第30話 種族格差という罪に対する罰
簡単に言うと一泊二日の謝罪訪問なので、今日の夕方には、
それまでに今回の事件を解決しなければなりません。
と言う訳で、今日はトロン君が通う
今日も私の案内役は、特別管理整備官のカボチャのジャックさん。
「アニスさん、今日向かう上位基礎学校について、お教えしますね♪」
「はい。宜しくお願い致します。」
「上位基礎学校の校長は、中央管理局の局長たるミカさんが勤めてる学校です♪ 一応、区分特区や種族格差が無いように取り計らってるようです♪」
「だから、様々な種族がいるというのですね。」
「ただ、ある程度の学力が無いと入れないのですよ♪ ラファちゃんやトロン君は、成績優秀で万年トップクラスの子達ですよ♪」
「そうなんですか、成績優秀なのは、始めて聴きました。」
「それでも、見えないイジメはあるみたいですよ♪ なので、今回の件は、そのイジメが原因なのかもしれませんよ♪」
「イジメですか…。種族格差ということは無さそうですが…。」
「いえ、私が調べたところでは、種族格差のようですよ♪ トロン君は下位天族の出身なので、人の子と同じ位に見られてるんですよ♪」
「見えない種族格差ですか、それで天族の子にも他の種族の子にも相手にされていないということですね。」
「ラファちゃんが声をかけたのがきっかけで、他の種族の輪には入れたようなのですが、ラファちゃんが一時的にとは言え、転校してしまい、また独りぼっちになってしまったみたいです♪」
「それにしても、カボチャさん、詳しいですね。」
「はい♪ この学校に私の部下を教務として忍ばせておりますので♪」
さすがは、カボチャさんというべきでしょうか…。
闇の中央部をしっかりと把握して、自分が上手く動けるようにしてるみたい。
まぁ、この考えも読まれているんでしょうけど…。
「まぁ、情報収集は、あらゆる基本中の基本ですよ♪」
「それで、トロン君は今はどこで過ごしているのですか?」
「授業には出ずに上位基礎学校内にある図書室で過ごしてるようですね♪」
「では、面倒なので、直接、図書室に行きましょう。カボチャさんの
「はい♪ 簡単に行けますけど、学校の教務室への挨拶とかはいらないのですか♪?」
「見えてるものを見ないようにしてる教務の方々に挨拶は不要かと思いますし、また中央管理局での出来事を繰り返しかねないので…。」
「わかりました♪ それでは、まずは図書室に居るか確認してみますね♪」
カボチャさんは、そう言うと千里眼で上位基礎学校の図書室を遠見してみることに。
超能力か…、「
「
何でも、過去現在未来の全てを知る為には、
その代わりに「光の栞」を貰ったんだけど、何に使うかまでは教えてくれなかったのよね。
「まだ、来てないみたいだね♪ 登校時間は早いって聞いていたんだけどなぁ~♪」
「そうですか、確かにまだ学校の登校時間にはしては、少し早いですものね。」
「それにしても、アニスさんの言う「本」さんとは、こういうものを言うのですか?♪」
カボチャさんが二冊の本を私に見せてくれる。
この二冊の本、「
表紙がちょっと違うだけで、殆んど同じものに見えるわ。
「カボチャさん、これは何の本なんですか?」
「これはですね♪ 一冊は、私の故郷である月の全てを知る本。通称、「月の書」と呼ばれるモノ♪ もう一冊は、この
「それじゃあ、カボチャさんは、二冊の本に選ばれた方なのですね。」
「いえ、違いますよ♪ 私は、この二冊の本を預かっているだけです♪ この二冊の本が認めし者に渡すのが私の使命でもあるのですよ♪」
「では、カボチャさんは認めて貰ってないということなんですか?」
「はい♪ 私が本を読もうとしても白紙なので、残念ながら何も読めません♪」
「そうなんですね。それにしても「月の書」と「闇の書」ですか、二冊の本に選ばれる方々は大変でしょうね。」
「はて、それはどうしてですか?♪ 闇の英知と月の英知をそれぞれに受け継げるんですよ♪」
「私は「光の書」に選ばれたから者だから、わかるんです。全てを知るということは、それに伴う危険もあるということ。一つ、例を挙げると私自身が知らなくてもいいことを知って、私自身が傷つく可能性もあるんです。だから、無理に全てを知ろうとは思わないですし、知りたいことだけを「
「なるほど♪ 知識と言う欲を出せば、英知は得られても自身に対する危険が大きくなる♪ だから、この二冊の本は読み手を選ぶのですね♪」
カボチャさんが私の言葉に感心している。
すると、二冊の本から話し声が「光の栞」を通して聞こえてくる。
『へぇ~、なかなかに見どころのある少女ね。暫く私の関心を示すような者を感じることが出来ずにいたけど、まさか
『お姉ちゃんも同じなの?! でも、あの子、「光の栞」を持ってるし、聞いていたところ、本当に「光の書」の選定者みたいよ。』
『それがどうしたの? 別に私達に選ばれることがあってもいいじゃない。あの方は複数の所持制限なんてルールを作ってないわよ。それにあの子、可愛いし、何より面白そうよ。』
『まぁ、確かにそうだけどね。お姉ちゃんは、相変わらずなのね。まぁ、私達がこうして揃ってること自体が稀なのだから、何とも言えないけど。』
この二冊の本は、姉妹のようね。「
それにしても、「光の栞」から声が聞こえてくるとは思わなかったけど、こういうことを察知してたのかしら?
