第2章 白い洋館(6)

『ガラルータ国の王女は城の塔に何日も閉じ込められていた。塔には灯りが一つもなく、彼女は今が朝なのか、夜なのか』

そこで文章は終わっていた。牧は目を丸くしながら、一方で背筋に冷や汗のようなものを感じていた。

「王女が塔に閉じ込められているというのは、このことなのね」

机の側に転がっている鉛筆を見つめながら牧は、じっと考えた。


そんな馬鹿なことなんてあるだろうか。そう思いつつも、文字が浮かんでくる紙きれや、本に書かれている奇妙な一致を考えると、どうみてもそうだろうと思わざるを得なかった。彼女はよくよく考えた末、一つの結論に達した。


ガラルータ国は物語の中で実在する国。王女もまた、物語の中での登場人物。その物語を書いていた人は何らかの事情で今この家にはいない。王女を塔から救い出すには、物語を書き進めるしかない。今ここで物語を書けるのは私だけだ。


牧は書きかけの本を手に取ると、その真っ白なページをまじまじと見つめた。私に書けるだろうか、物語が。

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