週末逃亡記
@yokuwakaran
こんにちは異世界、そしてさようなら
どこだここは?洞窟の中か?人間が密集しているが俺の方を向いてる。「誰かを俺から守ってる?俺って警戒されてる?」俺は俺の方を警戒している集団に目をやった。
集団を守りつつ、隙あらばこちらに攻撃を仕掛けようって細身のヤサ男…レベルは70でMAX、ライフゲージは長くてタフだな。ライフゲージの横のイラストはナイフか、何を表してるんだろ?装備武器?職業?
お、メイドがいるぞ!レベルは6でライフゲージもそんなに長くない、一般人はこんなもんだろ。ゲージの横のイラストはホウキ?魔女?魔法少女の成れの果て?いや、イラストは職業欄だな。しかしけしからん体つきをしてるメイドだな!
誰かを護るみたいに抱きついてるけど…胸が邪魔して見えない!
で偉そうにしてるジジイ、と。顔に「諸悪の根元」て書いてあるぜ。俺はこのジジイにここに拉致られて来たんだ。いっちょ前にレベルはカンストしてて70か。ライフゲージはそんな長くないな、余命と一緒で。イラストは杖か、イラストが職業欄だとすると杖は老人ホーム入居者か魔術師だけど…どっちもあり得るな。お、ジジイが何か言うぞ。
「よくぞ参った異世界の勇者よ!」老人が宣言する。
「俺説明書も読まないしチュートリアルもやらない主義なんだ」
開幕偉そうなことを言うジジイは実は大した事言ってない、ゲームから学んだ知識だ。
「何を言ってるかサッパリわからんが…年長者の言う事は聞けと親に言われなかったか?」ジジイが半泣きで抗議する。
「俺を拉致した犯罪者が偉そうに言うんじゃねえ。『犯罪者の言う事を聞いちゃダメ』って言われて育ったんだ。」
ジジイの言い分を聞かない俺を見て、らちがあかないと思ったのかメイドに抱えられていた銀髪の少女が口を開いた。彼女のレベルは5、ライフゲージは長くもなく短くもない。イラストは王冠だった。やられて目をさますと玉座の前に彼女がいて、「おぉトンヌラよやられてしまうとは情けない」て言うんだ。って誰がトンヌラやねん!
ってちょっと待て!スルーしてたけど何で俺レベル見れるんだよ!頭の上にみんなライフゲージがあるんだよ!職業欄がイラストでわかるんだよ!
…もしかして自分のレベルとかも見れたり…したよ!俺のレベルは「3×1」…どういう事だ?表示バグ?レベル3て事だと思うけど「1」ってかけても数かわらないじゃん。メイドとか女の子よりもレベルが低いの!?ライフゲージもメイドよりもジジイよりも短いね、ちょっと強めの攻撃食らったら死ぬね。職業は槍のマークだから「ランサー」って事か。俺を呼び出した人に「自害せよ、ランサー」て言われそう。
色々考えていると銀髪の美少女が口を開いた。
「私はデンブルグの皇女ヘレナです。」
この時思ったね「恋はするものではない。落ちるものだ」って。
「我が国は現在隣国で平原の大国であるウェートが和平を破り攻めてきた事で軍隊は壊滅し残った皇族は私だけという状態です。私は西の国セーヴェまで逃げ延びセーヴェの力を借りてデンブルグを再興せねばなりません。」
皇女は小さいがよく通る声で説明した。
「そこで西の国にお姫様が逃げ延びるのを手伝うために異世界から俺が呼ばれた…そういう訳ですね。状況はだいたいわかりました、でもわからない事もあります。いくつか質問しても良いでしょうか?」と俺は言った。
「その前に名前を教えてもらってもいいですか?何と呼べば良いかわからないので…」皇女は話を遮った。
「名前ですか?諸角亮(もろずみりょう)です。呼び方は好きに呼んで下さい。『りょう』でも『マイステディ』でも『トンヌラ』でもかまいません」
「それでは『トンヌラ』さんと…」
「やっぱり『りょうさん』と呼んでください!」
「それでは亮さん改めまして質問をどうぞ」
「俺が何かの役に立つとは思えないんですが他に誰かいなかったんですか?」
「その質問にはワシが答えよう」ジジイが答えた。
「いやお前には聞いてない」俺はジジイの回答を拒否した。
「質問に答えられるのがワシだけなんじゃ!答えさせてくれー!」
ジジイは懇願した。しょうがねえ今回だけだぞ。
「召喚の魔術は3年に一回しか使えない大魔術なんじゃ。だから次に使えるのは3年後なんじゃ」
「なるほど!だからヘボいヤツが来ても、三年はチェンジがきかないわけだな!…って無礼にもほどがあるだろ!」
「他に質問はありますか?」皇女は問いかけた。
「あなたは本当に西の国に保護されるんですか?俺なら逃げ込んできた亡国の皇女を大国に差し出して、国の延命を懇願するけどなぁ」
こんな質問して皇女さん怒ってないかしら?そんな事を思っているとヘレナはこう答えた。
「西の国は我々に対して協力する事の証として私と皇太子の婚姻を申し出ています。」
不思議だな、何で「絶世の美女だ」と思っても「男がいる」て知ると魅力が半減するんだろ?
でも良かった。「君のためなら死ねる」て言っちゃうところだった。婚約者がいる女のために命かけられる訳ないじゃん。
失恋のショックで体に力が入らなかったけど俺は最後の質問をした。
「帰って良いですか?」
「召喚の魔術は三年に一度しか使えないんじゃ!あと三年はコヤツに守ってもらうしかないんじゃ!って何でお前は召喚の魔方陣の上にいるんじゃ!?あっ!お願い!帰っちゃダメー!」
何かジジイがわめいてるけどハートブレイクな俺には何も聞こえない。
魔方陣が青白く光り輝いた、と思ったら自分の家のベッドの上にいた。
もしかしたら異世界からの最速の帰還じゃないかな?
俺はベッドに寝転びながら誓った。
「今度召喚される時に備えて身体を鍛えよう。メイドに守られる救世主、主人より体力が低いナイトなんて格好悪いもんなぁ…」
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