銀河鉄道プロジェクト
西書
1. ナノ・バイオエレクトリック社
●『銀河鉄道 開業に向けて…
ナノ・バイオエレクトリック社が人体の“細粒子化”と“光速転送”の成功を発表』
2047年9月未明、
ナノ・バイオエレクトリック社のムーライ氏らは
株式会社ユニバー主催の合同記者会見に出席し、概要を説明した。
「我々が開発に成功したのは人体の“光速転送装置”です。
当面の目的である“銀河周遊鉄道の運行”にあたり
今後、始発駅となる “月” と地球との往復が欠かせなくなります。
いかに時短かつ安全に移動出来るかを念頭に、
自社の衛生端末GRを “月” の引力圏外に滞在させ、転送実験を繰り返しました。
内容についてもう少し具体的に申しますと、
まず人体の体組成図をプログラムに記録、
カプセル内で個人別に認識記憶させた体細胞を分解・圧縮します。
細粒子状になったそれら(理論上170cm60kgの成人男性が1mm35g)に
磁気を纏わせて指定の場所へ送信します。
受信カプセル(目的地)に着くと細粒子は解凍され体細胞になり、
プログラムの記憶通りに再構築されるといった内容です。」
つまり体を電波に変換して送って、
元に戻すという仕組みである。
「我々はこの転送装置で “月” (正確には月付近の衛生端末GR)に
136名の職員を運びました。片道約30秒です。
長いまばたきの間に月面へ安全にお届けします。」
~~
ナノ・バイオエレクトリック社は
生物学の研究を主とするナノ・バイオロジーアカデミーを
エレクトロニクスカンパニーが買収し現在の呼び名に至っている。
株式会社ユニバーは“銀河鉄道”の発起人で投資会社である。
社長のロン氏の巧みな交渉術で
N社含め計4社の共同開発が実現している。
資本主義社会の中、躍進し続ける団体企業である。
~~
しかしどれだけ科学や技術が進歩したって
“安全”という言葉は信用できない。
記者たちは転送装置の安全性について次々と質問する。
ありふれた言葉遣いで躱すムーライ氏の耳に新しい質問が入った。
「今後の課題は?」
「えー、端的に申し上げて2つあります。
1つ目はこの装置がまだ無重力に対応してないことです。
うちの衛生端末は遠心力で重力を発生させてます(ジオン王国と同じ原理)ので
現状、転送後も地に足が着いています。
しかし銀河を駆ける列車がクルクル回るのは問題ですので対策を検討中です。
2つ目は“細粒子化”についてです。
現状のプログラムでは人の体細胞以外の物質を
分解・圧縮出来ないので送信も出来ず、
転送時身に付けられた服飾や携帯品などは
置き去りになり、到着地では
もれなく全裸になってしまいます。」
…え?
…え、えっ?。
「まあ、宇宙で全裸なのは自分たちぐらいだと喜んでる職員もいましたが…。
こちらは早急に改善又は対策しなければなりません。
女性を転送するのは男として賛成できますが、
このままではただの欠陥装置なんです。」
――オイオイナンダヨソレ~!!
「ナノ・バイオエレクトリック社は
地球の歴史を塗り替える重要な一歩を踏み出した。
今後もサポートを続け、1日でも早く
“銀河周遊鉄道を開業”出来るようにしたい。」
ヤジにも似た記者たちの質問責めにフタをするように
ロン氏のスピーチで合同記者会見は幕を閉じた。
~~
僕たち人間はいつだって“時間”と格闘してきた。
それだけに、技術の革新から目が離せない。
ちなみにこの転送装置、日本で勘定すると
東京?大阪は0.61秒、?博多だと0.64秒、
?北海道は0.59秒で移動出来るらしい。
ワールドクラスだと?ニューヨークで約1秒、
日本の反対側ブラジルへは1.9?2秒と言われている。
いつだっけな?実験段階の時ムーライ氏が、
「ライバルはグーグル検索だ」って豪語してた。
トンデモなく速い、速すぎるくらい。
でも着いたら全裸か。。
いや全裸はあかんやろ、色々と!
~~
とまぁ前置きはこのくらいにして――
国連直属の特殊部隊(国際機密機構捜査一課)では今
上からの指令でナノ・バイオエレクトリック社管理システムへ
ハッキング(浸入)を行っている。
ゲートの先には膨大な機密事項が溢れかえっているだろう。
奴等(“銀河鉄道”)の狙いは何か?
それを突き止めるのが今回の任務である。
転送装置のデータベースに潜入しますか?
> はい
いいえ
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