第47話 ダメ姉は、ご褒美をあげる
~SIDE:マコ~
『せ、宣言通りですね、私も……姉さまのように頑張って……全科目で学年一位……といいますか、全科目満点を取りましたので…………ご、ご褒美に……姉さまのこと、好きにしても良いですか…?』
『…………え?』
期末試験も無事終わり反省会を兼ねてイチャイチャお喋りをしていたコマと私。その話の途中で、コマが全科目100点の答案用紙を私に見せて……モジモジと愛らしく私におねだりをしてきたではないか。
元々二人で『目標達成出来たら、一つだけ何でも言う事を聞く』と約束していたわけだし、散々迷惑をかけた上に赤点を取ってしまったという負い目もある。
……いや、そもそもコマのおねだりをこの私が拒否できるはずもない。そんなわけでコマのどんな命令や要求でも喜んで引き受けるつもりだったんだけど……
「あのさコマ。……本当に、こんなのがご褒美で良いの……?」
「は、はい……。とても……そう、とても良いです……」
「そっか。いやぁコマは全然欲がないねぇ。『姉さまのこと、好きにしても良いですか……?』なんて台詞を聞いた時は、一体どんな凄いことを命じられるのか興奮してた―――もとい、ドキドキしてたのに……まさかコマのお願いが『撫で撫でしてほしい』だなんて……」
一体どんなおねだりなのか期待半分興奮半分な私だったけど、コマが私におねだりした内容は『今日一日、私が満足するまで撫で撫でしてくれませんか?』というもの。
そんなわけでこの私はコマのお部屋にお邪魔して、現在コマのベッドの上に二人並んで座りコマを思う存分撫で撫でしている。
「(この私としては『私の従順な犬になってください』とか『思う存分姉さまを殴らせてください』みたいな多少無茶な要求でもバッチコーイだったのになぁ……)」
ぶっちゃけこの程度の事なら今日一日だけじゃなくて、毎日だってしてあげちゃうのにね。わざわざあれほど高い目標を設定しておいてこんないつでも叶えられるようなおねだりをしてくる辺り、コマったら本当に奥ゆかしいなぁ。
……もしかして私に遠慮しているんじゃなかろうか?コマの頭を優しく撫で続けながら尋ねてみることに。
「ねえコマ。もっと無理難題言ってくれても良かったのに…こんなので本当に良いの?もしかして私に遠慮してない?」
「いえ……これが良いんですよ……はぁ……きもちいい…」
コマは艶めかしく息を吐き、私が撫でる度に目を細めて本当に気持ち良さげにうっとりしている。……なんか、えろい。うちの妹、一挙一動が果てしなくえろい。
「んー……まあコマがこんなので満足してくれるならいいけどね。あ、でもさでもさ!折角全科目で100点なんて偉業を達成したんだし、撫で撫で以外で他に何か私にしてほしいこと思いついたら何でも言いなよコマ!サービスとしてもう一つだけ、コマの言う事なら何でも聞く権利をあげちゃうね私!私のこと、好きにして良いから!」
「…………何でも、ですか……?」
「うん!何でも!」
「何でも……何でも……何でも…………」
あれだけの成績残しているわけだし、もう一個くらいはコマにご褒美あげても良いよね?まあ私がコマにかなえてあげられることなんてたかが知れてるだろうけど。
「それにしても、コマはホントに撫でられるのが好きなんだねー。前も撫でて欲しいっておねだりした事あったよね?……ひょっとしてさ、日曜日にご褒美を提案した時から私に撫でて貰おうって決めてた?」
「…………はい。実は、そうです。だってこの前は姉さまに撫でて貰っている途中で先生の横やりが入って……消化不良でしたから……私、試験を受けている時もずっと楽しみで楽しみで仕方なかったんです」
「へ?消化不良?それって…………あっ!」
