スナッククエスト ～日帰り？ ノンノン。秒帰りだ！～

第１話 会社でラノベなんか書くな！

「小野。この資料に目を通しておいて」

　どっさりと積まれたA4紙の塊を、押し付けられた。

「あ、はい……課長」

　喜べるわけが無い。

　主任の俺が、タスクをどんだけ抱えてると思ってるんだ。

　しょうがないので、お腹の前に書類を「よっこらしょ」とかかえて、よちよち歩き、フロアの隅っこへ。

　窓際には、≠ヤノン（ノットイコールヤノン）製のファンタジープリンタ、CFP8300が鎮座していた。異世界転送速度、20GBPSの超高速機だった。東大が開発した量子テレポーテーション技術を応用したらしく、とにかく処理が速い。

　A4資料のホチキスを外し、プリンター上部のトレイに、ドン、と置く。

　「スキャン」ボタンを押下。フロントパネルには設定画面が現れた。

　異世界解像度、モノクロ／カラー、出現先などを指定。

　クラウド上に、バーチャルに空間発生させることにした。

　そして、少しかすれ文字になった「スタート」ボタンを押下。

　あとはCFP8300が、A4資料をスキャンし自動解析。資料に書かれた情報に基づいて、異世界を作ってくれる。

　カシャコン

　カシャコン

　A4資料が読み込まれ始める。

　こうして新しい世界が、クラウド上に生まれた。

　――課長が俺に押し付けたA4紙の塊の中に、謎のラノベ原稿が紛れ込んでいた事を俺が知るのは、後の事になる……。