番外編(その2)の妹も可愛い
ダメ姉と、いい双子の日
「―――そう言えば。今日は『いい双子の日』なんだって」
「「「「えっ?」」」」
とある日の昼下がり。ダメ姉こと私、立花マコは……双子の妹兼嫁のコマ、親友のカナカナにヒメっち、後輩のレンちゃんの5人で私お手製のお弁当を食べていると。カナカナは不意にそんな事を言い出したではないか。
いい双子の日?なんじゃそりゃ?
「カナカナ、なにそれ?」
「私と姉さまの誕生日、12月13日が双子の日なのは知っていますが……いい双子の日とは何ですかかなえさま……?」
「ほら。今日は11月25日でしょ。語呂合わせで
ああ、なるほどね。確かにそう読めなくもないわ。
「……なら今日はマコとコマの日なんだ。おめでとー」
「そうなんですか!?それはおめでとうございますマコ先輩っ!」
「あはは、ありがとー」
天然娘のヒメっち&レンちゃんに何故かお祝いされる私たち双子姉妹。……って、祝われるような事でもない気もするけど、まあ祝われて損するわけでも無し。ここはありがたく祝われておこうかな。
そんなよくわからないお祝いムードの中。話を振った張本人であるカナカナは私とコマの顔を見比べながら何やら訝し気な表情を見せる。どうした親友?
「それにしても……双子、ねぇ」
「なんだいカナカナ?何故に私とコマの顔をじっと見つめているのかね?」
「もしかして私と姉さまの顔に何か付いてます?」
「んー……いや大したことは無いけど。あんたら双子ってさ」
「うん」
「はい」
「前にも言ったかもしれないけど……双子っぽくないわよね」
「「えっ?」」
わ、私とコマが双子っぽくない……?カナカナの一言に固まる私。
え、私たち双子だよ?血どころか遺伝子まで一緒な双子姉妹だよ……?う、疑う余地なんてない、よね……?
「……なんですかなえさま。私と姉さまの尊い双子姉妹関係を疑っているのですか?ケチをつけているのですか?正真正銘、私たちは一卵性双生児。他の誰にも真似できないこのプレミアム感ある関係性が何か間違っているとでも?」
カナカナのその不穏な発言に反応し、静かにキレてる我が半身がカナカナに詰め寄りどういう意味だと問いかける。
「違うって。あと顔が怖いわよコマちゃん。ちょっと落ち着きなさいな。……そういう事じゃなくてさー。単純にあんたら二人って性格やら体格やらが違ってるせいで、よくある『双子あるある』が二人には通用しないよねって言いたかったのよ」
「あー。なるほど」
カナカナの言いたいこと、ちょっと分かったかも。私とコマの立花姉妹は正真正銘の双子、それも一卵性双生児―――なんだけど。月と鼈、完璧超人とダメ人間。どう間違ってしまったのやら、外見やら中身やらがあまりにも似ていない。
そういう意味であまり双子らしくないとカナカナが思うのも無理は無いかもしれない。
「例えば……世間一般の双子はよく『どっちが姉でどっちが妹なの?』とか聞かれるらしいけど。私たちってあんましそう言うのは聞かれないよねコマ」
「ふむ……言われてみれば確かにそうですね。そもそも双子として見られていないことが多いですよね。年が離れた姉妹と勘違いされちゃったりとか」
聞かれない割に、大抵はコマがお姉ちゃんで私が妹だって間違えられるから困る。背丈とか性格とか学力とか、そういうのを見て初見で私とコマのどちらが姉かと問われたら……十中八九コマが姉って思われてしまうのは……まあ、無理ない事だろうけどさ。
……うぅ、もっとお姉ちゃんらしく振舞わないとダメだなぁ私……
「……双子と言えば。ねえ、二人とも」
「ん?なになにヒメっち?」
「……双子ってさ、服を共有したりするって話をたまに聞くけどさ。マコたちは共有してるのー?」
今度は無邪気にヒメっちがそんな事を聞いてきた。服の共有ね……確かに普通の双子ならしても問題なさそうだけど……
「えーっと、ですねヒメさま。確かに昔はよく服を共有したりしていましたよ。ですが……」
「うん……今はちょーっと無理だよねぇ」
幼稚園や小学校。コマと服を一週間単位で交換したりしてた時期はあったさ。だってあの時はそこまで体格差はなかったもの。でも今は……
「背丈とか…………(ボソッ)む、胸とかお腹周りとか。二人大分違ってるせいで残念ながら共有は無理なんだよね」
「ですです。姉さまの日々進化しているダイナマイトボディに合う服なんて、私にはとても着れませんからね……」
私は低身長&胸とお腹に駄肉を積んだ子豚スタイル。対してコマは高身長&スラリとした素敵モデルスタイル。私もコマも、互いの服を交換してもまともに着られないのである。
「今ではもう、共有できるのは
「ふーん、そうなの。…………ん?え、ちょ……待ちなさい。コマちゃん、今何と?ショーツが何ですって……!?え、何!?あんたらまさかショーツを共有してるの!?そんな、羨ましい事してるのコマちゃん……!?ちょっと!?どうなのマコ!?ねえ、ねえっ!?」
…………の、ノーコメントで。
「ほ、他の双子あるあると言えば!双子で入れ替わりってのもやったよねー!」
「……あー。あったあった。マコがコマの振りして授業とか受けてたね」
「ありましたねー……姉さま、あの時は本当にご迷惑をおかけいたしました……」