なんのこっちゃと思ってしばし考えてから、診療所で撫で撫でを中断した時に何だかコマの様子がちょっとおかしかったことを思い出す私。
なるほど。あの時は私が急に撫でるのを止めちゃったから不満だったんだね。
「そっかぁ……気が利かない姉でゴメンねコマ。……安心してねっ!お姉ちゃん、今日はコマが『もう止めてください』って音をあげるまでコマのこと撫でちゃうから!コマは覚悟するよーに!」
「あらあら、それは……とても楽しみです♪」
わしゃわしゃとコマを撫でてあげる私。コマも嬉しそうに私の隣で撫でられ続ける。よーし、こんなご褒美で良いならコマにちょっとでも満足してもらえるように誠心誠意真心こめて撫でるとしよう。
正直私はお子様体質で、夜更かしとかは割と苦手なんだけど……コマの為ならばなんてことは無い。最低限日付が変わるまでは何が何でも撫で撫でしてあげようじゃないか。
「……とは言え、ただずっと撫でてるだけじゃコマも飽きちゃうよね。どうせなら撫でるついでにテレビでも一緒に見よっか?どうするコマ?」
「え?いいえ……私が姉さまの撫で撫でに飽きるだなんて、一生無いと思いますけど。姉さまに撫でてもらえるなんて……この世で最も幸せなことですし……」
私がそう提案するとコマは慌ててそのように返してくる。ふむ。私に撫でられるのがこの世で最も幸せなこと……か。
うわぁ……ヤバいキュンと来た。コマとしては冗談交じりのお世辞を言ってくれたのだろうけど、嬉しいなぁ……
「そっか、ありがとねコマ。お世辞でも超嬉しいよ私」
「い、いえ……決してお世辞ではなく交じりっ気一つない純粋な本心で…………あ、ですが……そうですね。私をただ撫でているだけでは姉さまも退屈ですよね。でしたら姉さま、撫でるついでにGWの時のように私と一緒に本を読みませんか」
コマはそう言ってベッドの脇に置いてある本棚から何冊か本を取り出してくる。おや……?これって今月発売された、あのめい子叔母さんの書いた本の新刊じゃないか。
ちょうど続きを読みたかったところだし、撫で撫でしながらコマと一緒の時間を過ごすには最適なアイテムと言えるだろう。
「それ良いね!そんじゃ今回はGWの時とは逆に、この私がコマを抱っこしてあげようじゃないか!ささっ、おいでーコマ」
「…………え?」
手を広げてコマにおいでおいでする私。そんな私の行動に、手にした本を落としそうになるコマ。……あれ?何その反応?
「だっ……抱っこしていただけるのですか……!?よ、宜しいのですか姉さま……っ!?」
「ん?いや、宜しいもなにも……その方が本一緒に読めるし、何よりコマを撫でやすいでしょ?」
「…………」
GWの時のように私がコマに抱っこされたら、コマを撫でるのがちょっと難しくなりそうだ。コマの後ろから私がコマをハグしつつ、撫でてあげた方がやりやすそうだし今回は私が抱く方に回ろう。
そう思ってコマを自分の腕の中に誘ったんだけど……何故かあたふたしているコマ。ありゃ?コマのこのあからさまな動揺……ひょっとして恥ずかしいのかな?
「もしかして私に抱っこされるのは嫌かな?だったら無理にとは言わな―――」
「い、いいえ!そんなことは決して…!是非!是非ともよろしくお願いいたしますです姉さま……っ!」
最後まで言い切る前に即答された。あ、よかった良いんだ。
「ならコマ、遠慮はいらないよ。こっちにおいでー」
「は、はぃ……失礼しますぅ……」
そう言って恐る恐る私の腕の中に納まるコマ。だけどまだ何やら遠慮をしているようで、私の身体に触れるか触れないかのギリギリの隙間を作ってプルプル震えながら正座をしているご様子。
……コマさんや?そんな風にベッドの上で正座するって、かなりしんどくないのかな?
