第46話 ダメ姉は、土下座する
「―――それで、姉さま?つまり今の姉さまの話を要約すると……一番頑張って勉強した数学の試験中に居眠りをしてしまい、結局試験終了まで起きられず0点になってしまったという事ですか?」
「…………その通りでございます」←土下座中
「やれやれ。『期末試験の勉強する』って聞いた時から何かしらやらかすんじゃないかと思ってはいたが…肝心なところで盛大にポカやらかす辺り、ホントお前さん根っからのダメ人間だよなマコ」
「…………仰る通りでございます」←土下座中
期末試験も無事(?)終了し、答案用紙が全て返却されたその日の夜。
私はリビングにコマとめい子叔母さんを呼び、その場で土下座をしながら経緯を説明しつつ謝罪をしていた。
「ったく……コマに前日『徹夜はマズいし早く寝ろ』と忠告されていたにもかかわらず、それを無視した結果がコレかい。勿体ねぇよなぁ……数学以外は全教科平均点を超えてるんだろ?なのにあんだけ必死に勉強した数学で、痛恨の居眠りとはなぁ」
「……ぐっ」
返却された答案用紙を見ながら叔母さんは私に対してため息交じりに言葉を紡ぐ。
そう……叔母さんの言う通り、家庭教師役を買って出てくれたコマの教えと叔母さんや先生たちの助け、そしてこれまでの自身の勉強のお陰で今回の私は驚くべきことに数学以外の科目は赤点回避どころか全て平均点を超えていた―――のだが。
肝心の数学で……一番努力したはずの数学の試験で、居眠りの末に試験終了まで爆睡。お陰で見事0点を取ってしまった私。我ながらアホ過ぎる……
「い、一応試験の内容自体は……普通に解けていれば赤点回避余裕で出来たんだよ……もしも寝てなかったら、今回かなりいい感じだった……ハズなんだよ……」
「バカ者。だったらなおさら悪いわ」
「…………返す言葉もないっす……」
思わず言い訳をしてしまった私に対して、呆れた顔でぴしゃりと一蹴する叔母さん。ぐうの音も出ねぇ……
「あのなぁマコ。お前さんの保護者として、めちゃくちゃ月並みなこと言わせてもらうぞ。例え本番前や本番後にどれだけ問題が解けたからって、本番で実力発揮できなきゃ意味ねーだろうが」
「……そう……だね」
「確かにお前さんは今回よく頑張ってた。実際数学以外は普段のマコじゃ考えられないほどよく出来てたもんな。その頑張りは素直に認めるよ。だがな、残念ながら一番大事なところで結果が出せなきゃその頑張りも意味がない」
「……うん」
「…………(ボソッ)意味が、ない?……本当に、そうでしょうか……?」
「これは今回の数学の試験だけの話じゃないぞ。この先に待ち構えるであろうお前さんの将来を決める大事な試験でも言えることだ」
「……だよね」
悔しいけれど叔母さんの言う通りだ。例えば高校受験、大学受験、就職試験や資格試験―――仮に事前にどれほど努力したとしても、最終的に受からないなら何の意味もなさないもんね。
ましてや『本当なら合格できるくらい勉強してたんですけど、試験中に眠ってしまいました!再試験受けさせてください!』なんて言い分を聞いてもらえるはずもないし……
「ま、アタシが言えることはこれだけさね。あんまりぐちぐちと叱っても仕方ないし、こっから先の説教はマコの家庭教師のコマに任せる。アタシは仕事に戻るからな。コマ、あとよろしくー」
そう言って欠伸をしながら叔母さんはリビングから去っていく。残ったのは絶賛土下座中の私と……先ほどから無言で私の数学の答案用紙を眺めているコマだけだ。
「……ふむ」
「……あ、あの。コマ……?」
「…………うーん」
「うぅ……」
まずは謝罪をしようと声をかけてみるも、私の声は耳に届いていないのか何やら思案顔で反応してくれないコマ。……これ絶対コマ怒ってるよね……?
