第12話 大喧嘩

今日はさんと一緒に地下の基礎学校の図書館に来ている。

瑠璃様に会う為に来たんだけど…。

なぜか、ルーシェ様が居て、瑠璃様と言い争いというより、大規模な結界を展開させて、大喧嘩してる感じがする。


「光の書」さん曰く、「今は行かない方がいい!」って言われたんだけど、気になったから、来てみたもののお二方の間に入る余地がない。

図書館内に大規模結界を展開されているので、結界の外で観戦するとしよう。

こんな珍しい事件を見逃すより、目の前の出来事をしっかりと受け止めよう。両親ならきっとそうするはずだ。


「そうね。こんな珍しい事件を見逃す手は無いわ。」


「長官様と魔天の片翼との大喧嘩なんて、中々に観れないからな。」


って、なんで、お父さんとお母さんが居るの?

しかも、結界内で堂々と何してるの?


「お父さん、お母さん、なんで、ここに居るの?」


「おぉ、アニスか、私達は瑠璃さんに挨拶に来たんだよ。」


「そしたらね。ルーちゃんが先に来ていて、瑠璃さんと何か楽し気な展開になりそうだったので、見守っていたのよ。」


「相変わらず、こういう事には楽しく首を突っ込んでいくタイプなのね。」


「そういうアニスだって、楽しそうにしてるじゃないか!」


「えぇ、だって、お父さんとお母さんとの子供ですから。」


「とりあえず、こっちに来て、一緒に見よう。」


そうこう話してる間にしっかりっと古式結界が私の周囲を守ってる。

しかし、あのお二方は周囲が見えてないのかな?

ここに何気に観戦者が3人も居るというのに。


「一応、古式結界で、私達の気配は隠しているわ。アニスがここに入って来た時もね。」


お母さんの仕業か…。古式結界だから、結界領域に入ってきたものに対して発動したみたいね。

図書館の天井を精霊眼で見通して、地上の様子を確認すると大樹の上からクラ爺が傍観者として観ていた。

管理整備棟のお二方は、まったく気づいてない様子。

影の精霊さんに頼んで、念のため、図書館の入り口を隠す。


「あのお二人が何を言い争ってるのか、聞きたいんだけど、アニス、どうにかならないかな?」


「守ってる代償を払えってこと?まぁ、私だけ聞くのも忍びないし、今、お願いしてあげる。」


風と音の精霊さんにお願いして、両親の耳にもお二人の言葉が聞こえるようにする。

すると、大喧嘩しているお二人の話し声が耳元に聞こえてくる。


「相変わらず、上から目線で物を言うのは変わらないのね。」


「いえいえ、七大魔族の頂点に立つ名家のお嬢様に対して、そんな無礼な物言いをした訳ではないのですが?」


「あら、じゃあ、その血縁関係にある貴女達も立派なお嬢様の一員になるのよ。」


「血縁関係?一体、何のことですか?」


「貴女のお父様、私のお兄様ですのよ。幼い頃にそのくだらない名家の派閥争いに巻き込まれて誘拐されて行方不明になったのよ。」


「そんな出鱈目な作り話を思いつくなんて、流石はお嬢様ですわね。」


「いいえ、本当のことよ。貴女達の魔眼、蒼玉と紅玉の力を持つ我が家にのみ伝わる魔眼ですわよ。貴女達のお父様は紅玉の力が強いせいか、普段は蒼玉の魔眼だったはずよ。」


「確かにお父さんの眼は青かったけど、それが何なのよ。」


「では、切り口を変えましょうか?貴女達のお父様の首筋に下級魔族の烙印が押されていたはず…。まぁ、貴女達のお母様が烙印を消してしまったかもしれないけど、烙印か、その痕が残ってたはずですわ。」


