好きだと言って。

瀬戸 椛

第1話

 彼はいつも余裕そうな素振りを見せながら私の心を弄ぶ。

―そんなことをするなら好きだと言って。

声にならない私の想いは、彼のキスで溶かされてしまう。


彼は部活の後輩で、誰からでも好かれるいわゆる人気者だ。

それに対して私は、普通。平均的。

そんな言葉で済まされるようなただの女子高生。


私と彼は、付き合っているわけではない。

先輩と後輩。それ以上でもそれ以下でもない。

そんな彼が私を弄ぶようになったのはいつからだったのか。

明確な日付もなければ、きっと明確な終わりもない。


 ひとつだけ明確なのは彼に対する恋愛感情だけだ。


彼に会うたびに、キスをするたびに、体を重ねるたびに、

―どうして私なの。

嬉しいながらもそれだけが頭の中から離れなくなる。

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