世界五秒前仮説
――――世界が終わる五秒前。
最期のメーデーは届きましたか。
――――貴女が消える五秒前。
私の右手は届きましたか。
呼吸が崩れてゆくのです。ガラス質の、二つの目が。
爛れた肺から漏れた溜息はペトリコールの薫る重水と雑ざり合って、溶けた魚は新たな客人を快く迎え入れましょう。飛行艇の上に眠るダヴィンチは、墜落の最中にも決して手を休めなかったと聞きます。往々にして、遭難者は、結局自らを信じきれないものです。
貴女は優しい方ですから、きっと白い曼珠沙華が似合うことでしょう。
私は、或いは、東方の光を拝む資格など無いのかもしれません。
……だから、もうお別れです。
――――世界が終わった五秒前。
最期のメーデーが届かぬものと知っていても。
――――貴女が消えた五秒前。
この手を伸ばしてはいけませんか。
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