「なんで、お嬢様がお父さんの首筋の痕を知ってるのよ。」


「だから、先程から私の兄だって、話してるでしょ。」


こんな口論を言いながらも、無詠唱で高度魔術の打ち合いをしている状況。ルーシェ様の魔眼は紅くなってる。瑠璃様の片眼も攻撃魔術を放つ際に眼が紅く変化してる。


「確か、ルーちゃんの家系って、好戦的になり、攻撃魔力が高くなればなる程、眼が紅くなり、真紅に輝いた時にその力を真に発揮すると言われているのよね。」


「じゃあ、今の眼は、紅いけど、真紅じゃないよね。」


「紅玉と蒼玉って宝石で言うと何になるか、知ってるかい?」


「お父さん、いきなり、何で宝石の話をするの?」


「宝石に例えると早いんだよ。紅玉がルビーで、蒼玉っていうのは、サファイアなんだよ。これを目の色と併せれば解りやすいだろう。」


「真紅の輝き、つまり、ルビーの輝きに近ければ、魔眼の力は最大限に発揮しているってことね。」


「だから、今は真紅には遠いから、力は最大限とは言えない。けど、この威力は凄いな。」


「ルーちゃんの話だと、攻撃の紅、守護の蒼って言われてるみたいよ。」


「攻撃の紅は、大体わかったけど、守護の蒼って眼が蒼くなった時のことをいうの?」


「そうそう。守護や回復などの魔力を使う際に目が蒼く変化していくと蒼玉の魔眼と言われるらしいわよ。ルーちゃんは蒼玉の魔眼の因子の方が強かったみたいで、幼い頃は紅玉の魔眼よりも蒼玉の魔眼使いだったらしいわ。そして、兄妹で紅玉と蒼玉の両方を備えた魔眼持ちとして生まれてしまって、大変だったらしいわ。」


真紅眼ルビーアイ蒼玉眼サファイアアイって言えばいいのかな?」


「言い方的には、その方がカッコいいわね。今度、ルーちゃんに言ってみるね。」


などとお母さんと話しつつ、観戦継続中。

超級の高魔術の打ち合いが継続して行われおり、一発でも当たれば、非力な種族なら、即壊滅してるだろうし、この結界が無ければ、ここは荒野と化しているのかもしれない。。

今の所、ルーシェ様の方が優位に思えるんだけど、瑠璃様の左眼が紅く変化しているのはわかるんだけど、右眼は髪で隠れていたのでよく解らなかったけど、何か力を解放したのか右眼に変化のようなものが感じられる。


「あら、右眼を開いて天力を解放したの? ついでに77の聖眼のどれかを使うつもりかしら?」


「お嬢様相手なら左眼のみで充分かと思ってたんですけど、やはり、そう簡単にはいきませんね。なので、こちらも右眼を解放しますわ。」


天力と呼ばれる力が解放され、その波状エネルギーが結界の外に軽く漏れてくる。

魔力とは似て非なる力なのが理解できたけど、この天力耐性を持ってるから平気なのかな。

両親も耐性を持ってるから、何も感じてないみたい。。


「魔力と天力を同時解放して使うとは、流石は瑠璃様というよりも、魔天の双翼の片翼と言ったほうがいいかしら?」


「英雄の名で呼ばれるのは、久方振りですが、お嬢様に言われるとなんか嫌味に聞こえますね。そうね、お得意のサファイアでお相手しますわ。」


「じゃあ、私も少し変わった魔眼の使い方を見せてあげようかしら…。」


ルーシェ様がそういうと両眼共に紅く変化していたのが、一旦、両眼を閉じ魔眼の力を拘束する。

再び両目を開けると、右眼に紅玉の魔眼、左眼に蒼玉の魔眼が解放されている。


「以前、会った時には、お見せして貰えなかったですが、そんな魔眼の発動方法をされるなんて、流石はお嬢様ですね。でも、そんな反発しあうような両極の発動を同時に行って問題ないんですか?」


「お言葉を返すようですが、瑠璃様も、魔眼と聖眼の同時解放を一人でうまく行えるのですか?意地になっていませんこと?」


中距離の魔術戦から近距離戦に変化するのかな?

