聖槍
亮はトレーニングを日課としていた。
・ランニング毎日20キロ
・腕立て100回
・腹筋200回
・背筋200回
・スクワット200回
出来るようになったら増やしていこう。
今なら召喚されてもメイドさんよりライフゲージ短くはないかも。
レベルは異世界じゃなきゃ視れないみたいだけど、レベル3って事はないんじゃないかな?これなら次にいつ召喚されても大丈夫!
・・・って、まさかこのタイミングで!?召喚されちゃうの!?
目の前が真っ白になったと思ったら、そこは異世界だった。
そこにいたのは前回と同じメンツ…いや一人少なくなってるかな?
漂うシリアスの香り…俺がいない間、シリアスだったなんて事ないよね?こんな時、俺は何と言えば良いんだろうか?
「一週間のご無沙汰でございます」かな?
いかん、いかん、雰囲気に飲まれてはいかん!
「というか、何で帰ったはずの俺がまた異世界に来たんだよ!何で誰も俺の方を見ないんだよ!説明しろよジジイ!」俺は思わず叫んだ。
「誰がジジイじゃ!」老人は文句を言った。だってアンタ完全にジジイじゃん。…が説明してくれるようだ、ありがとうジジイ。
「召喚は契約なんじゃ、召喚された者はその契約に従って、その世界に滞在し活動をする。ただ、その契約が固まる前に元の世界に帰ったりすると、その時点での契約が発動してしまうんじゃ。
オッケー把握した。
つまり皇女との契約は
「週に一回、異世界で救世主として働いてね」って訳だ。あとは細かい労働契約だ、組合もないみたいだしな、最初に聞いておかないと痛い目をみるぞ。
「週に一回なのはわかりました。では御社での拘束時間と福利厚生について聞きたいのですが。あっ、あと休憩時間は何分で何時間働いたら発生するのかも聞かないと!昼食代は天引きで…」
「何を言っておるのかサッパリわからん!『御社』て何じゃ!あと突然敬語になるな!」
はっ!異世界に来たんだった。アルバイトの採用面接の気分だったぜ。
「拘束時間じゃったな、こんなケースは珍しくてワシにはわからんが…契約の単位は最短で2日のはずじゃ。最短の契約をした状態なら2日で元の世界へ帰る、という事じゃと思うが…て、何でワシが召喚の魔術書を労働規約を調べるように使わなきゃならんのだ!」
ジジイはツッコミ体質のようだ。
「なるほど。週に一回召喚されて2日働いて元の世界へ戻るって訳だな?…ということは召喚された今日が土曜日だから…俺は週末を異世界で過ごすって訳だ、そういう事だろ?」
「そういう事じゃ」とジジイは答えた。
「もう1つ気になる事があるんだが」俺は続てた。「俺、丸腰なんだよね。まさか救世主で戦場に放り出すような事はないと思うけど」
まさかね。言ってみただけさ!俺の武器なんて用意されてるに決まってんじゃん!救世主には伝説の武器が用意されてる。もう、お決りすぎてイヤになっちゃう!
「あ」
おい!ジジイ!なんだその「忘れてた」みたいな「あ」は。
「も、もちろん準備してあるとも!これがお前さん用に準備した武器『投げナイフ』じゃ!」
ジジイは俺に投げナイフを渡した。
おかしい。何がおかしいって救世主として暗殺者を異世界から呼ぶってありえるの?投げナイフって暗殺者の武器でしょ?
外野から、気のせいかささやき声が聞こえる。
「あの投げナイフって商人の遺留品じゃない?」
うん、気のせい、気のせい。
せっかくだから、試しに「用意された」投げナイフを使ってみることにした。
投げナイフを標的である木の板に向かって投げると、標的には突き刺さらず、壁に当たって跳ね返ってきた。
「うむ、隣に座っているワシに『殺す気か!』という思いをさせるとは・・・恐るべしじゃ、恐るべき適性の無さじゃ。」
「おい!大賢者!アンタが俺にこの武器を使えって言ったんだろうが!」
「誰が大賢者じゃ!勝手に人を出世させるでない!適性がないのはわかっておった。確かめただけじゃ。本当に使わせたい武器は、えーと、これじゃ!この槍じゃ!」
このジジイ、今「えーと」て言わなかった?適当に手元にあるもんを指差さなかった?
「あの槍って商品じゃありませんでしたっけ?まぁ、持ち主の商人はもうこの世にはいないんで、有効活用させてもらおうとは思ってましたけど。」メイドが皇女にささやいている気がするが気のせいだ、気にしたら負けだ。
俺は槍を持ってみた。
槍は長く7mくらいはあるだろうか、「持てるワケねーじゃん、試しに持っただけだよ」って言う気満々だったのに…。
「馴染む、実に馴染むぞジジイ!」
俺は大声を出した。
「誰がジジイじゃ!失礼な小僧じゃな!」ジジイはツッコミを入れたが
「いや、言いたくなっただけだ。半音を入れたら著作権がうるさいかなー、と」 という呟きには「全くコヤツは何を言っているのか理解出来ん。」と言うにとどまった。
これが後の世で「聖槍」と呼ばれた亮の誕生の瞬間である。
しかし「聖槍」という呼ばれ方を亮は
「誰が『精巣』だ!卑猥な呼び方をするな!」と嫌がっていたが、それは別の話である。
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