ビームが狙うもの

主砲しゅほうを使イマス」

 宇宙うちゅうかぶ軍艦ぐんかん下部かぶ変形へんけいし、巨大きょだい砲身ほうしん姿すがたを見せた。

 2つの粒子加速器りゅうしかそくき別々べつべつ加速かそくされていく、原子核げんしかく電子でんし

 加速かそくされているのは一対いっついだけではない。すべて合わせれば、惑星わくせい貫通かんつうするほどの驚異的きょういてき威力いりょくがある。

 ムネンの中枢ちゅうすうであるクサリをねらい、多数たすう浮島級うきしまきゅうリカイネンがかこんでいる。しかし、まだとおい。

 最短さいたんで、あと1万天文単位まんてんもんたんい

発射はっしゃ!」

 ミックスされた原子核げんしかく電子でんしは、亜光速あこうそくはなたれた。

 その名は中性粒子ちゅうせいりゅうしビーム。あか防衛装置ぼうえいそうちれを一瞬いっしゅんけていく。

 途中とちゅうで、いくつかのフォトンシールドが展開てんかいされる。

 クサリに到達とうたつせず、ビームは減衰げんすいしてえた。

「かわいい顔して、やりたい放題ほうだいだな、アルヴァタ」

 うす黄色きいろ巨大きょだいロボットから、通信つうしんが送られた。Dアクセルを展開中てんかいちゅうとがった見た目。

 通常つうじょう通信つうしんではない。

 あま川銀河奪還作戦がわぎんがだっかんさくせん参加さんかしている者は、全員ぜんいんがツインタイム使い。かり身体からだになっている。

 時間じかんめて、本来ほんらい身体からだ並列化へいれつかするシステム。これにより、時空並列通信じくうへいれつつうしんで、時間じかん空間くうかん関係かんけいなく会話かいわができる。

「きちんと、計算けいさんしてイマス。勘違かんちがいしないでクダサイ」

「ああ。そういえば、ケイ素生物そせいぶつには冗談じょうだんつうじないんだったな。めただけだぜ」

 巨大きょだいロボットである人型ひとがたのDを操縦そうじゅうするグレンは、笑っていた。

 コックピットは球形きゅうけい空洞くうどう重力制御じゅうりょくせいぎょにより、すこしたいらな足元に両足で立つ。全面ぜんめんディスプレイにうつてきは、視認しにんしやすいように彩色さいしょくされていた。

 周りの景色けしきは、光にちている。銀河中心付近ぎんがちゅうしんふきん

 灰色はいいろ迷彩服姿めいさいふくすがたのグレンが、拳法けんぽうかまえをとった。両手に持つのは金属きんぞくぼう。スイッチを同時どうじに押す。

「グラビティィイィバスタアァァァア!」

 うで装甲そうこう変形へんけいした。

 重力制御装置じゅうりょくせいぎょそうち効果範囲こうかはんいが変わる。うでの先500メートル、はば10メートルの範囲はんいが、超重力ちょうじゅうりょくで押しつぶされた。

 うでって、前方のあか防衛装置ぼうえいそうちれをはらう。沈黙ちんもくする、アカダルマと呼称こしょうされる球体きゅうたい全長ぜんちょう20メートル。

宇宙うちゅうってくんだな。ずっと重力制御じゅうりょくせいぎょだから、忘れてた」

 雄々おおしい身体からだにも、くろ短髪たんぱつにも、重力じゅうりょくがかかっていない。かり身体からだはロボット。重力制御装置じゅうりょくせいぎょそうちがある。グレンは両足で立った。

「グレン・チカマさんのほうが、やりたい放題ほうだいデスネ」

 艦橋かんきょう一番高いちばんたかせきしろ帽子姿ぼうしすがたの男の子は、微笑びしょうしていた。十歳くらいに見える。

 かべのディスプレイに表示ひょうじされる座標ざひょう。クサリを目指めざして進む。

 うす黄色きいろ巨人きょじんがビームを使った。えていく、宇宙うちゅうかぶあか球体きゅうたい

 内燃機関ないねんきかんたず、エネルギーの伝播でんぱで動くアカダルマ。ブラックホールエンジンを破壊はかいしたことで、フォトン武装ぶそう出力しゅつりょくちている。Dのパイロットにとっては、もはや脅威きょういではなくなっていた。