近距離戦だと、このお二人の力からみれば、どちらかの一撃で決まるような気がするんだけど…。

うーん、これだけ高度の大喧嘩は見たことが無いから、予測が難しいなぁ~。


「さて、お嬢様を一気に叩きのめして差し上げます。」


「何か、昔に聞いたことがありますね。その台詞。姉妹で一緒に言って、私に向かってきて返り討ちにあったことを忘れたのかしら?」


「77の天石の聖眼の内が一つサファイアの天石よ。我を邪悪から守りたまえ。聖眼解放ロイヤルサファイア!」


ロイヤルサファイアの光が瑠璃様を包み込む。そして、そのまま、ルーシェ様へ特攻を開始する。


「ふふふ、高潔のサファイアですか、左眼の魔眼も蒼玉の魔眼に変えて、守護を強めての攻撃ですの?」


「ロイヤルサファイアの聖眼での攻撃は、邪悪を退く守護の聖眼であり、破邪の聖眼でもあるのですのよ。お忘れですか?」


「なら、真紅の力、蒼玉の力、対なす相反する魔眼よ。我が眼前に立ち塞がりし、全ての愚かなるものに等しく滅びを与えし力を我に。」


魔眼の力を具現化し、ルーシェ様の姿が変化する。真紅の大太刀に蒼玉の軽鎧を身に纏った魔流剣術師ソードマスターとなっている。


「その姿は、あの時の姿ですか…。」


「えぇ、懐かしいでしょう。双翼の姉妹を揃ってお仕置きした時の姿と似ていますからね。私を一人で越えられますか?」


「いいでしょう。お嬢様のその挑発にのってあげますよ。魔と天の蒼玉の瞳よ。その力を解放し、更なる蒼き輝きとなりて、我に力を!」


瑠璃様の両眼は蒼く輝き、強大な何かを自身に召喚する。その刹那、蒼い光とは別に何かが強制転移して来たみたいで影を通じて、私の影に入り込む。

特に悪いものでは無さそうなので、とりあえず、放置しておくことにしよう。

しかし、この古式結界にもあの多重結界にも反応しないのだから、下手に藪をつつくのは止めておこうっと。


「ん、何? ここ?って、あれ、目の前にいるのあの時のお嬢じゃん!ということは、ここは瑠璃ラピスの精神?」


琉璃ラズリ姉さま、ここなら同調シンクロできるみたいだから、呼んでみたのよ。」


「しばらく見ない間に魔天の蒼玉を使えるようになってたの?」


「これでも、琉璃ラズリ姉さまの足を引っ張りたくはないので。努力と研鑽は日々、積んでまいりましたわ。」


「っで、私の精神の半身だけ呼んで、見学してろってことかしら?」


「えぇ、あのお嬢様を今度こそ、泣かしてやりますわ。」


「では、手出しはしないけど、口だけは出しておこうかしら。よくあの姿を見てごらんなさい。あの時と少し違うわよ。」


琉璃ラズリ姉さま、違うって何が?」


「全てを教えては、意味は無いでしょ。少しは自分で思い出してごらんなさい。」


うーん、瑠璃様の雰囲気が何か変化したなぁ~。

一人のようで二人いるような感じがする。心の中でお話ししてるみたいだけど、そこまで聴き耳を立てるつもりは無い。

心の中を読むような能力は無いし、精霊さんに頼めば、何とかなりそうな気はするけど。面倒だからそこまではしない。


「さて、瑠璃様、同調シンクロしたみたいだけど、片翼だけで同調シンクロ攻撃するつもりなのかしら? まぁ、以前と同様に私から攻撃を仕掛けるつもりは無いから、攻撃するなら、いつでもどうぞ。」