「こーらコマ。だから遠慮せずにどーんとこっち来なよ」
「ひゃう……っ!?ねっ……ねねね、姉さま……何、を!?」
体勢的に辛そうにしているコマの肩を掴んでから、ぐいーっと私に寄りかかるように引き寄せてあげる私。
咄嗟のことに不意を突かれたのか、抵抗できずにコマは私の胸の中に入った。うむ。中々に納まりが良いねコレ。
「ほらほら、もっと私に寄りかかって良いんだよ?」
「あ、あのあの……っ!お、お胸…………姉さまのお胸が、当たって……ますけど…っ!?」
「はっはっは!どうかなコマ?私のこの天然低反発枕のお味は!」
「…………やわら…かいです……さいこう、です……」
あとはコマが出来るだけ楽に読書できるように、枕代わりに私の胸にコマの頭を埋めてあげる。私の胸の中に入った途端にリラックス出来たようで、ストンと脱力して私に全てを委ねるように大人しく寄りかかるコマ。
どうやらこの私のおっぱい枕を気に入ってくれたようだ。よしよし。こんな胸の駄肉も偶には役に立つもんだ。
「コマ、足も伸ばしなよ。それとコマ軽いからもっと私の方に体重かけて大丈夫だよ」
「は、はひ……わかりましゅた……」
「んじゃ早速読書タイムといきましょうかねー!ページ捲るタイミングはコマに任せるからね。あ、勿論コマを撫で撫でするのも忘れずにちゃんとさせてもらうから安心してねっ!」
「は、はい……よ、よろしくおねがいします……ねえさま……」
「こちらこそよろしくねー!」
そんなわけでリラックス出来たところでコマと共に楽しい楽しい読書&撫で撫での開始となった。
…………コマを撫でながら一つ思う。私、こんなに幸せで良いのだろうか…?
一日撫で撫でというおねだりのお陰で、今日が終わるまでコマと一緒にいられる上にコマに合法的に触れられるというこの状況。
おかしいなぁ……本来これってコマへのご褒美のハズなのに、どちらかというと私へのご褒美になってないか……?私……赤点取った分際なのに、役得すぎてバチ当たりそうでちょっと怖い。
そんなことを考えながら、日付が変わるまでコマを丁寧に撫で撫でしてあげた私であった。
◇ ◇ ◇
~SIDE:コマ~
「すー…すー……」
「……姉さま?起きてますか?」
「……すぅ…」
「……ふふっ。流石におねむでしたか姉さま」
12時を過ぎ日付も変わった頃、力尽きたのか私の頭を優しく撫でていた姉さまの手が止まり……愛らしい寝息が私のすぐ傍で聞こえ始めました。
「…………本当に、姉さまは律儀でお優しいですよね」
私を抱いてくださっていた姉さまの腕をほどき、そのまま姉さまを私のベッドの上に横たえながらそのように独り言ちる私。
規則正しく早寝早起きをモットーとし、いつもは10時にはお休みになられる姉さまですのに……しかも徹夜や試験の疲れも残っていて眠くないハズなかったでしょうに…
「まさか私との約束通りに、12時が過ぎるまで私を撫でてくださるなんて……嬉しい……」
なんとお優しい方なのでしょうか。やはり姉さまは私にとっての慈愛の天使さま―――いえ、あれだけの大きな
……いけませんね。感激している場合ではありませんでした。暴走する前に早く要件を済ませなければ。
一度大きく深呼吸をして、姉さまに向かって起こさない程度の声量で言いたいことを告げることに。
「姉さま。今回の期末試験お疲れ様でした。姉さまは本当に良く頑張ってくださりました」
眠っている姉さまには届かないでしょうが、それでも今一度姉さまに称賛の言葉を送ります。
……姉さまは凄いです。だって一切勉強していない状態から一週間でほぼ全ての科目を赤点回避することが出来ましたから。
「しかも……私の想像以上の結果を残してくださるなんて」
姉さまの現在の学力や勉強の進行具合を考えて、勉強会を始める前に今回の期末試験の目標を『赤点回避』と姉さまと決めた私。
ですが姉さまは私の想像を上回り、9科目中8科目が学年平均を上回る好成績を残してくださいました。(あ、ちなみに姉さまの得意科目の技術家庭は堂々の100点。一切勉強していないのに流石です姉さま)
「赤点を取ってしまわれた数学にしても、先ほど私が即席で作った問題をすらすらと解けたところを見ればしっかりと姉さまが勉強なさっていたことが伝わってきますよ。拙い私の指導でしたが……よくぞここまで頑張ってくれました。ありがとうございます姉さま」
要求したものが、要求以上のものとなって返ってくる……家庭教師を担当した者として、これ以上の喜びはありませんよね。頑張った姉さまに心から拍手です。
やっぱり姉さまは……私の誇れる素晴らしい姉さまですよ。
……それにしても。姉さまがここまでの成果を収めてくださったのは何故でしょう…?