とりあえず、二冊の本をお借りして、話しかけてみようっと。
「カボチャさん、その二冊の本を私に貸して頂けますか?」
「えぇ、いいですよ♪ 預かってるだけですから♪」
二冊の本を借り、私は本に話しかけました。
「えっと、はじめまして「闇の書」さんと「月の書」さん。先程から「
『あら、やっぱり聞こえていたのね。私はそこのカボチャが言う通り、この
『えっと、私はあの月の全てを知るモノ。通称、「月の書」って呼ばれています。以後、宜しくお願い致します。』
『あら、先に認めちゃったの。まぁ、私も認めるつもりだったからいいんだけど、久しぶりにこの子に先を越されたわ。アニス様、我ら姉妹は、貴女を選定者として認めます。以後、宜しくお願い致しますね。』
「えっ、どうして、そうなるの? 私、今日で
『別に私達には、関係ありません。私は向こうに行くことは出来ませんが、
『ちなみに私は、
『あぁ、そういえば、そうね。その点はいいわよね。アニス様、不出来な妹ですが、宜しくお願い致しますね。』
『お姉ちゃん、不出来な妹で悪かったわね。いいもん。私は、お兄ちゃんに久しぶりに会えるんだから。』
『あぁ、ズルい。そういえば兄様、いえ「光の書」様は、健全でいらっしゃるでしょうか?』
「えっと、元気よ。いろいろとすぐに教えてくれるし、先読みもしてくれるから、お世話になってるわ。兄様ってことは、兄妹なの?」
『いえ、一番、最初に作られたのが「光の書」様なのです。その次に私達が別の方に作られたのです。』
「えっと、一応、本だから、作者が違うってことでいいのかな?」
『はい。その通りです。私達は、執行官の元に全冊揃っていたのですが、執行官の気まぐれで、各庭園に配備されたのです。なので、あの方に会えることが叶わず、時折、寂しくなります。』
『お姉ちゃんは、お兄ちゃんに一途なんですよ。』
「じゃあ、これは「闇の書」へのプレゼントなのかもしれないわね。「
『えっと、これは、アニス様の
「ははは、わかったわ。っで、「月の書」ちゃんは、私と今後も一緒に同行するという形でいいのかしら?」
『はい、アニス様に問題なければ、お傍で月に関することだけですが、各庭園からの月事情などもお伝えすることができますので、お傍に置いていただければ幸いです。』
「わかったわ。カボチャさんがOKしてくれたら、同行して貰うわ。」
カボチャさんは、私達の会話をテレパシーで聞いていた様子。
でも、完全には、聞き取れてなかったみたい。
「さすがは、神々が作り出したと言われし本だね♪ 会話の一部しか聞き取れなかったよ♪ アニスさんは、この二冊の本の選定者に選ばれたということだよね♪」
「はい。そうみたいです。でも、「闇の書」はこちら側にしか居られないらしく、「月の書」は向こうに持って行っても問題ないとのことです。」
「そうなんですか♪ では、「闇の書」はアニスさんが居ない間は私が預かっておきましょう。「月の書」はアニスさんがお持ちください♪ 選定者と一緒の方が本も喜ぶでしょうから♪ 一応、月に関しては、私の知らないことも全てその本が知っていると思いますが、興味本位での深追いは禁物ですよ♪」
「それは、理解していますよ。この本に選ばれたことには何かしらの理由があるのだろうし、その時期が来た時に知りたいことを聞くだけですから。」
「さすがはアニスさんですね♪ その時が来た時は宜しくお願いしますね♪」
きっと、そう遠くない未来に私は、あの月と関わることになる。だから、この本にも選ばれたんだと思う。
無意味な選定をするようなモノじゃないし、歴史や知識量は膨大すぎて、扱いを間違えれば、私自身が滅びかねないのだから…。
でも、三冊もの本の選定者になるなんて、思ってもみなかったわ…。
「アニスさん♪ 落胆するのは後にして♪ トロン君が図書室にやって来たようですよ♪」
「では、気を取り直して、カボチャさん、お願いできますか?」
「お任せあれ♪ 3、2、1、はい、到着♪」
カボチャさんの
目の前に現れた私達の姿に驚くことなく、トロン君は話し始めました。
「やっぱり、今日が運命の日だったんですね。僕が犯した罪が裁かれる日。「博愛」の力が悪しき力となってしまったんですね。」