「相変わらず、傲慢なことですね。では、遠慮せずに参ります! 蒼き力よ。我が半身となりて、我が前を立ち塞ぐ者に対し、高潔たる蒼き正義の裁きを!」


「魔天眼、双蒼玉眼式、蒼天滅魔波状螺旋双撃!」


蒼き精神体と蒼き本体の同調シンクロした双撃が、ルーシェ様に向かっていく。それに対して、真紅の大太刀を大地に刺し、不動の構えを解かず。

蒼の双撃がルーシェ様と交差クロスする寸前、真紅の一閃が蒼の双撃を迎撃する。。


「蒼き力で半身を作り出し、同調シンクロの双撃で終わらせるつもりみたいね。なら、私はこの真紅の一太刀で終わらせましょう。」


「我、真紅の一振りにて、我に対する双撃を斬り払わん。真・紅一閃!」


真紅の一閃が天を舞う双蒼を斬り払い、地上に打ち落とす。


「え、何…。」


「ふぅ。さて、誰を泣かすんでしたっけ?」


瑠璃ラピス、本当に気づいてないの? あの時、私達が相手したお嬢様は、蒼玉の剣に蒼玉の鎧を纏っていたことを忘れたの?蒼の精神体との同調シンクロでの双撃は、完璧だったわ。あの時のお嬢様だったら、不動の構えを解いていたと思うけど、今の剣は蒼玉ではなく、真紅。」


「つまり、攻守のバランスが一致している最大級な相手に対して、大いなる守護のみの双撃では打ち崩せないということですわね。」


「そういうことよ。これでも、私も日々の研鑽は積んでいるのよ。例え、英雄であろうと私の姪であることには変わらないし、それに負ける訳にはいかないのよ。一応、義理のお姉さんからのお願いをされてるからね。」


琉璃ラズリ姉さま、あのお嬢様が私たちの叔母って本当のことなんですの?」


同調シンクロしてるから、先程までの口論も大体、解ったけど、間違いないわ。お父様の妹というのは、本当のことでしょうね。」


「さて、同調シンクロしてるみたいだけど、攻守交替するのかしら?」


「私達は、完全な同調シンクロしてる訳では無いですし、何より私の身体はここには無いので遠慮させて戴きますわ。さて、そろそろ戻らせて戴きますね。。いい物を見せて貰えたし、次に会う時は、魔天の双翼として挑戦させて頂きますわ。叔母様。」


「お嬢様から叔母様って、相変わらず、口だけは達者な双子ね。まだ、姉の方が謙虚ってことかしら? でも、それ相応の実力をつけてから相手を見て敬意を払いなさい。」


「私は妹と違って、充分に敬意を払っているつもりですよ。さすがお父様の妹君です。近いうちにそちらにお邪魔しますので、宜しくお願いしますね。帰る前に上の傍観者はいいとして、あそこの3名の観戦者にはお気づきでしたか?」


