ダメ姉は、修学旅行へ出発する(その11)
アクシデントも多々あったけど。修学旅行自由行動日もいよいよ大詰めとなる。レンちゃん、和味先生、カナカナたちとそれぞれに京都
さて。最後のお相手となるのは、もちろん―――
「―――マコ姉さま、何か叔母さまへの良いお土産になりそうなもの見つかりました?」
「んー。そだねぇ。どれもこれもよさげで、ついつい目移りしちゃって中々決めきれないわ。いやぁ、優柔不断でダメだねぇ私」
「ふふ……違いますよ姉さま。姉さまは優柔不断じゃなくて、どんなものにも価値を見いだせる優しいお方なんですよ」
私の最愛の、そして世界最高の双子の妹で生涯のお嫁さんな立花コマだ。
「そ、そうかな?優しいって言うなら、そんな風に些細な事でも私の良いところをいっぱい見つけてくれるコマの方だと私は思うけど?」
「いいえ、真に優しいのは姉さまです。だって私が優しく出来るのは姉さまただ一人だけですから。私、姉さまのように万人に優しくは出来ませんもの」
「いーや、コマの方が私の百万倍優しいよ!」
「そんな事ありません。姉さまの方が優しいんです」
「コマの方が!」
「姉さまが!」
「コマが!」
「姉さまが!」
「「…………ふふっ、あはは!」」
「では、間を取ってどちらも優しいって事にしましょう姉さま」
「そうしよっか。このままじゃキリがないもんね」
たかがめい子叔母さんのお土産一つ選ぶだけの事で、こんな風にいつものようにお店の中でイチャイチャ痴話喧嘩(?)しちゃう私とコマの立花姉妹。お店の皆さん、お客の皆さん。バカップルでごめんなさいね。
……ふ、ふふふ……フハハハハハ!良い、いいぞ……!やぁっと私もコマも調子が出てきた気がする!そうだよ!これ!これだよ!この数日間、色々ありすぎてやりたくても全然出来なかった……コマと二人っきりのイチャイチャ!今やっと思い切り出来てる気がするわ!
「(……何せ旅館にいるときも、自由行動中も。四六時中他の皆が側にいるから……コマとのキス……3日もお預けされちゃってるし……)」
思い返せば折角の高校生活の素敵な思い出になるはずの修学旅行だって言うのに。今回は初っぱなからコマとのイチャつく時間が全くと言って良いほど取れなかった。ヒメっちの暴走から始まって、レンちゃんの乱入、和味先生の実家訪問、そしてナンパ騒動&カナカナとの浮気疑惑―――
「(イチャつくどころか……コマを怒らせるような真似しちゃったからなぁ私……)」
最後の一件は特にマズかった。身を挺して私を助けて貰ったお礼にと、カナカナにほっぺにチューをしてしまい……よりにもよってそれをバッチリコマに見られてしまって……このデートが始まる前は、流石の温厚なコマもちょっぴり…………いや、かなーり怒ってたっぽい。
……正直めちゃくちゃ罪悪感……い、いや。浮気したとかそう言うんじゃないんだけどねマジで。
「(……まあ、デートが始まってからは。ありがたい事にコマも即機嫌を直してくれたっぽいけど)」
「……?姉さま?じっと私を見つめてくださっていますけど……私の顔に、何か付いていますか?」
「うん、付いてる。可愛いおめめに凜々しいお鼻。そんでもってついキスしちゃいたくなるお口が付いてるね」
「はぅ……!?も、もう!姉さまったらホント……お上手なんですから……♪」
ずっとコマに構ってあげられなかった分を埋め合わせるため。そして不足しつつあるコマニウムをたっぷり補充するため。一分一秒無駄には出来ない。ここから先は全力でコマとラブラブしてやるんだから……!