「はじめまして、トロン君。私は、
「僕は、
トロン君に挨拶をすると、トロン君も挨拶を返してくれ、話を続け始めました。
「はじめまして、僕はトロン。七大天族の「博愛」の転生者です。でも、僕は下位天族の生まれで、落ちこぼれなんです。だから、誰も来ない図書室で一人勉強しています。」
「ん♪ トロン君は学校の成績は、常にトップなのに落ちこぼれなのかい?♪」
「学校の成績が良くても、上位天族の子からは、偏見に満ちた目で見られるし、一緒にいれば、周りの子にも迷惑がかかるから一人でいるんです。」
「トロン君、ラファちゃんにあげたお守りは、何の為?」
「あれは、ラファちゃんに何かあった時に身代わりになるように願って作ったのだけれど、失敗したみたいですね。遠く離れていても、感じたんです。僕の力が何か悪い方向で発動して、博愛の眷属である上位天族の大人が転移して、大樹を壊そうとするのを…。」
「どうして、そんなことになってしまったのか、心当たりはあるの?」
「ラファちゃんは、誰にでも優しく接してくれました。人であろうと下位天族の僕であろうと。だから、僕にも人の友達が出来ました。でも、上位天族の子には嫌われたままでした。ラファちゃんが転校した翌日、僕は、人の友達と一緒に遊んでいたんです。でも、上位天族の子達が邪魔してきたんです。だから、僕が一緒にいると人の友達にまで迷惑をかけてしまうから、図書室で勉強するようにしたんです。それでも、上位天族の子達は、自分達が上の立場であるかのような振る舞いをしてたんです。それを見て、心のどこかで憎んでしまったのかもしれません。」
「つまり、我が物顔で威張っていた上位天族の子達に対してではなく、その元凶を作った大人たちへの復讐みたいなのものかな♪」
「そうかもしれません。僕は、力の使い方を上手くできないんです。ルフォン姉様は、前世の僕の姉だったようで、生まれ変わった僕を可愛がってくれました。力の使い方も少しずつですが教えてくれました。でも、差別主義的なところがあって、人の子と仲良くしてると怒るんです。だから、ルフォン姉様のああいう所は好きじゃないんです。」
「それにしても、なんで大樹を壊そうとしたの?」
「たぶん、大樹が無くなれば、ラファちゃんが帰ってくると心のどこかで強く思ったんだと思います。だから、無意識にお守りを依代にして、
それにしても、「博愛」の力ってすごいことが出来るのね。
でも、意識的にやったのでは、今のトロン君では、数週間は寝込んでしまうはず。
無意識的にやったのだとすれば、力の制御は、前世の記憶と知識が補助して、きちんと行えてるものね。
「うん♪ キミは本当に正直な子だね♪ まったく嘘を言っていない♪ でも、その心の悪いものは消さないといけないね♪」
「そうですね。カボチャさん。トロン君に一つだけ罰を与えたいと思います。」
「はい。アニス様。どのような罰でも、謹んでお受けいたします。」
「では、この学校の種族格差を全て壊してください。猶予は3ヵ月です。ラファちゃんが戻って来た時に皆が平等に勉強できる環境にしてください。監視役として、このカボチャさんが定期的に学校見学に来るので、ガンバってくださいね。」
「それが僕に対する罰ですか?」
「えぇ、そうよ。トロン君が心に抱えてるものを表に出して、種族の壁を壊してください。これは、君にしかできないのことなのだから。」
「僕にしかできないこと…。でも、一体、どうしたら…。」
「それを考えるのも実行するのもトロン君次第。君の力は「博愛」でしょ。その力の根源は何かを考えて行動すれば、きっと答えが見えるはずよ。でも、なるべく力は使わないようにね。」
「アニスさんは、ヒントと言うより答えを教えちゃってますね♪」
「僕の力、「博愛」の根源…。わかりました。僕やってみます。図書館に籠るのは止めて、力も出来るだけ使わず、平和的にこの種族格差を壊したいと思います。」
「では、トロン君に学校はお任せしましたよ。カボチャさん、定期的な見学を宜しくお願いしますね。」
「了解しました♪ トロン君、学校の教務の中にも味方は居ますから、探してみてくださいね♪」
