第11話「赤の伝承魔法」

 ―――竜胆白は冒涜する―――


 戦闘する訳にはいかない。今戦闘すれば必ず負けるそれは分かりきっていた。

「君は僕のこの剣の事を知らないのか。この国では知らない人はいないと思っていた。更にはこの世界で知らない人はいないと思っていたのだけど。」


 あの炎の刀はそんなに有名だったのか。全くこの世界の事がわからないから、危ないと言える。

「ちなみにこの聖剣は僕の一族が受け継いできた歴史。それ以上でもそれ以下でもない。」


 やはり手の内を教えてくれはしないか。だが、戦闘を続ける訳にはいかない。このまま戦えば敗北してしまう。

「そうかまぁ、どうでも良いんだけど。」

 何か次の話題はないか、それを見つけなければ、戦っても負ける。


「どうでもいいとはなんだ。僕の先祖が紡いできたこの赤の聖剣、そしてその歴史を、君はどうでもいいと言う言葉で済ませるのか。聞かれても教えてあげるつもりはなかったが、この際教えてあげるよ。」


 勝手に話を続けてくれるとは、予想外ではあったが、これはチャンスだろう。

「この剣は古くより僕達の一族で伝えられてきた伝承魔法だ。」


 今、こいつは魔法と言った。この魔法を盗めば、動揺するだろう。何とかこの魔法の使い方が分かればなんとかなる気がする。

「その魔法の内容は、この炎刀えんとう焔架連ほむらかれん。そして、これだけではなく、伝承の英雄とその子孫達が受け継いでこの焔架連で戦ってきたその戦闘の歴史そのものがこの伝承魔法、赤の歴史聖剣。」


 つまりは昔からある古い魔法で、この楓の一族が伝えてきたと言いたいわけだろう。しかし、伝承と何なのか気になる。


「その魔法の発動には条件が必要。まず一つ目は近くに火の聖霊がいる事。この火の聖霊の力を借りる魔法だからだ。その火の聖霊を受け継ぐのも僕の一族だ。そして、その火の聖霊に選ばれた者だけがこの魔法を使える。その選ばれし者が僕の一族。この魔法は誰でも気安く使えるものではない。」


 条件が必要な魔法。それを使えるかは不明だが、この魔法を盗む他に楓に勝てる方法はないだろう。

「この魔法の強さは完全自動戦闘フルオートカウンターを行える事。攻撃は自ら行うが、防御は剣が自動的に動いてくれる。だから、僕に攻撃を当てるためには、僕より優れた剣を使えなければならない。」


 自動的に戦えるとなると、更に勝ち筋が薄れた。だが、これは盗めれば勝ち筋が上がるということだろう。


「発動は実に簡単。さっき僕が言ったように、赤の歴史聖剣よ来たれ。と述べるだけ。これを冥土の土産に持っていくと良い。」


 そう言って楓は再び俺に斬りかかってきた。

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