 のこる、エネルギーを伝播でんぱしている存在そんざい破壊はかいねらう。緑色みどりいろ防衛装置ぼうえいそうち

 配備はいびされている場所ばしょは、クサリ付近ふきん

 じょじょにせばまるクサリ包囲網ほういもう

 7のDと、多数たすう銀色ぎんいろふね。そして、自律機動じりつきどうで動くものが多い巨大きょだいロボット、ハガネ。

 アカダルマを蹴散けちらしながらすすつづける。


 いっぽう、そのころ。

 ムネンの中枢ちゅうすう、クサリ。グレンたちの地球ちきゅうと同じ大きさ。

 銀色ぎんいろ部屋へやのディスプレイに、非常事態ひじょうじたいという文字もじ表示ひょうじされていた。

 だれも見る者はいない。

 生き物の気配けはいかんじられない。見渡みわたかぎり、金属きんぞくばかり。

 部屋へやの中に、ツインタイムと同じような装置そうちがあった。おおきなちがいがある。カプセルは1つ。

 上部はくろくなっていて、中を見ることができない。


 クサリまで最短さいたんで、あと100天文単位てんもんたんい

 超高速ちょうこうそくで進みながら戦闘せんとうをおこなっている。光速こうそく近付ちかづくほど、物体ぶったい時間じかんながれがおそくなる。たたかっていない者にとっては、すでに1ねんぎていた。

 緑色みどりいろ防衛装置ぼうえいそうち、ミドリタンスの射程範囲しゃていはんい近付ちかづいてきた。

 サイコロのような形。荷電粒子砲かでんりゅうしほうそなえている。ウェーブリアクターの最大出力さいだいしゅつりょくは100ギガクーロン・ボルト。

 発射はっしゃには、最低さいてい10ギガクーロン・ボルトが必要ひつよう

 ただし、おも元素げんそ長距離飛ちょうきょりとばそうとすれば、さらにエネルギーが必要ひつようになる。飛距離ひきょり安定あんてい重視じゅうしした場合ばあい発射はっしゃまで時間じかんがかかる。

 ちかくにあるミドリタンスの位置いちは、クサリから90天文単位てんもんたんい

「1天文単位離てんもんたんいれていれば、ビーム到達とうたつまで、8分以上ぷんいじょうかかります」

 コックピット内。小豆色あずきいろのスーツに、同色どうしょくのネクタイ姿すがたのバーティバ。ディスプレイには、太陽系たいようけい姿すがたうつっていた。視覚的しかくてきに分かりやすく表示ひょうじされた、クサリ周辺しゅうへん映像えいぞう