まぁそりゃそうだ。何せコマは自身の勉強時間を削ってまであんなに親身になって試験勉強の手助けをしてくれたにも関わらず、肝心の私がご褒美に目が眩み忠告も聞かずに徹夜しちゃった結果がご覧の有り様だもの。……情けない、不甲斐ない、消えちゃいたい……
元々友人たちから『これ以上赤点を取ったら留年の危機もあるし、何よりコマちゃんに失望されて絶縁されかねないよ』と、警告を受けていたわけだし……今すぐにでもコマから『姉さま、絶縁させてもらいます。これ以降私に話しかけないでくださいね』―――なんて宣言されることだって十分あり得るわけで……
「……姉さま」
「は、はいっ!」
どうやら考えがまとまったらしいコマは私に声をかけてくる。ああ、もうダメだ。お終いだ……きっとコマは今から『姉妹の縁を切らせてください』と持ち掛けてくるに違いない。
「すみません姉さま。10分間だけ待ってもらって良いですか?」
「へ……?」
「あ……ダメ、ですか?」
「あ、ああいや大丈夫……え、遠慮なく……ど、どうぞ?」
「ありがとうございます。すぐに作ってきますからね♪」
……とかなんとか思っていたけれども、予想外のコマの言葉に虚を突かれる。困惑中の私をよそにさっさと自分の部屋へと向かうコマ。
……あれ?てっきり絶縁の話を持ち掛けられると思ってたのに……違うの?っていうか、作ってきますって……コマは一体何を作ってくるというの?
「……あ。もしかして……絶縁状、か…?」
な、なるほど……その可能性は非常に高いな。よく知らないけど法的に私と縁を切りたいなら、しっかりとした書面を作っておく必要があるのだろう。さ、流石私の可愛いコマだ……あまりの妹の賢さにお姉ちゃん涙出ちゃいそう。
……はぁ。絶縁、絶縁かぁ……私…もしコマと絶縁されたらこの先生きていられるかな……?
…………うん、無理だな!……むり、だな……たぶん、しぬわ私……
「すみません、お待たせしました姉さま」
「い、いや大して待ってないよ……大丈夫……ダイジョウブ……」
「そうですか?なら良かったです」
生きた心地がしない中で胃をキリキリ痛めつつ、しばらくその場で正座してコマが戻ってくるのをただじっと待った私。きっちり10分経ってからコマは一枚の手書きの紙を持って部屋から戻ってくる。
……や、やっぱり思った通り絶縁状を作って来たんだ……終わった。私の人生、オワッタ……
……仕方ない。ここは覚悟を決めよう。絶縁状を渡されたら、きっとこの先私は二度とコマに口をきいてもらえなくなることだろう……
だったらせめて最後に告げられるコマの言葉一字一句を私の胸の中に刻んで、この世から果てるとしようじゃないか……!
さあ来たまえコマ!どんな罵詈雑言も今の私にとってはご褒美になるぞ……っ!
「さて姉さま。とにもかくにもまずはこれを……受け取って貰えますか?」
「う、うん……」
そう言ってコマは私に持ってきた絶縁状と思われる用紙を渡す。緊張しながらも震える手でその用紙を受け取って……恐る恐る目を開き、一番最初に書いてある一文をチラリと見てみると―――
【次の連立方程式を解いてください】
「…………は?」
……連立、方程式……?慌てて用紙全体を眺めてみると、そこにはどういうわけか数学の試験範囲内の問題がコマの手書きで埋め尽くされているではないか。
……ナニコレ?っていうかこれ…………絶縁状じゃ、ない……?
「あ、あの……コマさん?これは一体……」
「試験が終わった直後で申し訳ありませんが、姉さまにはこの問題を解いてもらいますね。もし宜しければ今すぐにでも大丈夫でしょうか?」
「えっ!?……あ、うん……それは大丈夫だけど……」
「良かった♪一応試験を受けるつもりで問題を解いてください。勿論時間も計りますから」
「わ、わかった……」
え、えっと。どういうこと……?何で絶縁状じゃなくて数学の問題を渡されてるんだ私……?
何が何だかさっぱりだけど……とりあえずコマに言われた通りに問題解けばいい……のか?いや、そもそも何故問題を解かねばならないんだ……?
