第100話 逃げ逃げばぶー。

 この世界には、大きい太陽と小さい太陽。土を司る茶色の月。水を司る青の月。風を司る緑の月がある。

 その大きい太陽と小さい太陽の間に見たことのない黒い星があり、段々と大きくなる。


 危険でちゅ!危険でちゅ!


 ひゅ――――――。ドスーン!!!


 城の城壁の前に、城壁と同じ高さのミイラが落ちてきた。


 「ヴガガガァァァァッァアッァァ!」


 咆哮とともに、城の結界をボコスカと殴り壊し、城壁も腕のひと払いで崩れ去る。

 巨大ミイラが城壁の中に踏み込むと足元に魔方陣が輝いたが、たちどころに消えてしまう。

 兵士が拡声魔方陣で叫ぶ。

 「「魔族の弱体化失敗!耐性あり!耐性あり!」」


 その様子を城の塔の屋根から見ていると、巨大ミイラと目が合ってしまう。

 巨大ミイラの汚らしい口が、更に汚らしい笑いを浮かべる。

 崩れた城壁の岩を持ち上げると…。

 

 危険でちゅ!危険でちゅ!


 こちらに向けて、ぶん投げてきた!


 ≪ウィンド≫


 風魔法の威力が想像以上で、大きく上空に回避する。

 岩は、塔をかすめて、果樹園の方まで飛んでいく。

 空中でバランスを取りながら、≪ウィンド≫で飛翔する。


 「ヴガガガァァァァッァアッァァ!」


 怒りの視線をぶつけられる。

 崩れた城壁の岩を持ち上げ、ぶん投げる!


 軽やかに飛翔して回避する。

 『なんで、狙うんでちゅか!』

 『ダンジョンマスター。潰せると思ってた虫がよけたので、ムキになっているのだと思われます。』

 『だったら、届かないくらい高くまで飛ぶでちゅ!』


 ビュ!ビュ――ン!!


 かなりの上空から地上を見ると、巨大ミイラは背中からバリバリバリっと真っ黒な蝙蝠の羽を生やして、羽ばたかせ始める。

 『ダンジョンマスター。ダンジョンへの退避をお勧めします。ダンジョン内は、魔族といえど侵入は困難です。』

 『わかったでちゅ!でも、空飛ぶなんて卑怯な奴でちゅ!』

 『空から現れましたよね?』


 そうでちた!

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