第24話

哲也は鹿島の居る病院に着くと、彼の姿を探した。

程なくして、病院の廊下を歩いている鹿島を見つけると、開口一番に「鹿島、協力してくれ。」と頼んだ。


「テツさん、一体どういうことです?」



「俺の家族が”あいつ”に襲われた。俺の手でカタをつける。」



「テツさん...」



「あいつの場所は分かっているんだ。あとはあいつを殺すだけの武器が要る。」



「何故、場所が分かったんです?それに場所がわかったのなら、課長に連絡して機動隊を呼んだ方が良いのでは?」



「俺の娘が持っていた携帯のGPS機能を使って、場所を特定できた。”あいつ”がなんで臓器の一部を持って行くのか分からなかったんだが、恐らく”あいつ”らの巣に持ち帰っているんだ。あと忘れたのか?”あいつ”は増えるんだ。不用意に突入したら、”あいつ”は殺しきれない。それに...」



「それに?」



「家族の仇を、俺が取らないでどうするんだ。」


暫く、無言で見つめ合った2人だったが、鹿島が口を開く。


「で、僕は何をすれば?」



「俺が、押収物倉庫に行っている間、時間を稼いで欲しい。あそこには色々な武器が保管してあるからな。目当てのものが手に入ったら、合図を出すから適当に時間を置いて、俺を通報しろ。」



「分かりました。」



 哲也と鹿島は車の置いてある駐車場に、無言で歩く。

2人は署に向かうために、車に乗り込んだ。

哲也は鹿島に一言、「スマン。」と言うと、後は一言も喋らなかった。



署に着くと、哲也は押収物倉庫へまっすぐ行き、鹿島は押収物倉庫に人が来ないか見張っていた。

押収物倉庫に着くと、顔なじみの警官が声を掛けてくる。彼は倉庫の入り口に立ち、倉庫の監視をしていた。


「よお、テツさん!今日はどうしたんだ?」



「ここに置いてある武器が欲しいんだ。」



「はははっ!俺もここにある麻薬が欲しいよ!良いジョークだな!...で、本当の用事は?」



「すまん。」

そう一言だけ言うと、哲也は相手の体にスタンガンを押しつける。

彼はがくがく震えながら、崩れ落ちた。


「テ...ツさ...ん、なん...で...?」

その言葉を最後に、彼は言葉すら吐けなくなる。

哲也は押収物倉庫に入ると、目当てのものを探し始める。



最近は物騒だ。様々なものが押収される。ナイフ、違法改造されたエアガン、拳銃、自動小銃、それから...

「あった。」

手榴弾、ダイナマイト、火炎瓶、そして時限式の爆弾。


目当てものをありったけ鞄に詰め込むと、何食わぬ顔をして倉庫の外に出る。

押収物の持ち出しがすぐにバレないように、失神させた警官を倉庫に隠すのを忘れなかった。


近くで見張りをしていた鹿島に合図を出す。そしてそのまま、署の外に出ると車に乗り込む。


さあ、これから楽しいショーを見せてやる、と”あいつ”の巣の場所を確認しようとしたとき、助手席側の窓ガラスをコンコンとノックする音が聞こえた。

マズい、もう持ち出しがバレたのかと身構えていると、そこに居たのは鹿島だった。鹿島はそれが当たり前のように、助手席に乗り込む。


「お前...何で来た?」



「テツさん、僕の妻も事件に巻き込まれたんですよ?僕にだって報復する権利はあると思うんです。」



「いや、お前の家族は生きているんだ。お前とお前の家族のことを第一に考えろ。俺に付き合うな。」



鹿島は哲也の胸ぐらを掴む。

「テツさん。もし、テツさんが失敗したらどうするんですか?」



「何?」



「もし”あいつ”...鍋島 めぐを野放しにしたら次に狙われるのは、僕の妻かもしれない。それに...」



「それに?」



「テツさんも僕の家族みたいなものじゃないですか...」

鹿島の最後の方の言葉は、嗚咽が混ざっていた。


哲也は「大馬鹿野郎が...」と返すと、車を走らせ始めた。

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