「制限時間は60分です。では早速いきましょうか。―――始め!」
「は、はいっ!」
そんなわけで。訳がわからないながらもコマに半ば押し切られる形で受け取った問題を解くことになった私。
コマの意図はさっぱりわからないけれども……まあどの道やらかしちゃった私に拒否権は無いか。ならばせめて、期末試験で発揮できなかったコマの素晴らしき教えを今ここで示してやろうじゃないか。
◇ ◇ ◇
ピピッ!
「―――はい、終了です姉さま。お疲れ様でした」
あれからきっちり一時間経ち、試験監督役として私の解答をずっと見ていてくれていたコマが解答終了を宣言する。
ふぅ……良かった。難しい問題もいくつかあったけど、何とか最後まで解けた……
「コマもお疲れ。ごめん……待たせちゃったね。私なんかを見ずにテレビとか見ててもよかったのに。退屈だったでしょう?」
「いえいえ。全く待ってませんよ。それに退屈なんてしてませんからご安心ください。…………(ボソッ)なにせ、姉さまが頑張って問題を解いている凛々しいお姿をじっくりと拝見できて、とても楽しかったですし」
時間を取らせちゃった私に、気にしないでくださいと笑顔で応えるコマ。
「それじゃあ早速採点しましょうか。姉さま、また少しだけ時間を私にくださいな」
「あ、うん……どうぞ」
「姉さまはお疲れでしょうから、しばらく休憩なさっててくださいね」
解答を終えた用紙を私から受け取ると、コマは素早く丁寧に採点を始める。一方の私は何故コマがこんなことを私にさせたのか、絶縁の話はどうなったのか、というか何故コマは怒っていないのかがわからずにただ困惑していた。お陰でとてもまともには休憩なんて出来そうにない……
凄い勢いで採点するコマをそわそわと横目で伺いながら、審判の時を待つ。そんな私の心中を知ってか知らずか、一分もかからずに採点を終えるコマ。
「お待たせしました。…………姉さま、お見事です」
「へ……な、何が……?」
「今回の試験に極めて近い問題を作ってみたのですが……見事に今回の数学の学内平均点を超えているじゃないですか♪おめでとうございます!」
「は……?」
私に答案用紙を返してくれたコマは、どういうわけか満面の笑みで私を褒め出したではないか。
「あ、あのさコマ……」
「ふふふっ……流石は私の姉さまですね。ちゃんと勉強していた証拠ですよ。よくここまで頑張ってくださりました。姉さま専属の家庭教師役として、私とっても感激です」
「いやだから……」
……ま、待ってコマ……何なのその反応は……?怒られるんじゃなくて……何故に褒められてるの私……?
「これなら来週行われる再試験も一発で合格間違いなしですよ。自分に自信もってください」
「ね、ねえコマってば……」
「あ、勿論念のために明日から数学の再試験へ向けて引き続き勉強会を行いますから、もう少しだけ私にお付き合いいただけると―――」
「ま、待ったコマ!だからちょっとだけ待って!」
「…………はい?どうかなさいましたか姉さま?」
叱りもせずににこにこ笑顔で話を続けるコマを、一旦止めてみる私。
「あ、あのさ……コマ。怒ってないの……?」
「……え?怒る?えっと……何のことでしょうか?」
「だ、だって……コマの大事な勉強時間を削って貰ってあれだけ熱心に勉強教えてくれたのに……私ったら、0点取ったんだよ?しかもコマから『徹夜は良くない』って注意されてたのに、それを無視してしまったのが0点の主な原因なんだよ?それなのに……なんでコマは私を怒らないのかなって……不思議に思って……」
「……」
正直コマの気持ちがまるで理解できない。どうしてだろう……どうしてコマはあんなバカをやっちゃった私に対して、こんな素敵な笑顔を見せてくれるんだろう……?
