第三章 中央からのお客様

第8話 交換研修開始、三日前

闇の大庭園ナイト・ガーデンからの交換研修が明後日から始まります。


私なりに準備は、出来たと思う。

あとは、皆がフォローしてくれるし、役職といっても名ばかりだから問題ないって思ってたのに…。


今日は急遽、中央管理局及び中央管理整備室からお客様が来るとのこと。

当然、今は私も役職を持っているから、必然的に管理整備棟の応接室に呼ばれています。

絶対に事前に知っていて、私に黙っていたのだから、レイティア様に直接、抗議しよう。

シャイン様がここ数日、私をやけに避けていたから、何かあるとは思ってはいたけど…。


クラ爺に文句を言っても「中央のことは任せてあるから知らん。」って言うだろうし、ホントに知らないと思うから。


なんで、単なる人の子でしかない私が役職持ちになって、中央のお偉い方と会わないといけないのか、不思議で仕方がない。

しかも、まだここに来て一年ちょっとの新人である私が半年の期限付きと言えど「特別管理整備補佐官・・・・・・・・・」なんて、役職についてるのよ…。

ここ最近、精霊さん達に愚痴をこぼしている私が居る。

精霊さん達は、愚痴をこぼす私に嫌な顔せずに「大丈夫、アニスちゃんならやれる!」って皆が笑顔で励ましてくれる。


管理者さん達も整備士さん達も、嫌味を一つも言わずに「アニスなら大丈夫!何かあれば、いつも通りに頼ってくれればいいんだから。」って皆が応援してくれてるし、普通に接してくれる。

ここは、ホントに区別特区が無いから、その点は本当にありがたいことなのかもしれない。


色々と考えると疲れるし、面倒ごとは早目に終わらせるに限るから、重い足取りで管理整備棟の応接室に到着しました。


「あら、アニス。何かを観念した感じでのお目見えね。」


「アニスには、今日まで何も言ってませんよ。きちんと約束は守りましたから。」


レイティア上位管理官とシャイン管理補佐官がお茶を飲みながら、私を見てにこやかに言われました。


「えぇ、事前にこういう事は知らされてるはずなのに、何も教えてくれないのはズルいと思います。せめて心の準備をさせて欲しいです。」


「まぁ、確かに数日前に中央からの連絡はあったわ。シャインには誰にも教えないように厳重に口止めしたから。」


「一応、私の今の役職って期限付きであれど、レイティア様より上なんですよね?」


「そうね。確かにそう。アニス、お願いだから、そんな怖い笑顔で私を見ないで欲しいのだけれど…。」


「中央から誰が来るのかは、大体、検討はつきますから、一応、この件に関して、ご報告しても宜しいでしょうか?」


「アニス様、お願いだから、それだけは止めて。今後、こういうことがあったら、事前にきちんと絶対に知らせるから。」


レイティア様が珍しく怖がってるし、それを見てシャイン様が驚きつつも私を少し怖がってる感じがする。


「では、今回だけは、免じますけど、交換研修中に中央や他の管理整備室から誰かが来る際は、きちんとお知らせください。」


「わかりました。今後、このようなことが無いように気をつけます。」


「あと、シャイン様は確かに何も言ってはいませんでしたけど、ここ数日、私を避ける等の行動で何かあるとは思ってたので、一応、心の準備はしてありますので、一応、ご安心ください。」


「シャイン、あとでお仕置きね。私も久しぶりにこんなに想いをしたのだから。」


「シャイン様へのお仕置きはなしでお願いします。もし何かしたら、あとで報告しますから。今回はレイティア様の自業自得ですので。」


「わかりました。それにしても、アニスが権力行使するなんて、思ってなかったわ…。ただ、ちょっと驚かせたかっただけなのよ。」


「私は、これでも一応、単なる人の子ですよ。役職も押し付けられたものですから、いきなり中央から誰か来るなんて言われたら、驚きの余りに卒倒して普通に寝込んでますよ。あと、使える権限は嫌なことをされれば、それ相応に使わせて頂きますよ。」