瑠璃様が私達、親子のいるの方を指をさして、ルーシェ様に訊ねている。


「あの親子は何を観てるのかしらね。」


「たぶん、口論が始まってすぐに来て、観戦してる様子かと思いますけど、では、失礼しますね。」


瑠璃様の聖眼から、強き蒼い輝きが失い、右眼が髪で隠れてしまう。

うーん、凄い喧嘩でしたね。結界を解いて、こちらを見て微笑んでるルーシェ様の姿が少しだけ怖い。

両親は慣れた様子で、ニコニコしてるけど…。。


「ルーちゃん、相変わらず強いわね。瑠璃様は、あと一歩って所でしたね。」


「貴女達親子は、一体、何をされてるのかしら?」


「叔母と姪の大喧嘩を観戦してただけですけど。」


「アニス様、もしかして全て見て聞いていたんですか?」


「いえ、私達親子揃って、一部始終を聞いて見てましたよ。」


「アル、ニナ、もしかして、アニス様に頼んだの?」


「我が家では、ギブアンドテイクの精神は習慣のようなものですから。」


「古式結界で守る代わりに音と風の精霊の力で声を聞くことが?」


「えっと、ルーシェ様、今のこの両親の笑顔の前では、何を言っても無駄かと思いますが…。」


私の一言で察したのか、半ば呆れたようで、半ば諦めた様子でルーシェ様の大きなため息がみられる。

瑠璃様は、私達、親子の図太さに感心したのか、呆れたのか、私達を不思議そうにみて、一言。


「人の親子が、あれを見て、何も思わないの?」


「えぇ、素晴らしい大喧嘩でしたわ。」


お母さんが目を輝かせて、一言で片づけた。


「私達のような人では、達人の域にならなければ、決してできない大喧嘩ですからね。それにこれは戦では無いでしょ。」


お父さんが、補足するかのように言う。


「大喧嘩ね。スケールを変えて見ていただけということなのね。」


瑠璃様は、この二言で納得された様子。

ルーシェ様は、さらに大きなため息をついて、私を見てくる。


「やっぱり、アニス様は、この二人のお子様なのね。何も言わないでいるけど、その顔がこういう時のご両親そっくりだもの。」


「えぇ、確かにこんなスケールの大きい喧嘩をみることなんて、滅多にないですからね。」


これが喧嘩とは言っているけど、本来は、大魔族と英雄の闘いというのでしょうね。この現実離れした戦闘を見ても驚かずにいる私。

ここに来て、今まで私が思っていた普通というのは普通ではなくて、今の日常が普通なのかもしれない。

人が持つ価値観など、こういうような日常を見慣れてしまえば、どうということはない。これが普通に変わるのであるから。


長命の種族が持つ強大な力の一端を見せつけることで、何も知らぬ短命種たる人を相手に恐怖を与えることはできる。

しかし、両親も私も居場所は違えど、片や魔族の長に近い場所にいて、片や日々、竜の威厳やあらゆる種族の方々と普通に接している。

私の普通という価値観が変わったと言えば、その一言で終わり、これが普通と言えば、普通になるのである。

今日は、このことを相談に来たのだけれど、この大喧嘩を見て、私の普通というものの価値観がすっかり変わった気がするの。


「瑠璃様に相談に来たんでしょ。ホントはその前にお暇しようと思ったんだけど、こんなことになるとは…。」


「ルーシェ様、昨日、私の心を読みましたね。だから、それは当然の報いだと思いますけど。」


両親譲りの笑顔で、ルーシェ様へにっこりと笑顔で返す。

瑠璃様は、私を見ると何かに気付かれた様子。


「私に相談する前に、お悩みは解決したみたいね。」


「はい。お二方の大喧嘩のお陰で、一応、解決しました。また、何かあれば、相談に来ますね。」


「そうですか、わかりました。本当の意味で解決させたいなら、一つアドバイスを差し上げます。今から中央に行って、光の大精霊様と友達になって来ることを薦めますわ。」


「えっと、瑠璃様、それはどういうことですか?」


「アニスさんの悩みである普通という認識をもう一歩進んで、新しくするという意味ですよ。」


「光の大精霊様との会合は、もう少し後にと思っていたのだけれど、丁度いい機会かもしれないわね。アニス様、これから中央へ参りましょう。」


「あら? 反対はしないんですね。アニスさんを光の大精霊様と会わせることを。」


「あの深窓の令嬢たる御方に謁見が可能なのは、アニス様くらいでしょ。私も大賛成よ。」


「なら、決まりで宜しいでしょうか? 早速、中央に行って貰えますか? 無論、これは機密なので、アルさんとニナさんはお留守番ですけど。」


「そうね。急に中央からの要人が三人揃って居なくなるのは、この丘の管理整備室へ悪影響になるわね。」


すると、お母さんが急にお母さんがルーシェ様に文句を言いだす。


「そんな、ルーちゃんだけ、ずるいわ。私達も大精霊様に会ってみたいのに…。」


ルーシェ様の逆鱗に触れたのか、とても強いの魔力を発しながら、怒った様子で、両親に説教するかのように話し始める。


「言っておきますが、アニス様は精霊眼の持ち主だから、大精霊様が気配や御姿を消されていても、会うことができるわ。でも、貴女達が会うのは無理なのです。私達の大喧嘩の様に例え、娘に頼んだとしても、相手は大精霊様です。そんな無礼なことを頼める立場には無いと思いなさい。ただでさえ、会うことが気難しい方なのに余計な厄介事を持ち込みたくは無いのです。私でも会うのには、とても気難しい方なので、ご案内をするのみです。」


これが大魔族長の威厳と言うものなのかしら? 竜の威厳に比べると怖さは多少落ちるけど、充分な脅威ね…。

さて、両親の方を見てみると、ルーシェ様の逆鱗に触れたことをようやく自覚したみたいで、一瞬にして黙り込んでしまう。


「申し訳ありません。ルーシェ様、私も妻もこれ以上、娘の負担にならないよう言動に注意致します。私達はこちらの管理整備棟に戻り、中央管理整備室長として、管理整備棟の状況把握に努めたいと思います。」