「失望されたり蔑まれたり……嫌われたり絶縁されてもおかしくないんじゃないかなって怖かったのに……コマの期待に応えられなかったのに、あまりにバカバカしいミスをして応えられなかった情けない姉なのに。どうして……どうしてコマは……私を怒らないの……?」
思い切ってコマに自分の気持ちを弱弱しく吐露しながらそう尋ねてみると、
「……だって、姉さまを怒る必要なんてどこにもありませんから」
「え…?」
コマは何も問題ないと言いたげに、そんなことを告げる。
「今回姉さまが頑張って勉強してくださったことは、姉さまのお傍で勉強を教えた私がよく知っています。現に数学以外はこんなにも素晴らしい出来でしたし……数学だって今解いてもらった解答を見れば、しっかりと勉強なさっていたことが証明されるでしょう?」
「そ、そうかな……?」
「そうですよ。……家庭教師を担当した私としましては、姉さまのこれまでの頑張りとこの結果に喜びこそすれ…怒る必要なんてどこにもないじゃないですか。…………(ボソッ)といいますか、私が姉さまを嫌う?おまけに姉さまと絶縁ですって?そんな恐ろしい事になったなら……私きっと、死んじゃいますよ……」
コマはそう言ってくれるけど、さっきの叔母さんの言葉を思い出す私。いくら試験の前後で問題が解けても、本番で実力発揮をできないなら何の意味もないんじゃないだろうか……
「で、でもさ……叔母さんが言ってた通り、どんなに頑張っても結果が出せなきゃ意味がないんじゃ……」
「…………そうですね。結果を出してこその努力、結果を出さなければ努力は意味がない。確かに叔母さまの仰っていたことも間違いではないでしょう」
「だ、だよね。ゴメン……」
「ですが……私は努力や頑張りは決して無駄にはならないって……思っているんですよ」
「……え」
そう言ってコマは答案用紙を強く握りしめていた私の指を優しくほどき、自身の手を重ねてくれる。
あ……コマの手……柔らかくてあったかい……
「……何の説明も無しに、この問題を解かせてしまって申し訳ありません姉さま。ただ、私……どうしても姉さまにわかって貰いたかったんです。姉さまの頑張りが無駄じゃないって事を」
「私の頑張りは……無駄じゃない……?」
「はい。だっていきなり何の準備も無しにこの問題を解くことになったのに、この通り姉さまはちゃんと結果を出してくれたじゃないですか」
さっき私が解いた問題を眺めながら、慈しむように一言一言丁寧に私に語り掛けてくれるコマ。
「それって私との勉強を、姉さまがしっかり身につけてくれた証拠じゃないですか。……詰まる所それは、今日までの姉さまの頑張りや努力が無駄ではなかった証拠じゃないですか」
「……っ!」
「試験なんて……私から言わせてもらえば単に授業の理解度を分かりやすく点数化しただけのものですよ。本当に大事なのは、どれだけ勉強を身につけているかだと思っています。だからこそ、私嬉しいんです。姉さまが私と一緒に勉強してくれた時間を決して無駄にせずに、一生懸命頑張ってくれたんだってわかるから……」
コマの手の温もりのような優しくて暖かい言葉が、私の中にじわりじわりと染み込んでいく。
…………いかんな、これは……ヤバい。ちょっと泣きそう。こんなダメダメな私を、怒るどころか嬉しくなることを言ってくれるなんて……ホントに泣いちゃいそうだ……
「限られた短い期間で、しかも途中様々なトラブルもある中……今回姉さまはとても頑張りましたよ。期待以上の成果も出してくださりましたし、やはり姉さまは私の誇りです」
「い、いや……ここまで頑張れたのはコマのお陰だし……コマがいなかったらこんなに頑張れてなかったよ。本当にありがとうコマ」
「…………その姉さまのお言葉だけで、姉さまの家庭教師をやれて本当に良かったと心から思えますよ。……さあ、この姉さまの頑張りは、絶対次の試験で活かしましょう。姉さまならきっとやれますよ」
「うん……うんっ!次は、うん次こそは頑張る!私……コマの期待に絶対応えられるように頑張るから……!」
「ええ♪一緒に頑張りましょうね姉さま」
……コマに励まされつつ心の中で思う。今回の件でよーくわかった。まだまだ私は理想のお姉ちゃんにはなれそうにない。理想に近づくためには勉強・運動・その他諸々―――根がダメ人間だし、やらねばならない事は膨大だろう。
だからこそ……その理想に向かって少しずつ頑張っていこうと思う。コマの言ってくれた努力が無駄ではないという言葉を嘘にはしたくないもんね。
「若干目標が低い気はするけど、当面の目標は次回の試験で赤点全教科回避……かな。頑張らなきゃね」
「ふふっ♪姉さま、その前に再試験の一発合格が先ですよ」
「あ、そっか。確かにそっちが先だよね。…………というか、忘れてたけど再試験の前に赤点取ったら3日間補習もあるんだった…折角の夏休みなのにヤダなぁ」
そんな感じで二人手を繋ぎ合いながら、これからの話を楽しく言い合う私たち立花姉妹。
「え?補習……ですか?……ああ、そういえば赤点者には補習があるんですっけ。…………そっか、補習か。夏休みですし……姉さまと一緒に授業が受けられるなら……私も補習に自主参加しちゃおうかしら……」
「ええー!?コマ、どんだけ勉強好きなの!?折角の夏休みに補習の自主参加とか……私だったら全力で遠慮したいのに……」
「あ……いえ。好きなのは勉強でも補習でもなくてですね……」
さあ、楽しい夏休みはもう目の前だ。まずはその夏休みを無事に迎えられるように、コマの言う通り再試験の勉強を頑張らなきゃね。
「あ……ところで姉さま。わ、私と日曜日に交わしたあの約束……まだ覚えていますか?」
「ん?日曜に約束……?えーっと…………ああ、もしかしてご褒美のこと?」
と、話の途中で何かを思い出したようにコマがそんな話題を出してくる。
そうそう、確かコマと電車の中で条件が達成出来たら『一つだけ条件達成した方の言う事を何でも聞く』―――というご褒美の約束をしたんだったっけ。
「ええ、それです。姉さまは『全科目、赤点回避』という条件を達成出来たら、という約束でしたから……残念ながら今回私から姉さまにご褒美をあげることはできません。……すみません姉さま、期待させたのに……」
「なーんだそんなことか。それはもう良いんだよコマ。目標達成できなかった私が悪いだけだもん。気にしないで」
私としてはコマに絶縁されず、しかも励ましてもらえただけで十分ご褒美だし問題ない。
……それに冷静に考えてみたら、本当に私が条件達成してた場合、ご褒美と称してコマに対しエロい―――もとい、エライことを頼み込んでドン引きされたり嫌われたりする恐れもあっただろうから…これはこれで良かったんだと思う。
「……ん?ところでコマ。どうして今更そんな約束の話をしたの?」
「…………えっと、ですね。こ、ここからが私にとっての本題なのですが……」
「本題?」
「……ね、姉さまはその……私の方の条件も、覚えていますか……?」
「コマの条件……?あ、うん勿論覚えてるよ。確か『全科目、学年一位』だったよね!」
「は、はい!その通りです!」
私と違ってコマは設定する目標が高いよなぁ……って感心したからよく覚えている。コマの目標の高さには感心しちゃうよね。しかもコマの場合はただ目標が高いだけじゃなくて、ちゃんと条件を達成できるくらいの学力があるから凄い―――ん?
…………あれ?ちょっと待った。そこまでコマに言われてふと思い出す。そういえばコマの今回の期末試験の順位って確か……
「……それで……その。姉さまにはこれを見ていただきたいのですが……」
そう言ってコマは私に9枚の答案用紙を自身の鞄の中から取り出して、顔を真っ赤にしながらおずおずと私に見せてくれる。
そこには『立花コマ』というコマの綺麗な字で書かれた名前とコマの解答と……
「せ、宣言通りですね、私も……姉さまのように頑張って……全科目で学年一位……といいますか、全科目満点を取りましたので…………ご、ご褒美に……姉さまのこと、好きにしても良いですか…?」
「…………え?」
それから……各教科の教師たちが付けた100点満点の花丸が、鮮やかに描かれていた。
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