*★☆*★*☆*★*☆*★*☆*★*☆★*☆*★*☆★*☆*★*☆



 その頃、噂をされていた当のアヒージョは、ある場所にいた。

 目の前には依頼主がいる。アヒージョは、一礼した。


「言われた通りに依頼をこなしていますわ! 依頼完了まで、あともう一息ですの! ふふふのふですわ!」

「ああ、ご苦労。私の力でスキュエアは見事に踊らされたな」

「はい、お見事ですわ。それで、報酬なんですが……」

「しかし、ガーリックは上手く切抜けてしまった。あのままだったら、スキュエアもガーリックも闇に葬れるはずだったんだが」

「そ、そうですわね」

「前々から思っていたが、お前は妙にガーリックに肩入れしているな?」

「えっ?」

「お前に渡した鍵文は、絶対に解けないように細工していた。それなのに、ガーリックは解いてしまった。お前が鍵文を解けるように細工したんだろ?」

「そ、それは――」

「だから、私は全く面白くない」


 後ずさりしたアヒージョは何かに蹴躓きそうになった。慌てて足元を見る。

 アヒージョの足元に誰かが倒れていた。

 それは、気を失っているようだ。

 しかし、アヒージョは吃驚していた。


「な、なんで、この方がここにいますの!?」

「その男も邪魔になってね。だから、お前と一緒に始末しようと思ってるんだ」


 アヒージョは、恐怖を顔に浮かべて、その依頼主を振り返った。


「そういえば、お前には野望があったな? その野望を叶えて欲しくはないか?」

「えっ……?」


 恐怖していたのに真逆のことを言われたせいか、アヒージョは瞠目している。


「……ほんの冗談だ」


 いつの間にか、暗号がアヒージョの周りを取り囲んでいた。

 暗号がアヒージョに襲い掛かる。


「なんで、暗号が!? きゃああああああ!」

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