不殺を貫く魔術師の放浪日記

春野龍助

西暦2025年6月3日:クーレタイトにて

長きに渡って繰り広げられた「第三次魔術戦争」が終結して早12年、各地での街の復興や再建も終わり、穏やかな日常を過ごしている。

戦争の被害が一番大きかった水の都「クーレタイト」も例外ではなく、笑って暮らせるようになっていた。

戦争により魔術師が減った事からクーレタイトにも戦争が終わって5年後には「ガレジア魔術学院」が設立され、多くの若者が魔術を学んでいる。


今回は、俺がこの水の都に来た時の話をしよう。

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「さて、ここが目的の街みたいだぞ」


「やった!遂に念願の街に来ましたよご主人!」


「そうだな・・・戦争で被害甚大だと噂で聞いていたが、今は随分綺麗になってるな」


「ねぇねぇ、早く中に入りましょうよ!」


「分かったからあまりはしゃぐなよ」


(全く・・・街の入口でこんなにも大はしゃぎされると入りづらいったら無いぞ。

まぁ、気持ちは分からなくも無いんだがな)


そんなこんなで俺は自分の相棒であるルーファス・レインと共に水を司る神「カナロア」の加護を受けし都「クーレタイト」に来た。

まぁ、本当は此処に来る理由は無かったんだが、強いていうならカナロア信仰者であるルーファスが「一度は行ってみたい!」と俺と旅を続けてからずっと言ってきた事だったから、目的地に加えたと言うのが理由だ。だからこそのさっきのテンション。まぁ分からんでも無いだろ?


「しっかし、雰囲気といい造りといい結構良い所だな。」


街は城壁に囲まれてはいるものの、結構な広さがあり人々は畑仕事をしたり自分の店を出してアピールしたりと穏やかで何処か懐かしい感じがした。


「さぁさぁご主人!観光する前にまずは教会で挨拶ですよ!」


「分かってるよ、魔術師にとっては重要な事だからな」

(まぁ、魔術なんて人間には過ぎた力で災厄の元凶そのものなんだけどな)


なんて事を思いをながら俺達は教会に入って祈りを捧げた。ま、いかに魔術を嫌おうともこれが無いと旅が出来ないのは事実。そして魔術は実際に生活を豊かにしてくれているし、何より心から信仰し続けていると神様がちょっとした願いなら叶えてくれるのもまた事実だからな。


「よし、お祈りも済ませたし後は宿を取って観光だな」


教会を出た俺達は次に何をするかを話し合った結果、宿を予約して二人で街を見て回ったりお土産を買ったりしようといういつもの流れに決まった。


「さぁてご主人!まずはどこから回りますか!?」


「だから、そのテンションをどうにかしろよ・・・ま、まずは観光スポットでも巡ってそのあと魔術道具を見に行くって事で良いんじゃないのか?」


(やれやれ、子供って本当に騒がしいな・・・ま、このくらいの方が元気に育つけどな。)


