第39話 科学部、ツンデレを考察する!

「ありえない。このメンバーで最初に熱を出すのがお前などという流れは、あってはならない筈だ」

「んなこと言ったって、しょーがないじゃん。誰っすか、昨日『帰りましょう』って言ったのは」


 作者の記憶では金太お前である。


「もう、俺こう見えてもデリケートなんだから勘弁してくださいよ」

「オイラは想定内だったけどー」


 説明するまでもない、金太が熱を出している。だが古生代には冷えピタも熱さまシートもないので、昔ながらの濡れ手拭いで対応している。

 甲斐甲斐しく金太の面倒を見てやる教授だが、行動とは裏腹にかける言葉はあまり優しくない。これが所謂ツンデレというヤツであろうか。


「そうですね、ツンデレです」

「やめろ作者、熱が上がる……」


 二人の意見が食い違うのは今に始まったことではない。……ってどこかでも書いたな。


「ツンデレはラブコメの必須条件とも言うべき属性よ。侮れないわね」

「姐御先輩の俺に対する態度もツンデレっすか?」

「黙れスベスベケブカガニ」

「スベスベなのか毛深いのかはっきりしてくださいよ!」


 スベスベである。


「流石姐御先輩、言われてすぐにツンデレの見本を提示してくださるとは」

「いや、ツンだけだろ今の場合!」


 元気な病人である。


「ツンデレっつーのはアレっすよ、源氏物語で言うところの葵上みたいな感じっすよ」

「は? 源氏物語? 何言いだすのよ急に」

「そういえば金太はガチの文系だったねー」


 そうなのだ、姐御に一目惚れして科学部に入って来ただけなのだ。


「ツンデレと言えば上杉謙信だって結構なもんじゃない? 武田信玄に塩送っちゃったりして。『べ、別に助けてあげるわけじゃないんだからね!』みたいな?」


 それ、なんか違うと思う。


天照大神アマテラスオオミカミだって『べ、別にあんたたちの為に出てあげるわけじゃないんだからね!』だし、天宇受売命アメノウズメノミコトだって『べ、別に天照アマテラスのために踊ってるわけじゃないんだからね!』って……」

「だんだんズレて来たねー」

「ですが、求婚者を片っ端から振り回したかぐや姫はどうなるんですか? かぐや姫こそツンデレですよ」


 かぐや姫、デレてない。


「確かに単なる美人局つつもたせよね。でもそんなこと言ったら天照大神は単なる引きこもりになるわよ」


 剰え日本の総氏神つかまえてヒッキー呼ばわり。


「天照大神が引きこもりなら、天宇受売命はストリートダンサーっすよ!」

「紫式部は腐女子で清少納言は人気ブロガーってとこですね」

「紀貫之はネカマっすかね」

「あー、ネカマネカマ……」


 こいつら酷でぇ……。


「源氏物語を寝食忘れて読み耽った菅原孝標女すがわらのたかすえのむすめこそが真の腐女子と呼ばれるべきだと思うんすけど!」

「腐女子ってBL好きな女性の事じゃないの?」

「源氏物語はBLじゃなかった……ただのイケメン物語だ」

「イケメン物語ならあたしたちの作者だって書いてるわよ」

「なんで俺がイケメンに書いて貰えないんだよ!」

「あたしだって無駄に巨乳扱いよ!」

「オイラなんか小学生扱いだよー!」

「僕なんかゲイですよ!」


 あの……ストーリー戻していいですか? っていうか、金太、熱どうしたんだ?


「原核生物なんかほっときゃ治るわよ」

「姐御先輩が俺にツンツンしてるのは愛情の裏返しっすよね」

「んなこと言ってないわよこのアオバアリガタハネカクシ!」

五月雨さみだれや アオバアリガタ ハネカクシ」

「おー、風流だねー」


 科学部の暴走は作者にも止められそうにない。

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