「はい。ありがとうございます。アニス様。ジャック様。」
トロン君の心に一つ、目標が出来たみたい。悪いと思うことを良い方向に持っていくこと。
自分が犯した罪を理解して、それを償い、この種族格差を壊すことで、少しでも良い方向に持っていくこと。
トロン君は、きちんと理解している賢いお子様だから、きっとこの罰もキレイに償い、片付けてくれると信じてる。
「では、一度、中央管理局へ戻りましょう♪ 行きますよ♪ 3、2、1、はい、到着♪」
そう言うと図書室から
カボチャさんの行動は、相変わらず読めないというか、読むのが難しい。
「ところで、なんで特別管理顧問官室前なんですか?」
「フォンセ様がアニスさんに渡したいものがあるそうなんです♪ まぁ、とりあえず、部屋の中に入りましょう♪」
そういうとノックもせずにカボチャさんは、特別管理顧問官室に入っていく。
「これ、カボチャ! 何遍も言うておろう。部屋に入る前にはノックをしなされと何遍も言うておろうに。」
「あぁ、忘れてました♪ すみません♪ でも、その言葉遣いの方がフォンセ様らしくていいと思いますよ♪」
「何を言うておるって、アニスはんが居る前では…ってアニス様が居られるじゃないですか。」
「フォンセ様、無理に敬語を使わなくて大丈夫ですよ。私もその方がフォンセ様らしいと思いますよ。」
うん、フォンセ様って最初に会った時、話し方が異様に敬語で違和感があったのよね。
その正体がこれなのね。でも、この言葉遣い、フォンセ様らしくて素敵だわ。
「なら、もうええわ。アニスはんに渡したいものがあるのです。これを持って行きなはれ。」
そういうと
「知っての通り、こちらの
「私如きの人の身である者が頂いて宜しいものなのですか?」
「それは、アニスはんにしか使えません。だから、問題ないさかい持ってお行きなさい。どうせ、こちらに来る機会はまだまだあるのだし、その際に鍵があれば便利やろ。」
「それは、そうですが…、うーん、わかりました。ありがたく頂戴致します。」
「あと、もう一つ、これな。」
すると、一瞬にして、私の服が変わり、右手にいつの間にかカードが持たされていました。
何だろう、光の特別管理整備補佐官の制服と部分的に似ているような気がする。
「それ、闇の特別管理整備官の制服と中央管理局の身分証やさかい、大事に使うてな。」
「ありがとうございます。大事に使わせて頂きますね。」
「制服は、着ても着なくてもええけど、着たくなったら身分証に願えば、一瞬で着替えさせてくれるさかい、そこはアニスはんの好きにするとええ。」
「わかりました。私が不在の時は、「闇の書」の管理はカボチャさんに任せてありますので、お願いします。」
「あとは、ミカのところに挨拶して行きなはれ。カボチャは、ここに残るようにな。」
「では、アニスさん♪ 僕はここでお説教を喰らうみたいなので、中央管理局の局長室は「闇の書」に行き方を聞いてくださいね♪」
「では、フォンセ様、カボチャさん、失礼しますね。」
こうして、制服を着たまま特別管理顧問官室から出る。
部屋の中では、お説教なのか、報告なのか、何かしてるみたい。
とりあえず、私は中央管理局の局長室へ向かうことにする。
「
『闇ちゃん、いい響きね。そんな呼ばれ方、新鮮でいいわ。ええ、任せておいて。』
『お姉ちゃん、いいなぁ~。ねぇねぇ、アニス様、私の呼び方は?』
「えっと、「
『ううん、いい。月ちゃんか、いい呼び名を頂いたわ。』
こんなやり取りをしながら、中央管理局の局長室にやってきました。
ノックをしてから、局長室に入ることに。
「ミカ様、失礼しまーす。」
「あら、アニス様。もうすぐお昼だというのに、何か御用…って、その制服、こちらの特別管理整備官の制服じゃないですか!」
「えーっと、ご報告に参りました。この度、闇の中央管理局所属、特別管理整備官の任を拝命いたしました。長期不在が多くなると思いますが、宜しくお願い致しますね。」
そう言って、身分証をミカ様に見せる。
「えぇ、本物ですわ。つまり次に来る際は、こちらの特別管理整備官として働かれるということですね。」
「はい、そうなるかと思います。」
