天使に謀られたとある吸血鬼
ぐーぱん
第1話 天使の罠と理不尽な契約
人間とモンスターが共生する世界
昼下がりの小さな滝と大きな森のある場所を低速で飛ぶ遮光フードと黒い日傘を持った生き物が上や下にふらふらと飛ぶ 『参ったなー森がこんなにでかいとか思わなかった旅賃ケチって損した!!』『今や落ちぶれた三流はぐれ吸血鬼ですもんねー』サングラスかけた小さなコウモリが喋る キッと睨む薄いオレンジの髪の小娘が日傘を持ちながら飛ぶ 『……悪かったわね!! 三流でしかもお屋敷が破産 渋々追い出されたワタシはどーせ哀れで情けない吸血鬼ですよ…』代用品のトマトをかじりながら娘は云った 『シャンピローゼさま!! あそこに池が見えますよ!誰か水浴びしてるかもしれません! もし居なくても待ってれば水を飲みに来た動物の血にありつけるかもしれませんよ!』 『えー一昨日も鹿の血でその前は憐れんだオオカミママの血だったしそろそろ人間の娘の血が飲みたい!!』 羽音もたてずに大きな木の影降りる すると女性がちょうど水浴びをしていた! 小さな滝の水音で気づかれない チャンス!!と思い直ぐさま行動する 肩を押さえ『大丈夫だからコップ一杯分の血を貰うだけだからね♪』さっと首元の下を一噛み美味しい血が舌を抜け喉に流れ全身に旨味を届ける 『ガ?!』焼けるような痛みが襲う 聖水を飲んだ時の痛みに似ている 悶えながら女から離れる シャンピローゼの身体の至る所から煙りが出る 『……あんた何者?! 』小さくなった痛みに堪えながら噛んでしまった女に問う
『初めましてわたくしの名前はナリュークエル…天使をやっておりますの』にこやかに笑う天使 上手く隠された白い天使の翼が広がる 池の水が油膜がついているであろう翼から水玉がはじけスローモーションで見える 『!!!!』 池の水で口と喉を急ぎ洗うシャンピローゼ 使い魔に念波で伝える《いい パタット!!今からワタシのことはエクレールと呼んで!》 戸惑うパタット『…エクレールさま…大丈夫ですか?』 ナリュークエル『では…エクレールさん…』
ずぶ濡れの身体のままこの場を飛び去ろうとするシャンピローゼ ドンと見えない壁にぶつかる。『 !?』
あっちこっちに飛んでみるが出られ無い! 『無駄ですよーシャンピローゼさんとパタットちゃん』 シャンピローゼの頭に確信がよぎる 『アンタ…ワタシの事罠にハメたね…』ナリュークエルを睨む 『念話も筒抜け…何の用だい?』 可能な限りの強気で構えつつ吠える 『シャンピローゼさんに手伝って頂きたい案件がございまして~』両手を合わせつつ服を光で創るナリュークエルいちいち仕草がムカつくシャンピローゼ あぜ道で佇む女が2人 濡れた服を魔力で乾かした 『もう直ぐ馬車が来ますからそれに乗せてもらいましょ~!』
『……』納得がいかないシャンピは沈黙を続ける すると直ぐに馬車が来た かなり大きい馬車だ 4頭の馬が客間と奥の荷物を積んでいる 馬車が停まると直ぐに乗り込めた 他の客は居ない赤い内装のそこそこ高級そうな客間だ シャンピローゼは全く眠たく無いが会話する気も無い 『この先のバシャール村で困った事にモンスターが現れ人間の食べ物を奪ってます。 そのモンスターを退治してください』 『天使は信仰者さんの願いを聴き神様に伝え命がくだれば人間に伝え実行するのですが面倒く…いえ バシャール村の件は緊急を要するにので現場判断で救済して差し上げようと思いまして…』
何だか胡散臭いぞ? だったらその村の人間に闘える奴がいるだろうし 王都ウェンデミオンから派遣は時間が掛かるし…近くの村…それも無い でも近くの村や街ギルドに頼めばいいはず…『…断る!!』取り敢えず巻き込まれたくないそんなに強くないし… 天使が光ると全身が痛い!! 涙目に成りながら可能な限り馬車の中で距離を取る 『きょ…脅迫じゃないか い…いいのか!かっ神さまに言いつけてやる!』 ナリューの表情がどことなく恐い 『わっわかったよ…』 程なくしてバシャール村に馬車が着く 村の入口で降りた 大きな丸太橋に苔がびっしり生えている よく通る場所をには苔が生えてない 丸太橋の下にはそこそこ深い谷があり強く風が吹く 馬車主は荷下ろしを始めているパイプ煙草を咥えながら 村人達も馬車の元に集まる 全ての荷物が村の前で下ろされるここが定期馬車の最終点のようだ
