第4話 ハロー異世界
緑が生い茂る草原、そんな平凡な場所に一本の光の筋が突き刺さる。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⋯⋯⋯⋯。」
その中心には中学生ほどの見た目の少年が大の字になって寝転んでいた。
「ぁぁぁ⋯⋯⋯⋯マジか!!マジですか!!まさか本気でこのまま飛ばしてくるとは!!非常識極まりないですよあの神様!!て言うか最後絶対飽きてたでしょ!!適当だったでしょ!!しっかり仕事しろ!!暇神っ!!」
頭を抱えながら直前まで共にいた者に文句を言い放つ。
少年は青空を視界に収めるとようやく自らの状況を把握する。
「⋯⋯ぜぇ⋯⋯ぜぇ⋯⋯とりあえず身長の事は置いておきましょう。」
一通り文句を言い終えると冷静になり周りを観察し始める。
「⋯⋯⋯普通の草原の様ですね。」
遠巻きに見ると大人しそうなモンスターの姿もある。
しばらく歩いたところに馬車の車輪の跡が残る道に出た。
「道なりに行けばどこかの街に辿り着くでしょうか⋯⋯?」
「そういえば⋯⋯。」
コウタは神様に言われたことを思い出す。
(ステータスオープン!!)
心の中で唱えるとそれに呼応する様に半透明なモニターのようなものが飛び出す。
「なんでこんなとこでハイテクなんですか⋯⋯。」
そんな言葉を漏らしつつ、目の前に現れたモニターに目を移す。
「職業、村人⋯レベル1⋯⋯スキル⋯⋯名前コウタ・キド⋯⋯。」
正直コウタはそれ以外にはさして興味がなかった。
そもそもステータスなど比べる対象がいなくてはどれくらい高いのかもわからないものだからだ。
だからこそ彼は大半を無視し所持スキルのページに移った。
このページは本来使えるスキルがズラリと並ぶ場所だがlv1の彼の場合はほとんどが空白であった。
次にスキル習得のページに移った。
スキル習得ページには現在習得可能なスキルが並べられていたがほとんどが筋力上昇などの地味なものばかりだった。
(やっぱり魔法やスキルは伝授とか晶石だかが必要になるのか。)
(とりあえず習得してみるか。)
最初から五十ほどポイントがあるのは神様からのサービスのおかげなのだろうか。
その中から今すぐ使えそうなものを選び習得する。
〝脚力上昇lv1〟脚力を上げる。
〝加速lv1〟魔法の弾速や走るスピードなどを一時的に上げる。
二つのスキルを習得した後に再び所持スキルのページに戻ると〝加速〟はアクティブ、〝脚力上昇〟はパッシブと書かれた欄に表記されていた。
「⋯⋯とりあえず走ってみますか。」
意味が分からなかったのでとりあえず実験することにした。
そう言うと道なりに走りだす。
たったったっと一定のスピードに乗り始めると心の中で呟くように
(脚力上昇!!)
と唱えるが何も変化がない。口頭で唱えてもやはり変化がない。
「ん?⋯⋯発動しない?」
次に走りながら〝加速〟のスキルを唱える。
「加速!!⋯⋯ってうわぁぁぁっぶへっ!」
急な加速に驚きそしてコケた。
「いっつぁ、は、鼻が。」
強打した鼻を押さえ悶絶する。
(でも、なんとなく分かったぞ。)
パッシブは常に発動するタイプ
アクティブは任意で発動するタイプ
パッシブはスキルポイントを支払うことでレベルが上がり、アクティブは恐らく使い続ける事でレベルが上がる。
いろいろ複雑だがここだけ抑えればとりあえずなんとかなる。
⋯⋯最後に今まであえて触れて来なかった〝オリジナルスキル〟のページに移る。
正直コウタはこのページはあまり見たくなかった。自分の才能がまた自由を阻害しかねないならいっそ一生知らなくても良いのではないかと思ったからである。
それでも何も知らない世界で生きていくためには、今は一つでも多く武器を揃えて起きたかった。
その欄には二つのスキルがあった。
一つ目は〝観測EX〟。
〝観測〟発動すると近くにある武器や道具の詳細や近くにいる人間のステータスを見ることができる。神様からのサービス。
後ろの文に分かりやすくサービスを書かれていた。あまり深く考えずスルーした。
二つ目のスキルは〝
〝剣戟の嵐〟自らの手で鑑定またはそれに準ずるもので詳細を得た武器、また直接触れたことのある武器をMPを消費することで召喚、使役するスキル。コウタ・キドのオリジナルスキル。
こちらも後ろに分かりやすくオリジナルスキルと書いてある。
正直コウタはほっとしていた。
今までの神様の言動から見てどんな反則級の才能スキルを押し付けられるか分からなかったからである。
巨大な魔法を真っ二つにしたり、とてつもないパワーを得る魔法などを想像していたが、武器を召喚するだけのスキルと知り、心底安心していた。
「どうやらオリジナルスキルと言うのは名前だけであまり大したことはないようですね。」
神様もきっとオリジナルスキルがしょぼかったから気を使って観測のスキルをサービスしてくれたのだろうと勝手に解釈した。
ふぅと安堵のため息をつく。
だが彼は知らなかった。
このスキルがとてつもない反則級の力であることを。
(まぁ、それはともかく⋯⋯。)
コウタは思考をフッと周りの景色に切り替えると
「この世界は⋯⋯なんというか、面白そうですね!!」
誰に言う訳でもなく独り言のように呟くとニッコリと笑って再び走り出す。
見たことのない世界。
未知の力。
生まれて初めての自由。
眼前に広がるこの世界には心踊る誘惑が無限に溢れているように感じた。
「加速っ!加速っ!加速っ!加速っ!!っはっはっは〜!」
先ほどまでのマイナスな気分はどこへやら、側から見たら完全に頭のおかしな人間だがそんな事も気にせずコウタは穏やかな草原を高速で走る新幹線の如く爆走する。
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