ご褒美や赤点回避の為だけならば、無理して徹夜をする必要はありませんでしたしもう少し手を抜いても良かったハズでしたのに……
『今回は何としても赤点を回避したいんだよ私。コマにこれ以上迷惑かけたくないもん』
『留年とかしちゃったら、コマと一緒にいられなくなるからね。……頑張らなきゃ!』
『……私、コマの期待に応えたかったのに』
『ここまで頑張れたのはコマのお陰だし……コマがいなかったらこんなに頑張れてなかったよ。本当にありがとうコマ』
ふと試験勉強を始めてから今に至るまでの、姉さまの言葉一つ一つを思い出す私。もしかして……今回姉さまがこれほど努力してくださったのは…………この私の為?
…………自惚れでしょうか?思い上がりでしょうか?……きっとそうでしょうね。ですがそれでも構いません。
自惚れであろうが思い上がりであろうが、ほんの少しでも姉さまが私の事を意識して勉強を頑張ってくださったのであれば……天にも昇る心地ですから。
「んん…ぅ……」
「あら?」
私が再び感激していると……目の前で姉さまが寝苦しそうに寝返りを打ちます。よく見ると姉さまの額や首元にはうっすらと汗が。もしかして姉さま暑いのかしら……?
「(もう七月ですし、今日は特に暑かったですからね。何よりついさっきまで暑い中ずっと私と密着して読書をしながら頭を撫でてくださっていましたし……)」
…………そんなことを考えていると、先ほどの至福の時間を思い出してしまう私。姉さまの撫で撫で……とても気持ち良かったです。撫でられる度に心地良さと気持ち良さが全身に広がって……もうこれ以上ないくらい幸せで……
それに……姉さまに抱きしめられた時の感触は……枕にさせていただいた、あのたわわに実った姉さまのお胸の感触は…………かんしょく、は……
「(し、しっかりしなさい立花コマ!一体何を考えているんですか私……っ!)」
ほとんど無意識に姉さまの身体に触れようとしていた自分の手を、パチンと強く叩いて己を律する私。……あ…危なかった……やはり姉さまと二人っきりになると、どうしても姉さまの事をいつも以上に意識してしまいますね。
……いつか私のこの姉さまへの想いを告げる日が来るまでは……何としても自身の欲求を制御しないといけないのに。……そうじゃないと……下手をしたら私、勢い余って姉さまのことを押し倒しちゃ―――
「んにゃ……んー…」
「……ッ!?」
そんな私の脆い決意をまるで嘲笑うかのように、今度は仰向けに寝返りを打つ姉さま。
今私の目に映るのは、寝間着姿の姉さまの非常に情欲をそそるお姿。夏故にその寝間着はとても薄手で……姉さまの白く美しい柔肌がチラリチラリと覗きます。
しかもお胸の大きな姉さま用にゆったりと作られている寝間着を着ている上、最近は『暑くて蒸れるし窮屈だから』と仰っており、寝る時は…………ぶ、ブラを……着けていない姉さま。
そのお陰で寝返りを打った結果、大きく胸元がはだけた状態で『どうぞ召し上がれ』と言わんばかりに姉さまの生のお胸が私の目の前で自己主張しているではありませんか。
「(…………すごい)」
……先月一緒にお風呂に入った時も思いましたけど……姉さまはまた一段とお胸が大きくなってます……
……その立派な双丘を視認した途端、生唾をゴクリと飲み込み目が離せなくなってしまう私。そして同時に私の脳裏に、先ほど後頭部で堪能した姉さまの胸の柔らかな感触と……姉さまが仰っていたあの言葉が浮かび上がってきました。