「レイティア様、アニスがいつもより怖く感じます。」


「シャイン、私もよ。アニスは、絶対に怒らせてはいけない子ということがよくわかったわ。」


いつもの私にない雰囲気を察したのか、お二人が少し怖がってる気がするんですけど、でも、私を少し困らせて怒らせた原因はお二方なのだから、仕方ありませんよね。


「それで、お二方、今日は中央から誰が来られるんですか?」


「えぇと、簡単に言えば、中央のトップ3が来られます。」


「シャイン、間違ってはいませんが、それは略しすぎです。報告する時はきちんと報告をすること。何度も言ってるでしょう。」


「それって、管理整備長官、管理整備官主任、管理整備主任補佐官がこられるということですか?」


「「はい。その通りです。」」


確かにその内の誰か一人が来るとは思っていたけれど、まさか3人揃って来られるなんて思ってなかったわ…。

あぁ、倒れて眠りたい気分だわ。


「アニス、顔色が急にすごく悪くなったけど、大丈夫?」


「えぇ、一応、ダメですが大丈夫です。その内の誰かお一人が来るとは思っていたのですが、まさか、3人揃ってくるとは思ってなかったので。」


「次回からは、事前に報告しますので、どうかこの件は、内密にお願いします。」


私の顔色で察したのか、レイティア様がいろいろな意味での心配をされている。そして、本音も漏れている…。

やっぱり、この二人は師弟関係なんだなぁ~って思う。


「えっと、簡易的な視察と私への挨拶と思えばいいんですよね。」


「そうですね。あとは古竜様へ挨拶に行くくらいだと思います。」


「そんなに緊張しなくても大丈夫よ。アニスが良く知ってる顔だから。」


私、中央で知ってる顔なんていないんだけどなぁ~。幼い時に中央の管理整備室に遊びに行った記憶はないし。

あとは、私の両親の知り合いの誰かがくるのかな。でも、知り合いの人が遊びに来ることは滅多になかったし。

うーん。まぁ、とりあえず、お茶でも飲んで落ち着いて、座って待ってようっと。


「では、アニス。私たちはお迎えに行ってくるから、それまで留守番お願いね。」


「それって、何か言い方が間違ってる気がするんですが…。」


「そうじゃ、まったく留守番などと失礼じゃぞ。」


「あのクラルテ様、いつの間に…。」


「あれ?クラ爺、なんでここにいるの?ダメだよ。今日は…。」


っと、シャイン様が言い終わる前にレイティア様の一撃がシャイン様に決まる。

クラ爺がいつの間にか、私の横に座られて、お茶を飲んでいる。


「シャイン、貴女、いい加減に気付きなさい。この方が古竜様よ。」


「えっ、古竜様?クラ爺が?まさかそんなことある訳がないでしょ。ねっ、アニス。」


「クラ爺は古竜様ですよ。シャイン様、ホントに気付いてらっしゃらないんですね。」


クラ爺が不意に竜の威厳を少し放つとシャイン様はようやく気付かれた様子で、軽く腰を抜かしている。

私とレイティア様は慣れているのか、別に何ともなかったけど。


「レイティア嬢ちゃん、バラすつもりはなかったんだけど、今回は中央から3人が直々に来るから、こっちも一応ここに来ただけじゃ。」


「では、クラルテ様の所には直接にご連絡があったのですか?」


「ん、珍しく長官から連絡が来たからのう。わしもここ来た訳じゃ。」


「クラ爺が来るのは、光の書この子が教えてくれてたから、驚きませんでしたけど、急に隣りに来るのは止めてくださいね。心臓に悪いですから。」


「すまん、アニス。驚かせるつもりはなかったんじゃがな。さっきから、この二人のミスが多かったからのう。あとで厳重に注意しておくよ。」


「はい、宜しくお願いします。では、お二方、お出迎えの方、宜しくお願いします。」


「厳重注意って…、いえ、わかりました。では、出迎えに行って参ります。シャインもいい加減に立っていくわよ。」


レイティア様は、完全に意気消沈し、シャイン様も同様に出迎えに行かれる。

クラ爺も私も何もなかったようにお茶を飲んで待つことにする。

数分後、お二方に連れられ、中央から3人の方が応接室に入って来られる。


うん。確かにお三方の中に見知った顔が二人いる。

あれ?でも、なんで?

なんで、お父さんとお母さんが目の前にいるの???

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