遊園地で
「え?遊園地?う~ん・・・・・でも、やめとくわ」
「何でや?せっかくやから皆と一緒に行っといで」
「・・・・分かった」
あまり乗り気ではなかったが、やはり「遊園地」には行きたいという気持ちはあった。
家族で遊園地に行って来た、などという話を聞くと無性にうらやましかった。
日曜日、塾の子達とは学校が違うためあまり仲のいい子はいなかったが、絶好の行楽日和で少し楽しみな気持ちになってきてはいた。
父はお金を持たせてくれたが、他の子はお弁当を持って来ているのではないだろか?
ひとりでお昼ご飯を食べなくてはならないかもしれないが、外食には慣れていたし、ひとりにも慣れていた。
指定されたバス停まで行くと先生が待っていた。
「ミキちゃん、おはよう!」
「はい、おはようございます」
そんな事より、そこには今まで見たことのないオモチャがそのまま大きくなったような可愛い車が停まっていた。
それも黄色で、こんな車に乗ってる人なんてこの周辺にはいない。
「うわ~」と思ったが、黙っていた。まだ誰も来ていない。少し早く来すぎてしまったのだろうか・・・
「さ、行こうか!」
え?他の子は?私だけ?
でも、何故か聞けなかった。「はい」というのが精一杯だった。
車中では先生はやたらとよく喋っていたが、私は上の空で適当に返事をしていた。
嫌な予感がしていた。
嫌だ、この人は嫌だと思っていたが、どうする事も出来なかった。
遊園地では出来るだけ行列の出来ている乗り物を目指し、列に並ぼうとすると、「ミキちゃん、これいっぱい並んでるから。あっちの方が空いてるよ」
「でも・・・これに乗りたいから」
と言ったにもかかわらず、先生はヒョイと私を抱きかかえた。
物凄く恥ずかしかった。
小柄とはいえもう小学5年生になっていた私は、大人に抱っこされる年齢ではない。
それでも周りの人達は親子だと思っているのか、全く誰も気にしていなかった。
それでも何故か嫌だと言えなかった。
何故か抵抗できなかった。
どうして、どうして、どうして・・・・
嫌や、嫌や、こんなん嫌や、先生なんか嫌や、心の中ではそう叫んでいるのに声が出ない。
どうして?
その日は結局、ずっと先生に抱っこされたり頭を撫でられたりしていた。
先生はずっとニコニコして上機嫌だった。
帰りの車の中で、スカートの中に手を入れられ、パンツの上から指でこすられたりしていた。
でも、黙っていた。じっとしていた。
私に何か悪いところがあったのだろうか?
他の子はこんな目に遭っていないのに。
パンツの中にも指は入ってきた。
でも、黙っていた。
少し大きくなってからあの車はワーゲンというらしいという事を知った。
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