第10日 記憶
記憶とは脳が管理する、精神的なタイムスリップだ。記憶の中ではみな、いつもどんな時にでも時を遡ることができる。記憶とは曖昧なものだ。確実に覚えていると思っても、それがそもそも思い込みであって、その記憶が正しいとは限らない。過去への精神的回帰は自らの都合がいいように戻ることができる。
記憶には2種類あると思っている。1つは「そういえば確かにそんなことがあったね、まぁもういいんだけど」というただの記憶としてあつかわれること。もう1つは「そういうことはあったね、すごく懐かしいや」という懐旧の情に浸れるものだ。懐かしさの記憶には香りが存在すると個人的に私は思っている。何事にも言い例えることのできない至上の香りだ。私はこの時の脳髄に漂うような香りがとても大好きだ。そしてその香りがある記憶は全て感動に満ち溢れており、さらにはその記憶と同じような状況や場所に行かなければ、引き起こされることはない。毎日でも体感していたい至福の香りが、毎日堪能することができないおかげで、私はときどき味わうことのできるあの甘美な香りに没頭できるのだろう。
記憶というのはタイムスリップだ。しかし、どんな記憶でもそれができるというわけではない。限られた記憶しかできない芸当であるがゆえに、特別感が沸き、またその記憶の中へ帰ろうと行動することができるのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます