第14話 科学部、装備を確認する!
「先ず、これが僕のノートと四色ボールペン。シャーペンと黒赤青緑のボールペンがセットになってます。それから、コエラカントゥスを捌いたときのサバイバルナイフですね。刃渡り23cm、裏はギザ刃です。これはダイヤモンドシャープナーがついてますから研ぐこともできます」
教授が説明しながらリュックの中身を出して行く。説明している内容はブッシュクラフターのそれであるが、こんなふうに説明しているとまるで科学者のようである。
「それからこっちは万能ナイフ、小さいけどいろいろついてます。ブレード、マイナスドライバー、やすり、はさみ、缶切り、他にもいろいろ付いてます」
一つずつ開いて見せるのを三人は顔を近づけて覗き込む。そりゃそうだ、万能ナイフなど、6cmそこらの代物である。
「あとはこちら、軍手ですね。火をつける道具がこのファイアスティール。それと……ああこれ、百均ライター」
「なんだよ教授、ライターあんじゃねーか」
金太が呆れ顔で言うが、二号が「いやいや、正解だよー」と割り込む。
「ライターは緊急時にとっておいた方がいいねー。普段の時は教授がファイアスティールで点けられるんだからさ。オイラたちもファイアスティールの練習しといた方がいいねー」
「そうですね。擦るだけですから、コツさえ覚えれば簡単ですよ。それと災害用ローソクがありますが、これも非常時まで取っておきます。普段は魚の脂を絞ったもので灯りを採ろうと考えてます」
「ねえ、どうやってやるの?」
下着に教授のシャツを羽織っただけの格好で姐御が教授に顔を寄せる。これは正直言って下着だけよりも破壊力があるが、教授にはただの風景である。
「貝殻に魚の脂を入れて、そこに芯を入れて火をつける方法ですよ。まあその時になったらまた説明します。あとはラップと、絶縁テープ、綿手拭いが一本、ああ、これがあった、ロンテナー」
リュックの底からいかにもポリエチレン製らしい何かが出てきた。
「これは簡単に言えば折り畳み式防災用ウォータータンクです。10ℓの液体が入ります。これに水を汲んでくれば、ちょうどいい貯水槽代わりになります」
「10ℓってことは10kgってことよね。運んでくるの大変そう」
「俺なら楽勝っすよ」
「流石、元ボディビル部!」
「柔道部っす」
「なんで柔道部がいちいちビルダーみたいなポーズとんのよ」
解説しよう。
金太が今決めているのはモストマスキュラーというボディビルに於けるポーズの一つである。やや前傾姿勢気味にし、胸元に何かを抱え込むような形で上腕に力を入れることにより、首から肩にかけての僧帽筋をガッツリ見せるポーズである。以上!
「でも、なんか『美女と野獣』の野獣みたいね」
姐御よ、みんな思っても黙っていたんだ、言語化するな。と二号が思ったところで教授がサラリと論点を原点に回帰させる。
「あとはこれが最後ですね。ネオジム磁石。ここで使い道があるかどうかわかりませんが」
「その他にー、アルミの金盥とー、鉄板とー、姐御の日傘とー……あ、そういえばホットケーキの種入れてたボウルがあったよねー」
「ああ、あれなら真水を蒸留するのに使っていたボウルがそれですよ。あれはホーロー製なのでいざとなれば火にかけられます」
「おー、鍋にもなるってことだねー」
「ホーロー製なら磁石もつくわね」
「あと教授の時計は方位磁針がついてるって言ったよねー?」
「はい、でもここではあまり必要なさそうですね」
「まー、一応確認ねー」
そこまで言って二号がフラッと立ち上がり、何かを持ってきた。
「オイラの方も平籠4つほど作ったよー。50cm角サイズだけど。あとは縁の仕上げだけ」
驚くべきことに、二号は昨日と今日だけで50cmサイズの平籠を4つも編んでいた。もうこのままこれを仕事にして、手作りサイトで一儲けしてもいいくらいだ。
「どーやってそれ50cmって測ったんすか?」
「あ、それ教えといた方がいいねー。オイラのベルト、メジャーになってんの。通販で見つけたもんでさー思わず買っちゃったんだよねー。ほらほら、裏側に目盛があるんだよー、面白いでしょー?」
まるで子供がおもちゃをゲットしたときのような喜び方ではあるが、彼の前で『子供』というキーワードはタブーなのである。
「先輩! それは僕の腕時計の方位磁針より使えますよ! これからしょっちゅう二号先輩のベルトを抜くことになりそうです!」
「BLフラグこっちにも立ったらしいわね……」
「あちこち立たすなよ」
「役に立てるんですよ」
「元気でいいねー」
「何がですか」
「ナニがだな」
もう一度言おう、二号と教授はそれぞれ学年トップの成績である。本当に大丈夫なのか、科学部!
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