第24話「すれ違った音楽士」

 ―――竜胆白は出会う―――


 俺とエミリーは手を繋いだまま街中を練り歩いていた。

 そして今は沢山の武器を飾ってある店に来ていた。

「ねぇハク、昔はこの店に武器なんて置いていなかったの。けど、黒の国の人達の影響で魔獣何かも現れて、今では武器を置いてるの。」


 この店の利益で考えればこの戦争は悪くないものだろう。売り上げは確実に上がっているだろう。


「あぁ、エミリーちゃんの言う通りだ。俺は元々武器は売っていなかった。売るつもりも無かった。しかし、俺達は戦いに巻き込まれた。だから俺は皆を守る為に武器を作ったんだ。早くこの戦争を終わらせて欲しい。」

 そう言ったのはその店の店主。この男は戦争による利益よりも終戦を願っている。富ではない幸せ。俺は元の世界から富による幸せを手に入れているため、それ以外の幸せが分からない。


 黒の国との戦争の事については、楓にもデッドビート方面にもアプローチをかけて情報を聞き出してみる事にするか。


「じゃあ次の場所へ行こう。」


 そう言って俺がいっぽ踏み出した時だった、俺の踏み出した左足の太腿が何かに当たり、その何かから低い音が響く。


「おっと、失礼しました。」

 低く、特殊な良さを感じる声で、俺はそう言われた。

 しかし、ぶつかってしまったのは俺だ。


「いや、こちらこそぶつかってしまった。ごめんなさい。」

 とりあえず笑顔でそう返せば良いだろう。

「そう言えば、あなたが持たれているのは楽器ですか。」

 黒い棺のような箱に入ったものから低い音が響いていたので、俺はその中身が楽器だと思った。


「えぇ、そうなんですよ。少しここでやる事があって来た。いわゆる旅の音楽士です。」

 その黒い箱を抱きながら男はそんな風に返した。

 この世界の音楽を是非とも聞いてみたいものだ。元の世界と同じく音楽は人々に大きな影響を及ぼしているのだろうか。

「良ければその音楽を聞かせて欲しいのだけど。大丈夫かな。」


「え、えぇもちろんです。私の音楽を聞きたいと申してくれるなんて、光栄の極みです。しかし、ここは人通りが激しいですので、向こうの方まで行きましょうか。」


 そう言って男が指したのは路地の方だった。

 確かにあそこならば人は少ないが、音楽はあまり好まれないのだろうか。しかし、ならば音楽をしながらに旅をする事は不可能に近いはず。


 男は歩き出したが、謎は多く残っていた。

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