期待

 降り頻る雨は、もう何日続いているだろうか。珍しい天気雨に始めこそ喜んだものだが、こうも長く降られると流石に嫌気が差す。

 ボロ傘の隙間から侵入する生温い水が、髪を伝って口に入り、私を内から腐敗させる。

 青空を舞う滴は輝いているのに、髪の先に垂れ下がる滴は透明なのに、いや、確かにそれらは輝いていて、透明で美しく、そう信じられている。だからこそ腐敗は止めを知らず、崇められる。

 虹を探せと誰かが言う。私は首を振り、左手の宝石だけを固く握る。俯いたまま、レインコートは溶けてゆく。

 爛れた掌で傘は持てない。宝石は守れない。笑う事も出来ず、ただ息苦しい。

 慟哭は夏の雨と蛙鳴蝉噪に消されて、首吊り死体が流れてゆく。

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