第16話
住宅街に乾いた銃声が3発。
「鹿島、早く行けぇ!」
哲也の拳銃から硝煙が上がっている。鹿島は言われるまでもなく、運転席から走り出していた。
数分前、パトカーに乗ってパトロールをしていた鹿島と哲也の2人は、踏切前に止まった車の中に身を乗り出して襲いかかる”そいつ”に気がついた。急いで無線で応援を呼ぶ。
先日に哲也が見つけた、犯行が行われる可能性が高い地域を、重点的に見て回っていた最中のことであった。
”そいつ”が”黒男”であると見ると、パトカーの窓から身を乗り出した哲也は、哲也は威嚇なしに発砲する。
そして場面は、冒頭に戻る。
哲也が放った弾丸は2発、”そいつ”の足に当たり、1発は車に当たった。
黒い”そいつ”は少しの間だけ体制を崩す。
「こいつが噂の”黒男”か!」
哲也の撃てる弾丸は、残り2発。
足を撃たれた”黒男”は一瞬だけこちらを見た気がしたが、すぐにまた車に乗った佳奈(かな)を襲いに行く。
しかし、その少しの時間を使い、鹿島は襲われている佳奈の元にたどり着いた。
佳奈の居る助手席側のドアを開けると、鹿島は佳奈に「耳をふさげ!」と叫んだ。
鹿島は手に持っていた拳銃を身を乗り出している”黒男”の額に狙いをつけると、弾丸を撃ち込む。
手持ちの全てである5発を撃ち込むと、”黒男”はややのけぞって、動きを止める。
「今のうちだっ!」
鹿島は佳奈のシートベルトを外し、外に連れ出そうと、佳奈の右肩を掴んだ。
鹿島は”黒男”から目線を外してしまった。その瞬間、動きを止めていた”黒男”はまた動きだし、今度は鹿島を襲う。
「チッ!」
左手で振り払うか?いや、”そいつ”は振り払っても腕を這い上がってくるだろう。
そこまで鹿島は考えたか、本人にも分からなかったが、鹿島は迫ってくる”そいつ”の指先に空の拳銃を向ける。
佳奈を右手で車外に引きずりながら、左手でガンスピンをして虫をはたき落とす。
「テツさん!」
佳奈とともの車外に飛び出した鹿島は叫ぶ。
「ああ!」
先ほど、哲也の放った弾丸はガソリンタンクを貫いており、辺りにはガソリン特有の臭いが立ち込める。
哲也は狙い澄まして、2発、車に向かって弾丸を放つ。
弾丸はガソリンに引火し、車は燃え上がる。”黒男”とともに。
”黒男”は少しの間悶えていたかと思うと、2歩ほど歩いて倒れ伏した。
「鹿島!無事か!」
哲也は大声で叫ぶ。
「なんとか大丈夫です~。」
鹿島は、佳奈の肩を抱きながらヨロヨロと歩いてくる。
「終わったな...」
そう言いながら、仲間のパトカーのサイレンの音が近づいて来るのを聞いて、哲也は脱力するのであった。
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