「そうですね!では此処から近い場所まで行きましょう!」


「此処から近いとなると・・・この街から出てすぐにある賢者の泉だな」

俺が地図を見ながら応え、向き直るとルーファスを目を輝かせていた。


「お、おう・・・それじゃ、賢者の泉に行ってみるか。」


「はい!!」


二つ返事をすると同時にルーファスは走っていった。

やれやれ、本当に元気の良いお子さんだな・・・ま、俺も世間で見ればガキだけどさ。


道中の景色を楽しみながら、平坦な道を歩いて約10分で賢者の泉へとやって来た。


「おぉ・・・!此処が賢者の泉!!綺麗ですねご主人!」


「確かに、改めて自然を目の当たりにするとすげぇな」


そこには鏡のように透明で美しい青色を反射した水と、その水を上から流している滝。円形状に広がっていて深さも広さも街を一つや二つ合わせたような大きさだ。

よく見ると魚も元気良く泳いでいた。

数分間はその泉を眺め、お互いに色んな事を思いふけっていた。

その後はルーファスが泉の前で一例し、泉の水を小瓶に入れ、俺達は賢者の泉の前で祈りを捧げてその場を後にした。


「しっかし、すげぇ所だったな・・・ルーファス、お前だどうだった?」


「もう最高ですよ!!生きたかった街に行けて目の前には賢者の泉があったんですから!!これ以上ないくらい最高ですよ!!」


「すげぇテンションの上がりようだな・・・まぁそこまで嬉しいなら良かったよ」


その後は特に語る事は無いので簡潔に記す。俺達は来た道を戻り、満足な笑顔を見せるルーファスと共に再び街に入っては食材の調達とカナロア神を象ったお土産品等を記念に購入した。

軽く昼飯を済ませ、次は何処に行こうかと話しながら歩いていると一つの張り紙を見つけた。


「ん?何だこれは・・・」


掲示板の役割なのか、街の真ん中に立てかけてある木の看板にこんな張り紙があった。

「急募!!魔術講師1名!今日の授業一回分で金貨5枚!○○日まで募集中!」


「魔術講師か・・・確かに人手不足だし何処でも募集するのは当たり前だが、何で一日限定にするんだろうな?しかも期限日が明日までだし」


隣に居るルーファスに問いかけたが、彼女は怪しむ所か乗る気満々な様子だった。


「き、金貨5枚!?一回だけ生徒に自分の知識を言いふらすだけで金貨が5枚も貰えるんですよご主人!」


「言い方気おつけろよ・・・でもま、路銀を稼ぐのは簡単では無いし、ここまで美味しい話も早々出ないよな。」


という結果になり、話だけも聞きに行こうと俺達はデカイ建物「ガレジア魔術学院」

えと向かった。

歩いて20分ぐらいだろうか。それ程歩いた所にガレジア魔術学院は存在した。


「結構でけぇな・・・街の中で一番じゃないのかこれ」


そう思わせるくらいの大きさでありその分人も居るという事・・・どれだけ魔術に力を入れているんだこの街はと少し驚いたな。


「こんな事で驚いていられませんよっ!目的は金貨5枚なのですから!」


「ま、そうだな・・・んじゃさっそく中に入るとするか」


学院に入って最初に思ったのは、意外に綺麗だったという事。掃除が行き届いているし。すれ違う生徒は見ず知らずの俺に挨拶をしてきた。そして入口にある受付の人に張り紙の件を聞いたら丁寧に教えてくれた。礼儀もなっていて個人的には好きな場所だと思ったな。

そして案内されるがまま客間に通され、少し待つと男性が入って来た。


「失礼。お待たせしましたな。」


「いえ、そこまで待ってないので大丈夫ですよ。貴方がこの張り紙を作った教師ですか?」


と、紙を見せると正にその質問を待ってましたと言わんばかりに話し出した。


「はい、正しくそうにございます!いやぁ来てくれないのでは思っていたので一安心ですよ!あ、私はこのガレジア魔術学院で学院長を務めていますファリナ・ローフェンと申します。」


「ファナリア・ローフェン学院長さんですね。俺はシルクリット・フーバー、隣に居るのは俺の相棒のルーファス・レインです。」


それから少し世間話をした。簡単にまとめるとファナリア・ローフェンと名乗る男は戦争の生き残りだで、当時は学生だったので安全な場所に避難をしては居たが生活が苦しく大変ひもじい思いをしたと語っていた。つまりは年齢は30代ぐらいと見るのが妥当だろうか。