「では、アルは早速、シャインの元に行き、この丘の管理整備棟の状況把握をお願いします。それで、ニナはどうしますか?」


「はっ、この度の言動、大変、申し訳ありません。私としてはレイティア殿の視察に同行して、この丘の現状把握を行いたいと思います。ルーシェ様には交換研修前の最終確認をして頂きたいので、アニス様の案内が済み次第、早目に戻って頂ければ幸いです。」


「アニス様は、脅えていないのですね。昨日、調べた耐性の状況のままでしたら、影響が少なからず出たと思ったのですが…。」


「古竜様がお怒りになった際の威厳に比べれば、あまり怖くは無かったもので…。あと先程の一件で、私自身の見方や考え方が変わったので、耐性もそれなりに上がったのではないでしょうか?」


「アニスさんは耐性が上がったのではなく、新たに能力を得たようですね。畏怖、恐怖、威厳等の心身的な全圧力プレッシャー無効化だそうです。」


瑠璃様が私の能力確認を行ったのか、そうおっしゃられる。

いつの間に確認したんだろう。流石と言うか、何というか…。

そうだ、私もお二方に対して失礼なことをした身、私もきちんと謝っておかないといけないわ。


「ルーシェ様、両親の件に関しては、娘の私からも謝罪いたします。大変、ご迷惑をお掛けしました。可能であれば、穏便に済ませて頂ければ幸いです。また、私自身もお二方に対して、見られたくはないことをこっそりと覗き見るような真似をして、大変に申し訳ありませんでした。」


「アニスさんが一番に大人の対応が出来てるわね。娘さんに見習って、アルさんとニナさんも、公私の区別はしっかりとつけた方がいいわよ。叔母様は怒らせると怖いみたいだから。」


「大精霊様の存在は、この丘の古竜様同様に中央の極秘事項トップシークレットです。そのことを公人としての自分達の立場を忘れないように。」


「「ははっ。」」


両親は、ルーシェ様から後方へ3歩程、下がって敬礼する。


「そう言えば、瑠璃様は私のことを叔母と認めてくれるの? 久々に同調シンクロしたお姉さんのお陰かしら?」


「何とでも言ってください。だって、お父様が私達に真剣に怒った時の姿と一緒なのですもの。」


「では、瑠璃様、中央への直通転移門ダイレクトゲートの準備をお願い致します。」


「準備は既にほぼ完了しております。あとは叔母様が光の精霊殿近くの転移門ゲートの起動をしていただければ、すぐに行けます。」


「用意周到なことで、えーっと、どこが近かったっけ…。地図マップ確認チェックっと。ここが一番近いかな。中央の特異転移門ゲート起動。直通転移門ダイレクトゲート同調シンクロ開始スタート転移門ゲート内の安全を確認。こっちの準備も大丈夫よ。」


「それでは、直接転移門ダイレクトゲート起動。転移門ゲート開門オープン。では、いってらっしゃいませ。私はここで転移門ゲートの維持と管理をしてますので、叔母様、ご案内を宜しくお願いしますね。」


「では、アニス様、すぐに行きますわよ。夕方までに戻ってこないと色々と支障がでますので。」


瑠璃様とルーシェ様の間に特殊な転移門ゲートが召喚される。

相談事の為に図書館に赴き、大喧嘩に巻き込ま…いや、首を突っ込み、私の普通という価値観が変わった半日。

そして、その価値観をさらに一歩進んで変える為に、中央へ行くことになるとは思わなったわ。


とりあえず、ルーシェ様に途中までは案内してくれるから、安心だけど、光の大精霊様か、どんな精霊なんだろう…。

まぁ、いつも通りに前向きに、友達になってくれれば、嬉しいし、何とかなるでしょ。

あとは影の中に入ってるこの子をどうにかしてあげないと、いけないしね。ここだと面倒ごとになるから、後回しにして、行きますかね。


見たことの無い光の大精霊が住むと言われる、中央の特異点たる庭園へ。

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