『でもさでもさ!折角全科目で100点なんて偉業を達成したんだし、撫で撫で以外で他に何か私にしてほしいこと思いついたら何でも言いなよコマ!サービスとしてもう一つだけ、コマの言う事なら何でも聞く権利をあげちゃうね私!私のこと、好きにして良いから!』
『…………何でも、ですか……?』
『うん!何でも!』
『何でも……何でも……何でも…………』
…………いうことなんでも、きく。……なんでも……ねえさまのこと、すきにしていい……すきに……
「……その権利、今使ってもいいですか……?」
ポツリと眠っている姉さまに向かって呟く私。当然眠っている姉さまからの返事はありません。ありませんが……
「(い、良いですよね?私も今回の期末試験、いつも以上に頑張りましたし……姉さま自身も『何でも言う事聞くよ』と言ってくださいましたし……いいですよね……?ねえさまを、すきにしても、いいですよね……?)」
了承は一切得ずに、私は姉さまに覆いかぶさるように馬乗りに。その状態で姉さまの寝顔やお身体をじっくり眺めてみると、額や首元だけでなくご立派な胸の谷間にも真珠のような汗の雫がキラキラ輝いています。
「(…………オイシソウ)」
……どう考えても姉の胸や汗を眺めてから出てくるような発想ではありませんが、ごく自然にそんな感情が私の中から溢れ出します。そんなことを心の中で思ってしまった瞬間、私の頭の中からプツンと何かが切れるような音が聞こえてきました。……具体的には、理性が切れる音が。
そのまま何かに憑りつかれたようにふらふらと姉さまの胸の谷間に顔を埋め、そして―――
「…………イタダキマス」
その光る珠の汗ごと、姉さまの胸を強く吸い付き始めます。
ちゅうちゅうと音をたてしゃぶりつくように吸い……吸い取った先で、姉さまの汗は私の口内へ。こくんと飲み込んだらすぐに露わになった胸元に吸い付く私。
……おかしいですね。6年前から味覚障害を患っているせいで、姉さまとの口づけ無しでは私には味が一切わかりません。その為に姉さまと口づけしていない今この時は、当然ながら姉さまの汗の味などわかるハズもありません。ですが……
「……おいしい……」
しょっぱいのか、苦いのか、はたまた甘いのか。それ自体は全く分からないのに……不思議とそれがおいしいものだと、私の機能していないハズの舌がそのように認識します。姉さまの汗……おいしい……
一度吸い始めたらもう止まりません。まるで甘い蜜に惹かれた蝶のように。母乳を求める乳呑児のように。それでいて『これは私だけのものです。誰にも渡しません』と誰かに主張するように……
夢中になって私は姉さまの胸に吸い付き、汗を丹念に舐め……そして―――
「……ぁ…んっ…」
「……え?……ああっ…!?」
……一体どれくらい時間が経ったでしょうか?姉さまから艶めかしい声が漏れるのを聞き、ハッと我に返ると……姉さまの真っ白な胸のキャンバスには、私が付けた大量の赤い
「(…………や、やってしまった……わ、私……なんてことを……!?ね、姉さまになんてことを……!?)」
血の気がサーッと引いていくのを感じ、慌ててパッと姉さまから離れる私。……いけない。もしこのまま続けたら……超えちゃいけないラインを越えてしまうところでした。
……いえ。というより、私ったらすでに片足くらいは超えちゃいけないラインを超えている気が……
「(こ、これ以上は……ダメですね。多分自分で自分を抑えられません……)」
一旦姉さまから離れて深呼吸。冷静になって考えると……何をしていたんでしょうか私……?
