第35話「姫の魔法」
―――竜胆白は警護する―――
黒の勢力の居場所は分からない。楓は王の警護でアリア姫の周囲を離れている。
黒の勢力は放置して、姫を護る事で功績をあげればよいのではないだろうか。
姫の場所は決まっていて簡単に見つかる上に、いつかの祭りの夜の事もあり、信用はされるだろう。
そんな事もあり、俺は姫の元に来て、警護をする事にした。
「そう言えば、アリア姫はどのような魔法が使えるのかな。」
アリア姫が使える魔法を俺は知らなかった。
もし、戦闘になるとすればアリア姫の力も何かしら役に立つかもしれないし、アリア姫本人が役に立たなくとももし俺の知らない魔法を使えるならばそれを利用して戦えるかもしれない。
「私が使える魔法は一系統のみ、魔歌です。」
魔歌、楓の講義では聞かなかった事だ。例え話で誰が使う魔法でどの様な魔法かをよく話していた。
しかし、魔歌と言うのは一度も聞いた事がなかった。
「楓は講義でまだ?教えてくれなかったけど、具体的にどんな魔法なの。」
「魔歌こと、歌式広域魔法はかつて戦争時代に人類が生み出した魔法で、他の種族に劣っていた人類を奮い立たせた魔法。広範囲の軍人を勇気付けた魔法と聞いています。」
それは果たして魔法なのだろうか。元の世界でも歌謡という物は人間を勇気付けた。ただそれだけではないだろうか。
「勇気付けるだけなら、単なる歌でも出来そうな気がするのだけど。」
「魔歌を含む音響系の魔法は、聴覚が在るもの全てに作用します。例えばですが」
その続きは言わずにアリア姫は鼻歌を歌い出した。
「ふんふふんふんふんふん…」
ただそれを繰り返すだけだが、アリア姫の周りに魔法陣が展開される。
そして俺の体は意志には関係なく動き出す。
すぐにわかった、これがアリア姫の使えると魔歌の影響だろう。
そして俺は勝手にその場に座り込んだ。
「例えば今この鼻歌を聞いた者全てをその場に座らせる事は可能です。もちろん使用者自身の能力に、受ける相手の親密度や同じ系統の魔法を使えるか、などで影響を受けるか受けないは変わります。」
聞こえれば不可避な魔法。この魔法は実に強力な魔法だろう。俺に上手く使用できれば俺は限りなく強化されるだろう。
その日アリア姫が就寝する時間までアリア姫と一緒に居たが、何かが起きる事はなかった。
もう日も変わりそうだし、そろそろ宿屋に戻ろうと俺は城の出口に向けて歩き出したのだった。
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