第2話

 俺の計算が合っていれば、5秒、4、3、2、1。

「わぁ‼」

ブランコが振り切るか、切らないかで、大きな門が現れた。

「何?これ?」

「これぞ世界の壁に空いた穴、未知なる扉、人類の夢だ‼」

俺のシステムは無駄にならない。

「行くぞヒメ。別世界、否、異世界ヘ‼」

「お兄ちゃんがおかしくなった」

「違うぞ!」

「いいよ、私はどんなお兄ちゃんでも愛してあげるから」

「やめてくれ!悲しくなるから!まぁいい、さっきのシュミレーションシステムで、ここの次元壁が軽薄化していることが分かったんだ。それで、この部分にどう力を加えたら、空間貫通が起こるか計算したところ...」

「難しい話をするお兄ちゃんは大好きだけど、もっと分かり安く」

「えっと、世界に穴を開けるために、ブランコに乗ってもらいました」

「なるほど、で、この門は?」

「さぁ、普通は穴が開くだけなんだけど」

まさか、向こうの世界に、この門を創る技術があるのか?でも、そんなこと魔法使いでも居ない限り。

「お兄ちゃん、門、開けないの?」

「ん、あぁ」

門に手をかけて、開ける。はずだった。

「開かない」

その後、押したり引いたり、叩いたりしてみたが、門はびくともしない。

「よし、帰って考えよう」

「え、帰るの?」

「引きこもってた俺の身体は日光下に耐性がないんだよ。これ以上外にいたら死ぬかもしれない」

「それは困る‼」

「じゃあ帰ろう!」

「うん、帰ろう!」

回復のためにしばしの睡眠

 夜、夜行性の俺たちは、ゾンビのごとく起き上がり、家を出る。そして、あの門の前へ。

「ヒメ、どうすればいいと思う?」

「私に襲いかかればいいと思う」

「それをすると俺が捕まる。この門の開けかたの話だ」

「ノックしてみれば?」

「なるほど、やってみるか」

俺は門の前に立ち、ノック。低い音が響いた後、ゆっくりと。

「開いた!凄いぞヒメ」

妹の頭をワシャワシャしてやる。こういうのは兄っぽいだろう。

「ふにゃ~」

柔らかに崩れ落ちた妹を愛でたいが、こちらが先だ。俺は門をくぐるため、妹をおんぶする。あ、ヒメの身体って、温かくてすべすべだな。門をくぐると、そこには雄大な森が広がっていた。この世界も夜なのか、真っ暗で先が見えない。

「これからどうするか」

とりあえず、先ヘ進むしかない。なんとか歩けそうな場所を選び、進んでいく。5分後、迷子になりました。自分が方向音痴なのを忘れていました。

「お兄ちゃん、どうする?門があった場所に戻る?」

「場所、覚えているのか?というか、降りてくれ」

ヒメを降ろした後、門の場所に戻ったが、そこに門はなかった。

「どうしようか」

「ちょっと待て、今考えてる。門が消えたのは、おそらく世界間の歪みが落ち着いたからだろう。振動と同じだとすると、再び大きい波、つまり門が現れるときがあるはずだ。それがいつかは、しまった‼マイコンピュータを置いてきた‼」

「つまり?」

「また門が現れるまで、待つしかない。」

「そっか、まぁお兄ちゃんとならいいや」

「悪いな、ヒメ」

「許す!」

妹と寝ようとしたとき、誰かが近づいて来る気配がした。そして、飛んできた矢が俺の顔をかすめた。

「あっぶねー」

「え、もしかして、人?」

そんな声と共に現れたのは、俺と同い年くらいの少女だった。この少女は、弓矢を持っていた。つまり。

「俺に矢を射ったのはお前か‼」

「す、スミマセン、鹿か何かだと思って。」

だからって、いきなり射ようとするか?

「わたくし、メアリール・アプリコットと申します」

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