自分達の荷物を受け取り 馬車主に代金を払う村人達早々に家に荷物を抱え入っていく 何人かは荷物を馬車主に預けるようだ…毛皮や鹿角や民芸品畑の採れたて野菜が馬車主に渡され代金が払われる 辺鄙な村へ定期馬車が来るのは流通のためらしい 村を歩くシャンピローゼとナリュークエル 村の中央の井戸の前に赤い頭巾の少女が居る 『お待たせしました…』ナリューがいつもの表情で微笑む 『天使さま!! 遅いです!! 』鼻息荒い 元気いっぱいの健康的でシャンピの好みドストライクな金髪三つ編み少女がそこに居る よだれが止まらない 目がハート状態だ 不審者扱いされても仕方が無い…
『お願いします。 ハゲタカオオザルを倒して下さい!!』 ハゲタカオオザル 雑食で野菜や家畜を攫って喰う森に住む魔獣 メス中心社会でオスは身体が大きい 木々の間をいききし 動きも素早く剣士では狩りにくい人間なら10人以上の弓使いが必要だ 偏狭の村ではとうてい集められない 『毒のエサで弱らせようとしましたが 危険感知が強く全く食べませんでした。』『怒ったオスのサル達が暴れて村の男を襲いもう闘える村の男は5人も居ません…』 スカートと小さなエプロン握りしめ少女が云う 『確認されたハゲタカオオザルはオス5匹にメスが2匹です!!しかもメスは卵を産んでます!早くしないと数が増え村と森が壊滅します!』
シャンピローゼが問う 『ワタシ吸血鬼だけどそれでもどーにかして欲しい?…』かがんで少女に見えるように牙を見せる 『…私の血で良かったらいくらでも差し上げます!』振るえる腕を前に出し袖をめくる少女 少女のフェロモンと旨そうな血の匂いがしてクラクラするシャンピ クーと腹が鳴る『前払いで貰っていい? 』
『…少しだけなら…』少女が覚悟を決める 柔らかい腕をそっと掴み皮膚に牙が当たる寸前それ以上身体が動かない…『ナリュー!! …ワタシになにしたぁぁ!これじゃ血が吸えない! 魔力と体力無しでハゲタカオオザルと戦えって?!出来るかぁぁそんなの!!』 『今のあなたは人間の血も動物の血も吸えません…代わりに人間の食べ物を食べられるのです。』誇らしげにナリュークエルが語る 『すいません…ランチェッタさん シャンピさんと私に食事をお願いします。』 不審がるシャンピローゼ ランチェッタの家で料理が出来るのを待つ 『トマト以外食べた事無いんだけど』好き嫌いアピールをするシャンピ 木で出来た丸い皿にトマトと他の野菜が入ったスープと作り置きのパンの切れ端とハムとレタスのチーズサラダがさっと出来た 木で出来たスプーンですくって飲んでみる 口の中にトマトの出汁と他の野菜の旨味がしみ出すオリーブオイルが効いている パンも生まれ始めて食べてみる 皮は硬いが中はふっくらしてある塩気が効いたパンをスープに浸けて食べてみるあっという間に食べ終える 人間って凄げー背もたれのある椅子で膨れた腹を撫で降ろす パタットも生のトマトをランチェッタから貰って食べている 『ここの土地は豊富なミネラルを含み野菜を美味しくするのだそうてすよ…』マイペースでまだ食べているナリュークエル
『野菜もこの森の恩恵を受けているのです…ランチェッタさんはこの村一の料理人ですよ…』 魔力が回復していくシャンピ… ガツガツ食べておかわり三杯目を受け取る頃 村の中で悲鳴が聞こえる ハゲタカオオザルが襲って来たのだ!
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