「えっ?マコ先輩、ホントにそういう事やったんですか!?」
変なところに食いついてきたカナカナから話題を逸らすため別の話題を挙げてみると。今度はレンちゃんが反応してきた。
「そうなんだよ。コマがちょっと風邪引いちゃってさ。その日は大事なスピーチコンテストが控えてたから、私がこっそりコマに成り代わって授業を受けたりスピーチコンテストに出場したんだよ」
「だ、大丈夫だったんですか?バレたりとかは……」
「……それが全然。約一名を除いて完璧に騙し通せてたよ。私もすっかり騙された。マコ、完璧にコマに成りきってたもん。正直言うと成り切りすぎてキモかった」
「キモ……!?し、失礼だねヒメっちや……」
こちとら必死にやってただけなのに、酷い言われようだ……
「約一名を除いて……?つまり、どなたかには見破られたんですか?」
「あー……うん。そこのカナカナに、ね。まさか一発で見破られるとは思わなかったよ……お陰で先生たちにも怒られる羽目になるし踏んだり蹴ったりだったなぁ……」
「寧ろわたしからしてみれば、なんで誰もマコとコマちゃんを見分けられないのよって思ったけどね。一目見ればわかるでしょ、マコの方がどう見ても可愛いじゃないの」
「それに関しては同感です。どれほど私に成りすましても、姉さまの愛らしいオーラは隠しても隠し通せませんものね。流石永遠のライバル……良い観察眼だと褒めてあげても良いですよ」
「マコならともかくコマちゃんに褒められてもねぇ……まあ、ありがたく褒められとくわ」
……そんなところで意気投合しないでほしい。恥ずかしいからやめて。
「そう言えば双子って好みとかが被る場合もあるそうだけど。あんたら二人、好きな食べ物とか被ってるの?」
「「好きな食べ物?」」
カナカナに問われて考えてみる。んー、好きな食べ物ねぇ……?
「コマはきんぴらとか好きだよね。あとは味の濃いものとか」
「そうですね。味覚障害だった名残で、歯ごたえの良いものとか味付けの濃いものが今でも好みかもしれません。……まあ、私は姉さまが作ってくださるお料理なら何でも好きですが♡姉さまは…………あら?そう言えば姉さまって好き嫌いとかありますっけ?」
「え?えっと…………あれ?そう言えば好きなものはいっぱいあるけど、嫌いなものとかは無いかも?基本何でも食べるもんね」
はいそこ。卑しいだけの食いしん坊万歳とか言わない。
「あとは……よく聞く話だと双子って好きな人が被っちゃうことが多いらしいね」
「へぇ……そうなのですか。ですが私たちの場合はそれは当てはまりませんよね」
確かに。好きな人が被るような事は私たちには無縁の話だ。だって……
「「だって私たち、お互いの事が大好きだから」」
「……チッ。惚気ないで頂戴なそこのバカカップル共が」
カナカナさん?ガチで舌打ちするの止めてくれません?あと、目が冷たいです……
「せ、先輩方先輩方!あの、ちょっと変な事聞いても良いですか?」
「おっ?なになにレンちゃん?」
「テレビとかで見たことあるんですが……双子の人って『テレパシー』があるって話あるじゃないですか。あれって……実際どうなんですか……?」
ああ、これもよく双子ならではで聞かれることだよね。テレパシー……うーむ、テレパシーか。
「個人的な意見を言わせてもらうと……あるんじゃないかなって思ってるよ」
「私もです。ちょっと非科学的な話になりますし、信じて貰えないかもしれませんが……あると思ってます」
「ほ、ホントですか!?先輩たちは、テレパシー感じたことあるんです!?」
私とコマがそう答えると、レンちゃんはキラキラした目で熱心に問いかけてくる。
「うむす。例えばさ……コマがピンチの時とかなんとなくわかるし、そういう時は必ず駆け付けられるよ私」
「同じくです。姉さまが危ない時は虫の知らせでわかりますし、すぐに姉さまのもとへと駆け付けられますもの」
「……ねぇそれ……テレパシーっていうよりも、二人とも盗聴器をお互いに付け合ってるお陰なだけじゃない?」
ヒメっちよ。無粋な事は言わないでくれないかね?……いやまあその通りだけどさ……
「い、いや。他にも根拠はあるんだよ。例えばね……コマの考えていることなら、私なんとなく察せられるよ」
「あ、それ私もです。最近特に、姉さまが何を考えているのか分かるようになりましたよ」
「えー?ホントにィ?あんたら適当な事言ってるんじゃないでしょうね」
信じていなさそうなカナカナ。むっ……良いだろう。なら証拠を見せてあげようじゃないか。
「よーし、ならコマ。この三人にテレパシーはあるって証明しちゃおっか」
「お任せくださいマコ姉さま。では、『せーの』でお互いが今何を考えているのか声に出してみましょうか」
「OK。んじゃいくよ」
「「せーの―――
愛してるっ!」」
お互いを見つめ、双子らしく阿吽の呼吸でお互いの想いを見事にハモらせる。以心伝心。ほらね?テレパシー、あるでしょ。
「…………チッ!だから、惚気るな。見せつけるな。無理やり別れさせるわよバカカップル共が……ッ!」
先ほど以上に何故だかカナカナの舌打ちと目付きは冷たく鋭く厳しく、そして大変痛かった。
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