「さて、世間話もこれくらいにしてそろそろ本題に入るとしましょうか。そこのお嬢さんも退屈そうですしね。」

気になって隣を見るとルーファスは只管置かれたお菓子を食べていたかと思うと自分の荷物からノートを取り出して何かを書いていた。一応依頼者の前だぞ。


「すいません、コイツは好奇心旺盛な割には興味の無い話をされるとすぐ飽きてしまうんですよ。」


「ははは、構いませんよ。子供に限らず大人もそういう人が居ますからね。」


「本当すいません、まだ14歳と若い上に村に住んでいたので世間の渡り方を知らないのですよ。」


「なるほど、そういう事でしたか。ですが知識を高めるのは良い事です。では書き終わる前にこちらで話を進めましょうか。」


「お願いします。」


「実は,明後日から一日を使って魔術の講義をしようという事に決まってその予定もプログラムも終えて後は当日を迎えるだけとなっていたのですが・・・」


「ですが?」


「講義をされる予定の魔術講師が風邪を引かれて寝込んでしまったと連絡を受けまして、どうしたものかと悩んだ結果張り紙で募集をしたのです。」

因みに、講義をする人はクーレタイトに住んでいる者ではなくそこから近い街からわざわざ学院側が招待したという事だ。ファナリアさん曰く学院教師の中の知り合いらしい。


「なるほど、予期せぬトラブルというものですね・・・ですが、そちらの教員で何とか出来たのでは無いでしょうか?」

「それは考えていましたが、期限日までに名乗り出くれる人が居なければそうしよう、と皆で話し合ったのです。」


「どうしてです?」


「やはり、生徒には見聞を広めてもらうためにと思い我々とは違う魔術師による講義を受けて頂きたかったのと、正直言って毎日一緒に居る教師の話じゃ生徒もまともに聞かないでしょう。」


「あぁ、それは一理ありますね。」


思わず笑ってしまったが、後者の理由ではっきりと分かった。この人は本当に優しく面白い人だと。そして生徒の事を想っているという事。


「分かりました。そういう訳なら俺で良ければその講義の仕事を受けましょう。」


「おぉ!やってくれますか!ありがとうございます!」


「えぇ、俺としても人に何かを教えると言うのは貴重な体験なので良い経験ですよ。

それとコイツも」


ルーファスを横目で見るとまだノートに何かを書いていた。


「それでは、明後日の講義までに話す内容をまとめて下されば有難いです。こちらで指定した内容よりも実体験を交えた話の方が生徒も興味を持つと思いますので」


「何でも良いんですか?」


「えぇ。魔術の素晴らしさを伝えるも良し、残酷さや危険性等を教えるも良し。シルクリットさんが今までの人生の中で知り得た事を是非教えてあげて下さると助かります。」


「なるほど、こちらの経験を・・・では、明後日までには内容を決めておきますね。」


「全てを任せるようになってしまってすいません。ですがバックアップは全力でしますので安心して下さい。」


それから少し雑談をして、ルーファスの用事が終わった事を確認して俺達は学院を出た。


「さて、講義の内容か・・・どういったものにするかな」


「やっぱり物語上にしてご私達の過去を説明するのが一番なのでは?」


今まで喋らなかったルーファスがいきなり喋ったので少し驚きながらも答える。


「まぁそうだな・・・伝えたい事をはっきりとさせてそこから旅の内容を思い出してまとめていくか」


そんなこんなで俺達は早めに宿に戻って荷物を整理し、銭湯に行っては疲れを癒しつつ内容を構築し、宿に戻ってはお互いの意見を纏めていった。

気がつけばすっかり辺りが暗くなり、結構な時間が経っていた。


「っと、もうこんな時間か、流石に疲れて来たし続きは明日にするか。」


「そうですね。明日は丸一日残ってるので内容も完成するでしょう。」


意見が一致した所で明かりを消し。俺達は眠りについた。


学院での講義の内容は次のページにて書こうと思う。

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あとがき

皆さまこのような作品を最後まで見て下さりありがとうございます。

ストーリー構成や話の作りが強引だったり違和感があるかと思いますが、主な構成としてはタイトルやサブタイトルから見ても分かる通り主人公が感じた事等を日記に記したような感じで展開していきます。思った事、感じた事等を書いているので主人公目線で語られるます。

もちろん戦闘回やシリアス回もありますのでそこは楽しみにして頂けるとうれしいと思います。

それと、あまり世界観や専門用語について説明してませんが、それは次回の講義にて説明する予定なので良ければ次の話が出るまで待って頂けると嬉しいです。

では次回またお会いしましょう!



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