ワタシはいつも夢の中

Erin

時計が止まった

 突然、世界中の時計が止まったらしい。

古い時計も、新しい時計も、テレビの時計も、全部、全部止まってしまった。それでも僕はいつもの日常を過ごす。

「いってきまーす」と台所にいる母に声をかけると、わずかに頭をを上下に振ってくれた。


空の明るさからして、今は7時頃だろう。もちろん学校の時計も止まっているから、チャイムもならない。なら、いつ授業が始まって、いつ終わるのかわからないと思うでしょ?

僕の父は気象予報士だから、天気には詳しいんだ。自分の体内時計も信じて、僕は先生と生徒に授業の時間を教えている。


空がオレンジ色に差し掛かったころに部活が終わる。サッカー部に所属しているのだが、最近チームワークがうまくいかなくて困っている。


着替えが終わると、誰もいないことを確認して部室の鍵を閉める。

鍵を職員室に返し、学校を出てコンビニへ向かう。


時計が止まった日から、道路がやけに静かだ。

僕の足音が、いつも以上に響いている。


コンビニにつくと、毎日買っているソーダアイスを1個取り出し、レジにお金を置く。

部活帰りのソーダアイスは、僕が人生で食べてきたアイスの中で一番おいしい。


今帰れば夕飯の支度をしている母の後ろ姿。父は仕事が忙しくて今日も泊まり込みだろう。

僕のあこがれ、父の就職先。たまには母の作ったお弁当を持って訪ねてみようかな。


これが僕の日常。正直、ヒマだし、つまらない。

だから、僕は待ち続ける。

非日常な出来事が起きることを。






――――――――時が、動き出すまで――――――――




Fin.

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