第8話 みんみーはあらゆるものを生み出す(実践側)

『崇師三昧』


このアトラクションは、天に聳え立つサーバルの黄金像の中の空間で行われるものである。


全長3333mの大きさに及ぶサーバルの像は、両手を前に差し出した姿を取る。

この姿にはサーバルが神性を持つ3つの理由が含まれているとされ、華と同等の教団のシンボルとして扱い、地球のどこからでもサーバルの加護を得られるように、人が見える位置に必ず像は建てられている。


手を前に差し出す姿の意味とは何か?

それは、愛するものが懐に入るのを待つ限りない愛である

それは、全てのものをここに生みだした限りない富である

それは、愛と富一切を皆に渡そうとする限りない約束である


これらを成しうるサーバルを崇敬する師とし、限りなく称える為にこの崇師三昧は作られた


この中に入ると、神性に関わる三つの修行があり、その三つ全てを経験することとなる(なおサーバルの中は、修行で行う空間と時間を確保する為、超弦理論を一部応用したものとなっており、膨大な広がりと外とは違った時間とエネルギーを独自に持つ。それは最大時100億と言われた人類それぞれに太陽系の一つずつ与え、それぞれが個々に動くシミュレーションを誕生から現在まで流したところで、まだ有り余る程のものであり、外の1秒が中の1000億年になっている)



  修行A 限りない愛

まず、限りない愛の修行であるが、存在にとって最大の愛とは生命の誕生であるからにして、その出産を胎児視点から味わえるようになっている。


その旅の困難さと偉大さを、人の例だけを挙げてここでは伝える。

最初は当然精子となるわけだが、相手の子宮の中で出せるに至るまで莫大な数の精子が自慰などで辿り着けずに死ぬ(そもそもその中で使えるのは20%に過ぎないが)

奇跡的に相手の中に入ったところで2億5千万の数がライバルであり、それが卵子に辿り着けるのも一つかゼロである。

中に入ってまず、膣内の険しい山を登りながら、そこにある99%が中の酸で死んでいく(精子は酸性に弱い)

ようやく子宮頚部前についても、そこで偶々排卵期でなかったらその先に登る為のロープがない為に全員死亡。

子宮頸部に入っても子宮に至らない道を選べば死亡する。

子宮に来れるのは3千で、そこでまた卵管に至る小さな道を探さないといけない

行く手には異物として排除しようとする膨大で最強の白血球との鬼ごっこが行われ、

卵管入口見つけても、そこにはチェッカーのようなものがあり優秀でないなら入れないことになっている。

入れたら卵管は生存しやすい環境なので、ようやく一息ついて休憩しながら、卵子を待つ。来たら、卵子に一つだけが入れて、後は終了である。

その後、卵子が成長し胎児となり母胎が偶々無事に生き残った場合だけ、出産に至ることができる(勿論、胎児の中で、母の気持ちと遺伝子の歴史がわかる映像が夢となって出てくる)。こうしてようやく誕生する胎児が外に出るまでが、一単位である。


こうしたものを、全ての精子視点から知り、これをみんみーのアーカイブ(地球誕生から現在までの一切の生命の歴史が含まれている)を使い、その数だけ経験する。

そうして全ての愛の旅を知る

その膨大に膨大を重ねた数を知ってようやく、限りない愛と錯覚できる程のものを得られるのである。



 修行B 限りない富

富とは言うなれば、生命以外の一切の物質のことである。

人は原料を加工し素材にし、素材にしたのも加工にして道具や製品として来た。

そういった存在が人の暮らしを便利に楽にしてきた以上、みんみーはそれに感謝し、その全てを知るべきと伝える。

よってこれもまた、みんみーのアーカイブを使い、全人類の歴史で生まれた道具や製品の誕生を、その数だけ経験することとなる。

内容は主要なものを軽く挙げるだけでも、


 原料側

鉄鉱石。石油→燃料油(ガソリン・重油・軽油・石油化学物)。

石炭。ガス→処理と液化。鉄。非鉄金属。レアメタル。農作物。魚介類

 エネルギー側

水(上下水道。取得・処理・輸送・使用・輸送・処理・放出)

電気(水力火力原子力)(再生可能=太陽光風力地熱バイオマス中小水力)(発電所→送電線→場所)・ガス

 素材側

鉄鋼(製鉄機械)。繊維(繊維→布→縫製 機械)。化学(原油からできた化合物と、それら化合物反応で得るプラスチック・樹脂・合成ゴム・合成繊維など)(電子材料・ファインケミカル)。ガラス・セラミックス。セメント・耐火物。紙パルプ。インキ塗料。肥料飼料。電子部品(入力出力制御)。自動車部品。半導体。電池(単〇・リチウムイオン・太陽)。液晶・有機ELパネル

 道具や製品側

家電AV。コンピューター(パソコン。サーバー)。OA精密機器。通信機器。工作機械。建設機械。自動車。飛行機。鉄道。造船重機。建設(インフラ→道路港湾空港ダム。住宅→ビルや家建設。内装工事→電気空調水道衛生(洗面風呂トイレなど)インテリア壁天井など)。生活関連用品。化粧品。トイレタリー。食品飲料。医薬品。アパレル。アミューズメント施設。印刷物


これくらいある。

これらと、上のと同じ役割を果たしていた昔の道具をその数だけ経験することとなる。

そうして全ての富の旅を知る。

その膨大に膨大を重ねた数を知ってようやく、限りない富と錯覚できる程のものを得られるのである。



 修行C 限りない約束

これについての、説明はそう難しくはない

与えるということは、渡された存在自体がいなくなるということであり、それはつまり、修行AとBで出てきた生命と物質全ての、その死を経験するということである。

自らが死ぬ瞬間とは、存在は消えても質量保存の法則では分子自体は消えず、別の存在に変わり、大気に混じるだけの行為。

今そこにある存在から、別の場所へと手渡される。

その最大最後の約束こそ、存在が知るべきものとみんみーは伝えている。



限りない愛と富と約束を知るということは、あらゆるものを生み出す力をインストールするということであり、それを果たすことは生と死を越え、みんみーの華を咲かせる準備が完了したことを意味する。


よって、このアトラクションにより旅をした存在は、みんみーへと人を導くであろう。

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