魔女じゃないけど、魔法使ってもイイですか?

@sakunyao

第1話 今までの日常

「ナナ〜、朝よ、起きなさーい」

一階からお母さんの声がする。

どうやら今は、朝らしい。

そして一階から美味しそうな匂いが、私の寝ている二階にまで上がってくる。

ほんのりとした、とても良い匂いだ。

「朝ごはん冷めちゃうわよー?」

お母さんの声がまた聞こえる。

その後に私の隣の部屋から、ガチャッというドアを開ける音が聞こえ、続いて一階へ降りて行く足音が聞こえる。

その足音が聞こえなくなると、一階から、話し声が聞こえてきた。

「おはよぉ…」

「おはよう、サナ」

「お姉ちゃんはー?」

「ナナはまだ寝てるわ。全く、お寝坊さんなんだから。サナよりも起きるのが遅いなんて」

「顔洗ったら、私が起こしてくるよ」

「あらそう?ありがとう、サナ」

そしてジャーッという水の音が聞こえなくなると、二階に上がってくる足音が聞こえる。

トン、トン、トン。

ガチャッとドアが開けられる。

「お姉ちゃん、朝だよー、おーきーてっ」

続いて腹部に強い衝撃。

驚いて目を開けると、サナが私のお腹の上に乗っていた。

「もう…その起こし方はやめてって、いつもいってるでしょ…」

「起きるのが遅いのがいけないんだよー」

サナは笑いながら言う。

「いいから、どい、て…」

とにかく重い。

早く降りて下さい…。

「はーい」

サナは無邪気に私から飛び降りると、一階までかけていった。

「ふぅ…」

一息つくと、私はさっきまで横になっていたベッドから起き上がった。

「サナはいつも起こし方が乱暴なんだから…」

そう。私は毎朝毎朝、あの起こし方で起こされている。

確かに起きるのが遅い私が悪いのかもしれないけど、あの起こし方はやめて欲しい。もっと優しく起こして…。

そしてベッドから降りると、洋服に着替えて、髪を結んでから一階まで降りていった。

「おはよー」

「おはよう、ナナ。ナナが遅くて、サナが待ちきれないって言うから、先に食べさせてるからね」

「えっ」

「あ、お姉ちゃん。おいひーよー」

サナは口にウィンナーを頬張りながら話す。

その口からはウィンナーの美味しそうな香り。

「サナ、ずるいじゃないの〜」

「お姉ちゃん起きるの遅いんだもーん」

サナはさっきのウィンナーを飲み込んでから、話す。

「ご馳走様〜」

そして食器を洗い場に置くと、サナは二階にランドセルを取りに行き、急いで玄関に向かった。

「友達と約束してるからそろそろ行くねー、いってきまーす」

バタン、とドアが閉じられる。

「ナナも早く食べて行きなさいね、今日は私も早く行くから」

「はぁ〜い」

そして、朝ご飯はもう食べたのか、慌てて支度をしてお母さんは出ていった。

「さてと、私も早くしなきゃ」

食卓に座り、ウィンナーや卵焼き、白ご飯などを口に頬張り、ゆっくり朝ご飯を味わってから、二階にランドセルを取りに行き、中身を確認した。

「やばっ…」

ランドセルの中は、金曜の時間割になっていた。

今日は月曜日。

土日の間ずっとダラダラしていたため、時間割を全くしていなかった。

そんな時だった。

玄関のチャイムがなった。

ピンポーン。

「はーい」

慌てて一階まで降りて玄関のドアを開けると、ハルカが迎えにきていた。

「ナナちゃん、行こー」

私はパン、と顔の前で両手を合わせる。

「ごめん!まだ全然終わってないの…」

「そうなの?私、なんか手伝おうか?」

「ううん、大丈夫!先に行ってて」

手伝ってくれるとありがたいけど、私のせいでハルカまで遅刻させたくない。

ハルカはしっかり者だから、遅刻経験は一度もない。

私のせいで遅刻させちゃったら…。

「手伝うよ!何が終わってないの?」

「え、悪いよ…」

「大丈夫だから!すぐ終わらせちゃお!」

ハルカは本当に優しい…。

こんなに優しい友達を持って私は幸せ者だ…。

「えーと、かくかくしかじかで…」

「ふんふん、なるほど!時間割なら任せて!時間割のスピードには自信があるの」

そして、その言葉通り、ハルカは1分もしないうちに時間割を終わらせてしまった。

「すごい…ありがとう、ハルカ!」

「全然良いよ、これで行ける?」

「うん!本当にありがとう!」

そしてハルカと色々な会話をしていると、あっという間に学校についた。

「じゃあねー」

私達はクラスが違うため、先に階段に近いハルカの教室の前で別れ、私は自分の教室へ向かった。

そして授業を受け、何もかもがいつも通りだった。

その日常がいつも通りじゃなくなったのは、あの時間からだった。

あの時間から私は、今までと違う日常を送る事になる。


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