母との再会

ある日突然父から「母ちゃんに会いたいか?」と聞かれた。

勿論、当然ではないか!


しかし、単純に喜んではいけないような気がした。

父に申し訳ないような気持ちになって「分からんけど・・・・うん・・・どこにいてるか知ってるん?」と答えるのが精一杯だった。


七夕になると学校で皆、短冊に願い事を書かされる。

いつも大人の喜びそうな子供っぽい願い事を書いていた。


「算数で100点とれますように」「プールで50メートル泳げますように」


でも、そんな事はどうでもよかった。

お願いをしなくても算数の成績は悪くなかったし、水泳も25メートル泳げていたので何の問題もなかった。


「母ちゃんに会えますように」

ただそれだけだった。


両親はいったいいつ連絡を取り合っていたのだろうか?


母ちゃんに会える!

その日が待ち遠しくて当日はソワソワしていた。


ユキと2人でバスに乗って駅まで行ったら母が待っていた。

「母ちゃん!!」


ユキと2人で飛びついて母のそばを離れなかった。

駅から更に電車に乗って4つ目の駅で降りた。


私は駅で切符の買い方、料金、4つ目、という事を頭に叩き込んで

忘れないようにした。


駅からすぐ近くのアパートに着くと、ニコニコしながらマエカワさんが待っていた。


想像していた通りであった。

私達は1泊したのだが、マエカワさんも帰らなかったので一緒に住んでるんだと知った。


それから暫くの間、週末は母に会いに行ってマエカワさんと4人で過ごしていたのだが、ある日突然、父から「禁止」命令が出た。


理由は分からなかったが、反抗したユキが父に殴られたのを見て、私は何も言えずただ涙を流していた。

その姿を見た父は「たぶんミキは泣くと思ったからな、ほんまはお父さん、言いたくなかったんやで」と言ったので、父も苦しんでいたのだろう。


ユキは「嫌や~」と泣き叫んで暴れまわっていたので、やむを得ず手が出てしまったのだろう。


何故、母と会ってはいけないのか聞けるような雰囲気ではなかったので、聞かなかった。

ただ黙って受け入れるしかなかった。

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