第25話

ここだ。と着いたのは、ダム湖の近くにある下水処理施設であった。


「テツさん、正確な場所は分かりますか?」

鹿島は荷物を降ろしながら哲也に確認する。


「あそこだ。」

哲也が指さすそこは、下水道である。


荷物を2人で手分けをして持つと、その下水道に入る。

中はやや広く、そしてヘドロとは違う、少し甘いような、別種の臭いが充満していた。

「これは...腐臭だな。やっぱり、ここはあいつらの巣だったか。」


 ライトをかざしながら進む。

暫くそのまま進むと、下水道が入り組んできた。

哲也は携帯を取り出すと、娘の携帯に電話を掛ける。

下水道の奥から、この雰囲気に似つかない軽快な音楽が流れる。


「よし、あっちだな。」



鹿島は無言であった。段々と音源に近づいていく。



 音源にそろそろ着くかと思う頃、おもむろに哲也は鞄から散弾銃を取り出した。

「時間稼ぎくらいにはなるだろう。」

散弾銃を構え、手榴弾をいつでも投げられるように準備する。



さらに進むと下水道が急に開けて、広い空間に出た。



そこには臓器で作られた、赤茶けた、人の頭のサイズのボールがいくつも転がっている。

一部は脈動し、中に何か居るのかは分かった。


哲也は、ライトで照らされたそのボールを、散弾銃の先で強く押した。

やや弾力性があったが、さらに力を入れると、ぷちゅと音とともに中身が流れ出す。


 

 中身のそれは一見、人間の胎児のように見えた。

しかし、それには触覚が生えており、口は蟻のような顎に変形していた。

背中には羽が縮れてくっついており、手足にはかぎ爪の形をしていた。


「人間を襲っていたのは食料兼孵化器代わりのためか。」


不意に、その生き物は目をあけた。

そして、鹿島と哲也の2人を見ると、甲高く鳴いた。


 一瞬、静寂が流れる。

その生き物は、死んでしまったようで動かなくなっていた。


「他のタマゴも潰すぞ。」

哲也と鹿島の2人でそのボールを潰していると、下水道の奥から、重い音が近づいてくるのであった。

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