主従500文字短編集

砂の さと葉

「あ」…朝日

「あ」…朝日


無色な暗がりな夜空が朝日を帯びると、

生命を負った薄紅の微笑みを浮かべる。


「ねぇ、素敵でしょう?」

「お身体に障りますよ」


「いいわよ、髪でも胸でも」


「さわる違いです、

安売り止めろ下さい」


病弱で華やかなお嬢様の日課。

朝早くに起きて、淡紅の空を見る。

何も知らなかった頃は、身体を労わって欲しいと思っていた。


成程、この風景には彼女の望む生命の美しさがある。この風景は、彼女に似ていた。

桃と言うには華がなく、桜と言うには憂いを隠し切っている幼げな紅。

それが一瞬にして、この世界に広がっていく様子。

そして、すぐにその淡紅が、薄い青空に戻っていく様子。


彼女は眺め続ける


あの淡い光は、少し顔を出すだけで、この世界全てを暖かくする


けれど、その生命の色は短命だ


「花は、短くても、永遠。

私の心に、この空を刻みたいの」


「刻まずとも空を長く見れる様に

なればいいではありませんか」


「その為に空が見れないのよ?」


「誘導尋問のような事は

やめてくださいませんか」


「貴方が困るならやめない」

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