実の姉の寝込みを襲い、赤ん坊のように胸に吸い付いた挙句……汗がおいしいなどと……一体私は何をバカなことを言っているのでしょうか?変態さんにも程があるといいますか……
やってしまったことの謝罪を込めて、少しでも姉さまが眠りやすいように汗をかいているところや私の唾液の付いてしまった姉さまの胸元をタオルできれいに拭き取る私。
胸に付けてしまったキスマークは……よ、翌朝には消えていることを願いましょう。……だ、大丈夫。きっとすぐに消えてくれる……ハズ。
「……本当に何やっているんでしょうね私……」
自分の愚行に頭を抱えてつい溜息。困りました……どうにも私ったら中学生になってからというもの、日に日に姉さまへの想いを抑えられなくなりつつあるみたいです。以前は傍にいて貰えるだけでも嬉しかったのに……どんどん欲深くなってきて…………これってもしかして思春期なのかしら?
……これでも学校ではそれなりに優等生をやれているハズなのに。姉さまの前だとどうにもダメになっちゃって恥ずかしい限りです……
「……マコ姉さまごめんなさい、私……ホントは実の姉の寝込みを襲うようなケダモノなんです……」
隣でスヤスヤお休みになられている姉さまに話しかける私。……こんな私の本性を知ったら、きっと姉さまは失望するでしょうね。……いえ。あれほどお優しい姉さまですし、私に気遣って失望とかはしない気もしますけど……
でもきっと、私のこんな黒い欲望は……ピュアで穢れなど知らない姉さまにはまだ理解できないことでしょう。女同士……しかも双子の姉妹同士だなんて……
「前途多難。そもそも告白はおろか、私自身の問題すら解決できていないですし……先は果てしなく長いようですね……」
……せめて味覚障害が治るまでは、この想いは伝えないと決めている私。だってそうじゃないと……きっと責任感が強い姉さまは『6年前にコマの味覚障害の原因を作ったのは自分だ』と負い目や引け目を感じられたまま、私の想いをすんなりと受け入れてしまう事でしょう。
そんなの弱みを握っているみたいで嫌です。姉さまとは今までも……これから先も……未来永劫対等な関係を築いていきたいですからね……
「……今日はもう寝ましょう。これ以上姉さまの事を想うとまた暴走しちゃいそうですし……お休みなさい姉さま。良き夢を」
下手に興奮している今、姉さまに近づくとまた勢いで襲いかねません。……今日の私はさっきの反省を込めて床で眠ることに。ベッドでお休みになられている姉さまに一声お休みの挨拶をして目を閉じます。
…………マコ姉さま。きっと私……この味覚障害を克服し……姉さまのことを振り向かせてみせますからね。それまでは、それまではどうか……待っていてくださいね。
…………ちなみにこれは余談ですが。
結局翌朝になっても姉さまの胸には虫刺されのような赤い跡―――つまりはその……私の付けたキスマークが大量に、それもくっきりと残っていました……
その跡を鏡で眺めながら姉さまは首を傾げて、
「昨日蚊でも出たのかなぁ……?でも蚊に刺されたにしては別にかゆくは無いんだよね……」
「そ、そうですか。か、蚊取り線香……近いうちに購入しておきましょうかね……」
「あ、うん。そうだね。……それにしてもどうしてコマは刺されずに私だけ刺されたんだろ?……も、もしかして……汗臭かったりするのかな私……?」
と、不思議がっており。そしてその姉さまに付いた跡を見た叔母さまは、
「ハハッ!こりゃ随分とデカい蚊がいたもんだな!このマコの胸に付いた跡を察するに……きっと人間サイズの蚊がいるんじゃないか?おいマコ。今度またコマの部屋で寝る時は油断して吸われないように気を付けるんだぞー」
「はぁ?人間サイズの蚊?え、叔母さん何言ってんの?頭大丈夫?」
「間違いないって。きっとコマの部屋にはマコの乳―――もとい、血を求めて彷徨う……めちゃくちゃデカい蚊がいるんだぜ。なーコマ!」
「…………そうですね」
と、すべてを理解しているぞと言いたげにニヤニヤ笑いながら、あろうことか姉さまの目の前で私をからかってくれました。
……姉さま。変態な
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