そのためにも、まずはちゃっちゃと叔母さんへのお土産をちゃっちゃと買い済ませ。そしてその分の時間を、コマとのドキドキ京都観光に使っちゃおうとコマに提案した私。そんなわけで今私とコマは観光客たちが集まる商店街へやって来ている。
「むぅ……中々決まんないなぁ。あの叔母さんの事だから、下手なお土産チョイスしたら絶対不平不満をタラタラ言いまくるよね……困ったもんだわ」
「ふふ……その光景、目に浮かびますね」
ちなみに、どうでも良い余談だけど。当の本人に土産は何が良いかと修学旅行前日に聞いておいたところ。
『酒』
と、ある意味期待を裏切らない酒乱な模範解答が返ってきた。買えるかい。私たちまだ未成年だっての。
「何が良いのでしょうね。京都と言えばやはり定番は八つ橋あたりでしょうが……」
「叔母さんの事だし『定番過ぎてつまんね』とかほざきそうだよねー」
さーて、どうしたもんかねぇ。叔母さんにも合いそうなお土産と言えば……
「……あ。そう言えば……」
「?どうなさいましたか姉さま。何か思いつきました?」
「うん、今思い出したんだけど……和味先生の実家の料亭を出るときに。女将さんに『お酒好きにぴったりな京都のお土産知りませんか』って聞いたんだった」
京都の事は京都の人に聞くのが一番。そう思い帰り際にあの女将さんに聞いてみたところ。
『任しとき。未来の可愛いうちの娘の頼みなら、喜んで聞くわ』
と、(未来云々の話はよくわかんなかったけど)快くおすすめの場所を紹介してくれたんだった。
「とりあえず、他にアテもないし。その店に行ってみよっかコマ」
「……そう、ですね。あの女将さまの紹介という点は……気に入りませんが。行ってみましょうか」
「おっけー、なら決まりね」
そんなわけでコマの了承も得て。貰っていた地図を頼りに女将さんおすすめのお店へとコマと出向く事に。
幸いにもそう遠くない場所にあったそこは、いかにも伝統と歴史あるって風体の老舗のお店。
「なるほど漬物か。これなら叔母さんも喜んで食べてくれそうかも」
「ですね。叔母さま、塩っ辛いものとか好きですものね」
ここはどうやら漬物屋さんのようだ。うり、きゅうり。なすび……色んな京のお野菜が漬けられ販売されている。どれもこれも美味しそう。
キョロキョロとコマと二人で店内を見回ってみると、店員さんが私たちに声をかけてくれた。
「あら、いらっしゃい。何かお探しですか?」
「あ、はいこんにちは。そーなんですよ」
「私たち、修学旅行のお土産に何か買いたいなって思いまして」
「そうなんですね。折角です、良ければ試食とかいかがですか」
「いいんですか?じゃあ喜んで」
そう言って店員さんは私たちに試食を勧めてくる。買うにしろ買わないにしろ。味を知っておいて損はないだろう。喜んで頂いてみる事に。
ぱりんぽりんと一口食べると、ほほぅ……これは中々と思わず唸ってしまう私。コレ……ホントに美味しいわ……
「いかがです?気に入ってくれました?」
「は、はい!びっくりしました……こんなにまろやかでコクがあって……ご飯めっちゃ進みそう……」
流石はあの女将さんが薦めてくれたお店。期待以上に美味しかった。これをお土産にするなら叔母さんも文句も言えまい。
「すっごい美味しかったです。これと同じ奴いくつか買っちゃおうかな」
「それは良かった。毎度ありがとうございます」
「えっと……ちなみにこれ、なんて名前のお漬物なんですか?」
「ああ、これですか?―――奈良漬ですよ」
「へぇ……奈良漬かぁ……」
ここ京都なのに、奈良漬かぁ。ふふ。おかしいの。なんだか矛盾しているようで、一瞬笑いがこみ上げてきて。
「…………ん?奈良漬……?」
そして、一瞬である事に気がついてしまう私。奈良漬って確か…………アルコール……が……
ご存じだろうか?奈良漬。野菜を塩漬けにして、酒粕に漬け替えながらできた美味しい漬物だ。……そして覚えておいでだろうか?うちの可愛いコマ。ちょっとお酒が入るだけで酒乱になる困ったちゃんだ。
「…………ふ、ふふ……うふふふふ……」
「…………あっ、ヤバ―――」
恐る恐る私の隣のコマを見ると、時すでに遅く……店員さんに勧められた奈良漬を口に入れすっかり出来上がっていた。
それを理解した瞬間。逃げ出す間も抵抗する間も無く。私は
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