作り置き
花本真一
第1話 作り置き①
「はぁ~疲れた」
サービス残業を終えて帰った時には、十一時を過ぎていた。我が家の光は当然ながら消えていた。
何か残っていれば良いけど。
寝ている妻と子を起こさないために、俺はそっとリビングに入っていた。さて、どうしたものか。そう考えていたら、机の上にメモを見っけた。
「パパへ。お仕事お疲れ様です。今日は僕がパパのためにご飯を作りました。ぜひ、食べてください、か」
今年で十歳になる我が息子。何でも最近料理に嵌っているらしい。子を持つとこんな嬉しいサプライズがあるのだな。たまに、嫌になることもあるけど。
「ふふ、ありがとう。さて、何を作ってくれたのかな」
まぁ、十歳の子供が作ったものだから期待と不安が半々と言う所だ。そんな気持ちを胸に私はキッチンへと入った。
すると、そこにあったのは。
「……これ、ラーメンか?」
どんぶり鉢にあったのは、もやしやチャーシュー、ねぎと麺が入っているラーメンだった。温かい内に食べていれば、美味しいだろう。だけど、すっかり伸びていてスープも干上がり、具もぐじゅぐじゅになっていた。
唖然とする私。そんな傍らでまたメモを見っけた。
「パパへ。すぐに食べられるように作り置きしました。冷たかったら、チンして食べてください、か」
分かっている、息子が自分のためにしてくれたことは。
だけど、一言言わせて貰おう。
息子よ。ラーメンだけは作り置きしてはいけない。
ちなみに味の方は新手のパスタのような感触だった。
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