「では、アニス様は、当然、中央管理局の種族格差を壊すおつもりですよね。」
「はい、そのつもりです。」
「わかりました。その機会に是非、この中央管理局の区分特区と種族格差を壊してください。お願い致します。私達には無理だったので…。」
「ミカ様?」
「私達、天族は遥か過去に大きな過ちを犯しました。そして、再び私達は、管理職の権限を得て、今の地位に辿り着きました。しかし、まだ天族の中には、過去の過ちを反省せず、過去の栄光にすがる者もおり、このような種族格差が中央管理局に出来てしまったのです。私とガブリールは何度もルフォンの説得を試みたのですが、彼女は言うことを全く聞いてくれなかったのです。その為、北西管轄部は種族格差や区分特区が多くあるのです。ジャック様が、この現状を見て、外部から壊し始めたのですが、中央管理局から追い出されるような形になってしまったので、内部から壊して頂ける方を待ち望んでいたのです。昨日のアニス様のやり方は、確かに力任せでの畏怖を与えるというやり方は一時的にしか、効果は無いかと思います。しかし、次に来る3ヶ月もあれば、光の中央管理局のような誰にでも平等な環境が作れると思うのです。なので、何卒、どうか宜しくお願い致します。」
「わかりました。この
「それは、「闇の書」に「月の書」、確かジャック様が管理されていたはず。もしや、アニス様が選ばれたというのですか?」
「まぁ、そういうことになりますね。「闇の書」は向こうに持って帰れないので、カボチャさんに預けますけど、「月の書」は持っていても構わないとのことなので、持って帰りますね。」
「やはり、アニス様は特別な存在なのですね。ルーシェ様が一目を置くのもよくわかりました。」
「私は、人の子ですよ。自分では普通と思ってますけど、ただ、周りの環境が私を変えてくれただけですよ。」
「そういえば、トロン君の件はどうなりましたか?」
「ええっと、彼には一つ、罰を与えました。上位基礎学校の種族格差を壊すようにって。」
「そうですか、やはり、あの学校にも見えない所で種族格差があったのですね。だから、あの子は図書室にいたのですか…。」
「一応、報告書を今、作りますね。詳しいことは、カボチャさんに聞いてください。今は、フォンセ様に報告してると思いますけど。」
「
『言われると思っていたから、作っておいたわ。これも兄様の栞のお陰ね。もう少しで私の方の栞も完成するから、待っててくださいね。』
そう言うと、すぐに報告書が出てくる。
さすがは「
「では、これが報告書です。一応、帰りは中央管理局への挨拶は止めておきますね。それと
「わかりました。アニス様は、これから私の上司に当たる方なので、今後も失礼のないように気をつけますね。そろそろお昼の時間ですし、一緒にこちらの昼食を取って頂けませんか?」
「はい、それは是非に。あと、別に失礼のないようにというか特別扱いは止めてくださいね。普通に接してください。」
「なるべく、努力いたします。では、中央の大食堂へ参りましょう。」
こうして、私はミカ様と一緒に昼食を取り、中央管理局の方々、特に北西管轄部の方々からは怖れられ、南東管轄部の方々は興味を持たれているようだったけど、ミカ様と一緒に昼食を取っていたので、誰も近寄ろうとせずにこちらを見ながら、皆が食事をしていたので、せっかくの食事の味が少し楽しめず、残念だったのは、言うまでもありません。
ミカ様も周囲の目がありすぎて、職員との距離の取り方がわからない様子で戸惑ってました。
これは次の機会に徹底して、直さないといけないなぁ~っと思いつつ、昼食を済ませ、ミカ様と別れました。
午後に入り、食休みに闇の
小一時間が経過したくらいに「闇の栞」が完成したので、「
風の精霊術で、ミカ様とカボチャさん、フォンセ様にお別れの挨拶をして、闇の
たぶん、そろそろ、両親がルフォン様の治療を終えてる頃だろうなぁ~と思いつつ、両親からのお説教を覚悟しながら、いろいろなことを思いつつ、故郷へと帰る私達なのでありました。
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