 巨大きょだいロボットを操縦そうじゅうしている。ばしたフォトンブレードで、アカダルマをつらぬいた。

 かえりつつはなったりが、ひかりまとう。背後はいごあか球体きゅうたい爆発ばくはつした。

 しろいDは、とがった見た目。Dエフェクトを展開中てんかいちゅう

 素早すばやい動きのときには、自動じどうでフォトンコーティングが発生はっせい格闘攻撃かくとうこうげき可能かのうとする、攻防一体こうぼういったい武装ぶそう

「オレたちはいいけど、ふねまもりながらだと、きついぜ。どうする?」

 グレンは、磁界じかいによってめたプラズマのかたまりるっていた。

 アカダルマが爆発ばくはつしていく。

 七人のDパイロットは、別々べつべつふねまもりながらたたかっている。ウリセスとディエゴをのぞいて。

本命ほんめいさとられないように、多くのふねかこんでいます。とされるわけには、いきません」

おれとディエゴで、ミドリタンスをやれるかためす。どうだ?」

ちか場所ばしょにいるからな。ウリセス、やるか。ぼくがねらわれないことをいのる」

 ブラックホール付近ふきん孤立こりつした二人は、ふねうしなっている。

 強襲用きょうしゅうようなので、轟沈ごうちん想定内そうていない。そのため、アカダルマをはらいながら、一気いっきにクサリへと接近せっきんしていた。

無理むりしないでよ。下手へたすると、一人でたおさなければならない数が、えてしまうわ」

「ファリアの言うとおりだな。確実かくじつに、やれ」

 戦艦せんかん連携れんけいしてたたかうアイザックは、それほど進んでいなかった。

 赤色あかいろ基調きちょうとしたDナインを操縦そうじゅうするウリセス。

 黄色きいろ基調きちょうとしたDトゥエンティーをあやつるのは、ディエゴ。

 ビームをそなえるミドリタンスに、1天文単位内てんもんたんいないまで到達とうたつした。

「ビームが1ぷん到達とうたつするところまでは、問題もんだいなく近付ちかづけそうじゃないかい?」

 チャンドラが意見いけんべた。

 二人はさらに接近せっきん。あと5000まんキロメートル。

「びびって、フォトンウォールをかまえてるけど、たれないぜ」

用心ようじんするにしたことはない。慎重しんちょうにやろう」

 あと900まんキロメートル。

「とりあえず、ぶっぱなしとくか」

「そうだな。ちかくのアカダルマも、あらかた片付かたづけたし」

 2つの粒子加速器りゅうしかそくきで、原子核げんしかく電子でんし別々べつべつ加速かそく発射はっしゃまで時間じかんがかかる。

 ミックスして、中性粒子ちゅうせいりゅうしビームほう発射はっしゃするウリセス。あか機体きたい

 ディエゴもつづいた。黄色きいろ機体きたい

 遠距離えんきょりのため、回避かいひされるビーム。

 ミドリタンスからビームがはなたれた。余裕よゆうをもって回避かいひ。にらみ合いがつづく。


遠距離えんきょりで当てるのは、人間には無理むりそうだな」

 するどい見た目のDで、アカダルマの粉砕ふんさいつづけるグレン。うす黄色きいろ巨人きょじんひかりまとっている。

以前いぜんのデータとくらべて、ミドリタンスの機動力きどうりょくが上がっているようです」

 同じく、するどい見た目のDファイブでつづけるバーティバ。白色いろじろ巨人きょじんひかりまとっている。

接近せっきんするには、ミドリタンスが邪魔じゃまになるなあ」

 チャンドラが言った。機体きたいは、水色みずいろ基調きちょうとしたDエイティーン。

 フォトンカタナをちながら、フォトンキャノンもっていた。

 超高速ちょうこうそくでの航行こうこう可能かのう銀色ぎんいろふね。リカイネン。しかし、質量しつりょうが大きいため、直進以外ちょくしんいがい機敏きびんな動きは困難こんなん膨大ぼうだいなエネルギーが必要ひつようになる。

 近距離きんきょりでビームに対応たいおうすることはむずかしい。

「クサリの時間じかんめて、ムネンを機能停止きのうていしさせる完璧かんぺき作戦さくせんが! 台無だいなしじゃない」

 桜色さくらいろ基調きちょうとしたDエイト。フォトンキャノンでアカダルマをほうむっていた。

「よし。ディエゴ。った瞬間しゅんかんに、一気いっき接近せっきんしてたたくぞ」

無茶むちゃだな、ウリセス。でも、それしかない」

 2は、分厚ぶあついフォトンウォールを展開てんかい不規則ふきそくな動きで接近せっきんする。

 ねらうはミドリタンス。全長ぜんちょう30メートル。荷電粒子砲かでんりゅうしほうそなえる。

 ビームがたれた。秒速びょうそく29まんキロメートル。

「ここだな!」

たれませんように!」

 てきのビームが外れた。一気いっき接近せっきんした2は、フォトンブレードをるう。

 相手あいては、荷電粒子砲かでんりゅうしほうでの遠距離射撃えんきょりしゃげき特化とっかした装置そうち防御力ぼうぎょりょくひくい。

 ミドリタンスを撃破げきはした。

 そして、遠方えんぽうべつのミドリタンスから、一斉いっせいにビームがんできた。

「おい。応答おうとうしろ。やられたんじゃないだろうな?」

 緑色みどりいろ基調きちょうとした、Dトゥエンティーフォーにるアイザック。ふね見事みごと連携れんけいを見せる。アカダルマを次々つぎつぎ撃墜げきつい。しかし、あゆみはおくれていた。

わるいな。まだ、やられてないぜ」

「同じく。だがこれは、ふねが前に出られない以上いじょう近付ちかづいてたおすしかないな」

 クサリからの距離きょりとおいため、ミドリタンス同士どうし距離きょりはなれている。

 同時どうじねらわれても、遠距離えんきょりのため対処可能たいしょかのう

 距離きょりとおいと、機体きたい自動防御じどうぼうぎょシステムが作動さどうする。安全あんぜんなのはてきも同じ。たおすのは困難こんなん。かといって、距離きょりちかいと、シールド展開前てんかいまえに当たってしまう。

 ビームをふせげるほどのエネルギーを、ずっと消費しょうひつづけることはできない。

 確実かくじつたおすための方法ほうほうは、近接戦闘きんせつせんとう

 パイロットたちは、わるたたかいをいられた。

「もっとちかづいて、ミドリタンスの間隔かんかくせまくなったら、ずっと動き回ることになりそうだわ」

「あっちが連携れんけいなら、こっちも連携れんけいだ。ファリア」

 うしろからハガネがやってきた。金属光沢きんぞくこうたくのあるくろいロボット。ケイ素生物そせいぶつ操縦そうじゅうしているものもある。

「来ました。ヘルジョイテラです。まもります。ふねを」

 アイザックが前に進む。広範囲こうはんいのアカダルマが爆発ばくはつしていく。

ふねまかせて、ワタシたちがミドリタンスをたおす。このさくがよさそうですね」

全部倒ぜんぶたおしてたら、何年経なんねんたつんだ? まあ、いまさら、だな」

紅蓮ぐれんさん。ともたたかいましょう。このたたかいを、すこしでも早くわらせるために」

「よし! 合流ごうりゅうして、一気いっきにミドリタンスを蹴散けちらすぞ!」


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